さて、今回はX線探傷機についてご紹介していきます。
X線と聞くと放射能やレントゲンといった物をイメージされる方も多いと思います。また有害といったイメージもあるのではないでしょうか?
先日ご紹介した「PMI検査機」にも使用されているX線についてのご説明も交えながら、非破壊検査としてのX線探傷機についてご紹介していきます。
まずはX線の基本から
最初に、「X線」と呼ばれるものがどういったものなのかご説明します。
X線は大きく分類すると「電磁波」と呼ばれるものに分類されます。電磁波の中でも一定の範囲の周波数をもった電磁波に限って「X線」と呼んで、他の電磁波とは区別されています。またX線を「放射線」と解釈する場合があるが、これはX線を発生させる工程において放射性物質を使用することに起因している
X線の最大の特徴は浸透性の高さです。通常の電磁波では検査対象の内部に浸透することができない場合でもX線であれば検査対象の内部まで簡易に浸透させることが可能です。
また、X線は内部の状況によってその浸透に変化がある事から、検査対象内部の欠陥を発見する検査を行うことができます。
更に詳しい解説は下記のリンクをご確認ください。
関連リンク:https://ja.wikipedia.org/wiki/X%E7%B7%9A
X線検査機=レントゲン撮影機?
さて、それでは工業用に用いられるX線探傷機はどのようにして、検査対象を検査しているのでしょうか?
ここではX線検査機のしくみと、健康診断で撮影するレントゲンの違いについてご紹介します。
最初に答えを言ってしまうと、健康診断で行うレントゲン撮影と工業分野で使用されるX線探傷機は、基本的にはおなじ仕組みと構造をもった製品です。どちらもX線を利用して対象物の中身を外から観察している器機になります。
では、レントゲン撮影はどのような原理で行われているのでしょうか?次項ではX線探傷機の仕組みについてご説明します。
レントゲンの仕組み
X線探傷機の仕組みは、基本的には健康診断で仕様されるレントゲン撮影と大差ありません。対象となる製品にX線(放射線)を照射すると、対象の製品内部に構造的な変化や密度の違い、空洞などがあった場合に、その部分のみ放射線の透過具合が変化します。
その変化を検出器によって把握することで、内部の傷を発見しています。
よく似た探傷装置に超音波を使用した超音波探傷機がありますが、両者の最大の違いは対象の製品内部のどの位置に欠陥があるのかを把握できる精度の違いが大きいとされています。
また、超音波探傷では確認することのできない傷の大きさや方向性を確認できるのもX線探傷機のメリットです。
最後はフィルムに焼き付け
X線探傷機は通常、その結果を検出器と呼ばれるものを使用しフィルム等に焼き付けて確認します。医療用のレントゲンと仕組みは同じです。
そうすることで、内部の欠陥の情報をより細やかに確認することができるほか、超音波探傷検査では難しい探傷工程の再現性を得ることも可能です。
X線探傷試験では、放射線の照射方向や角度、撮影回数などを細かく規定して撮影を行います。基本的には対象の箇所がどの位置からでも確認できるように複数枚の撮影を行うのが一般的です。
また、撮影したレントゲン写真と撮影方向を検査結果として記録することも重要となります。
X線探傷機(レントゲン撮影機)ってどんな製品?
では実際のX線探傷機とはどんな製品なのでしょうか?次の写真をご覧ください。
これはX線探傷機の中でもポータブルタイプに分類されるもので、持ち運んで様々な現場で仕様することが可能です。写真右が放射線の照射装置で左が検出器です。
照射線の照射装置を手に持ち(または固定して)検査対象箇所に放射線を照射します。簡単に角度や向きを変えた撮影ができることから、建築の現場でコンクリートの内部欠陥を確認するときなどに多く用いられています。
続いては据え置き型のX線探傷機です
俺は岐阜県の産業技術センターに設置されている、大型のX線検査機です。先ほどのポータブルタイプと比べると比較にならないほど大きなつくりです。
機械内部に検査対処を固定し、その状態のままで各方向からの撮影やその他の解析を同時に行うことが可能です。ただし、基本的には移動することはできないため、検査対象を設置場所まで運び込む必要があります。
まとめ
私たちの生活に身近なレントゲンという検査ですが、実は工業の分野でも多くの場面で活躍しています。
これまでは発見できなかった内部の欠陥を、瞬時に発見することのできるX線探傷機は私たちの生活の基盤を支える、重要な検査として近年では活躍の場を広げています。