計測器、測定器紹介 vol. 3 – 走査電子顕微鏡 (SEM)

計測器、測定器紹介 vol. 3 - 走査電子顕微鏡 (SEM)

計測器、測定器紹介第三回目は走査電子顕微鏡です。私は製造業に携わっているのですが、ものづくりは非常に小さいスケールを考慮しなくてはいけないことが多々あり、ナノメートル(1メートルの10億分の1)の観察や分析が重要になることもございます。

そんな時に必要な装置が「走査電子顕微鏡」です。今回はナノメートルの大きさを実感しつつ、走査電子顕微鏡の原理についてご説明いたします。

ナノメートルの世界へようこそ!

DNA nano technology

目に見えるのはサブミクロンの世界

今目の前にあるもの、例えば最近髪の毛がごわついてしまって…と悩んでいる方いらっしゃいますよね。そんな時に、自分の髪の毛ってどういう状態なんだろうって考えたことありませんか?
探究心の強い人は、ちょっと虫眼鏡で拡大して見たりしているかもしれません。でも、それで見える世界はせいぜいサブミクロンから数ミクロンの世界です。
「ミクロン(マイクロメートル)」は1ミリメートル(mm)の 1/1,000 の大きさのことで、単位は「μm」と書きます。サブミクロンというのは数百ミクロンのことを指します。
ただ、髪の毛表面を覆うキューティクルの外形サイズは100ミクロン程度ですが、厚みとなると1ミクロン程度、キューティクルの隙間ともなると、0.1ミクロンとごくわずかな値になってきます。
0.1ミクロンというのは、100ナノメートルのことです。単位は「nm」と書きます。ナノメートルは1ミクロンの 1/1,000 の大きさ、1ミリの 1/1,000,000 の大きさです。このわずかな隙間から、シャンプーやコンディショナーの成分が入っていき、髪の毛に作用していくのです。

ナノメートルの技術が急激に発展している!

スマートフォン

髪の毛といった生物の話だけでなく、今の科学技術の結晶「スマートフォン」にもナノメートルの技術がたくさん使われています。まず10年前のことを思い出してみてください。スマートフォンがまだごくわずかだった時代、ガラケーを皆さん使用していたことでしょう。あの頃から比べて、

  • 液晶画面が大きくなった
  • カメラが小さくなって綺麗になった
  • 処理能力がアップした

…と取り上げればきりがないぐらい技術は進化しています。ここにはナノメートルの技術がぎゅっと詰まっています。
10年前の半導体は65ナノメートルという配線サイズが基本でしたが、今年度発売するiPhoneはなんと7ナノメートルという配線サイズになり、よりトランジスタが高集積化しています。もう想像を絶する細かさです!

不具合のレベルもナノメートルの世界へ

ロケット 工場

”ナノ”のイメージは持っていただけたでしょうか?
私たちの周りには色々な”ナノ”が存在しております。実はこの”ナノ”は製造業でも大変重要な役割を担っています。皆さん、ものをつくるとき失敗したことはありますよね?サイズを間違えたなんかが典型的な例かもしれません。この失敗(不具合)は、製造業ではつきものなんです。こういう不具合が起きないように、製造業ではナノメートルでの対策をしているのです。次章から製造業の世界を少しのぞいてみましょう。

目に見えない世界に答えがある

新幹線

同じ材料なのにロットで違う。。

いきなり質問です!金属材料、例えばフライパンに使われている金属は、同じ製品なら全て同じでしょうか。
厳密に言えば「NO!」です。
金属材料はその製造工程でわずかに「組成」や「微細組織」が変わってしまいます。あ、安心してください、工業製品はものづくりの工程内で一定の品質を保つために納入・出荷管理をしています。
とはいうものの、思い出されるのが、先日発生した「新幹線の台車割れ」のニュースです。詳細は割愛しますが、納入部品が「データ偽装」されていたことが一つの原因とされています。つまり、同じ品質のものが納入されなかったということです。同じ品質のものだと確認するためには、材料の素性を確認する必要があります。
このわずかな「組成」や「微細組織」の違いを見るのもナノメートルの世界なのです。

材料選定や工程変更のために必要なこと

工業製品はこのように、目に見えない世界との戦いなのです。
より良い製品を作りたい、新しい材料を採用したいということがありますね。このような場面でナノメートルの世界を確認せずに世の中に出すことはありません。

走査電子顕微鏡とは?

question mark

やっと本題にはいります!ナノメートルの世界を観察するために「走査電子顕微鏡」があります。
通称「SEM(セム)」と呼ばれています。Scanning Electron Microscopeの略になります。

Scanning (スキャニング)とあるように、Electron(電子)をプローブから飛ばして、物体の上をスキャンして撮像します。一般的に使われる顕微鏡は「光学顕微鏡」のことを指すことが多いです。
光学顕微鏡は目に見える波長(400〜700ナノメートル)で観察しています。

しかし、ナノメートルの構造を確認したい場合、この波長では大きすぎて鮮明に観察できないのです。走査電子顕微鏡は電子を物体の表面に飛ばすことで、物体から反射してくるX線を検出して撮像するのです。X線は波長10ナノメートル以下なので、可視光より鮮明に撮像できます。

走査電子顕微鏡でできること

物質に電子を飛ばして得られるX線には様々な情報があります。
まず、物体表面の凹凸がわかりやすいです。反射してきたX線の位相差(どれぐらい遅れてきたか)や強度を分析して凹凸を撮像します。光学顕微鏡より焦点深度が深く、広範囲で構造が確認しやすいです。観察しながら測長も可能です。
撮像の機能だけではありません。物質から反射したX線分析すると、金属などの組成がわかります。合金がどんな金属組成で出来ているかが分かります。
また、合金の結晶状態を確認することもできます。結晶状態を確認することで、その材料の「脆さ」が分かります。

不具合の原因を突き止めるために

走査電子顕微鏡が1台あれば、ナノメートルの世界に起こっていることが分かりやすくなります。
前述したように、ナノメートルが当たり前になってきた世の中で、不具合もナノメートルの世界で起こっています。つまり、不具合を根本から確認するためにはナノメートルの世界を手中にしておく必要があるんですね。

走査電子顕微鏡のお値段は?

お金 イメージ

走査電子顕微鏡を用いる測定はとても微細なので、電車が通ったときのわずかな揺れでも影響があります。本格的な分析会社等では建物の土台から装置が動かないようにしています。
そこで導入されるハイエンドモデルは5,000万円から…です。付帯工事を入れると、それだけでは済みません…工事込みで数億という世界です。
一方でお気軽な卓上の走査電子顕微鏡もあります。光学顕微鏡のように気軽に使えるのでとても人気があります。当然撮像できる細かさはハイエンドより落ちますが、免震台などの工夫をすればかなり綺麗に撮像できます。
卓上タイプは500万円からあります。ですが、ポンと買えるお値段ではないですね…。かといって、ハイエンドを導入している分析会社に依頼すると、1検体で20万ぐらいかかります。依頼すればするほどもっと自分でじっくり観察したい、そう思われるかもしれません。。

走査電子顕微鏡は中古やレンタルのオプションも

走査電子顕微鏡は非常に高額ですが、ものづくりには必要な装置です。とはいえ、もっと気軽に使って欲しいのです。なぜなら、ナノメートルの世界を知れば知るほど製品に対する品質意識が変わるからです。必要だけど投資を抑えたい、そういう方は中古を購入したりレンタルで借りたりする手段もあるかと思います。

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