紫外可視分光光度計について

紫外可視分光光度計について

紫外可視分光光度計は、物質が「どの波長の光を、どの程度吸収するか」を測定する装置です。その名前の通り、測定できる波長範囲は一般に180~800 nm程度です。
この領域における光吸収は、物質の電子状態と密接に関係しており、紫外可視分光光度計を用いて吸収スペクトルを測定することによって、サンプルがもつ化学的、物理的性質を理解することができます。対象となる物質は、有機分子、金属錯体、生体試料など多岐にわたり、化学領域の研究においては最もよく使われる測定装置の一つです。
ここでは紫外可視分光光度計の原理、応用について説明します。

紫外可視分光光度計の原理

紫外可視分光光度計の原理は、下の図で示す通り極めてシンプルです。装置によって光学系の組み方など微妙な違いはありますが、紫外可視分光光度計自体は比較的古くから使われている装置ですので、普通に市販されているものであれば、測定原理や使い方に大きな差はありません。
実際の測定は以下のように行われます。
光源からの光を、プリズムを用いて波長ごとに分解し、セルに入った試料溶液に照射します。試料を透過する前後での波長ごとの光量の変化を測定することで、吸収スペクトルを描くことができます。この時、目的のサンプルのみの吸収スペクトルを精確に測定するために、あらかじめセルと試料溶液の溶媒のみの吸収スペクトルをブランクとして測定しておく必要があります。

測定原理の説明図光源は一般的に、紫外領域の測定に使う重水素ランプと、可視光領域の測定に使うハロゲンランプの両方が内蔵されています。試料は溶液状態とするのが一般的で、難しい前処理なども必要ありません。

吸光度とモル吸光係数

測定の結果得られた吸収スペクトルは横軸が波長、縦軸が吸光度の二次元データになります。ここでは、データを正しく理解するために「吸光度」について説明します。
吸光度(A)は試料がどの程度光を吸収したかを示す値であり、以下の式で記述されます。

計算式ここでI0は試料に入射する光強度であり、Iは試料透過後の光強度です。ここで注意しなけ
ればならない点は、I/I0 に対して光強度が常用対数を取っていることです。すなわち、A = 1 の時、I/I0 =0.1 であり透過光は、試料に入射する光の10%の強度しか持っていないことになります。さらにA = 3 の領域では透過光強度は、入射光強度の0.1%の強度しか持っていないことになり、光検出器の限界に近づいてきます。装置の質によって、測定できる吸光度に幅がありますが、一般的にA = 3が信頼できる吸光度の 値の上限とされています。

測定原理の説明図そこで、この吸光度の値が理論上どうやって決まるかを説明します。吸光度の理論上の定義はLambert-Beer(ランベルト-ベール)の法則によって、以下のように定められます。

計算式ここで、cはサンプル濃度(mol/L)、lは測定時に光が通過する光路長(cm)であり測定する光学セルによって決まります。またεはモル吸光係数と呼ばれる物質固有の値で、波長によっても異なります。
例えば、ある分子の吸収スペクトルを、1 cmセルで、10 μMの濃度で測定した結果、400 nmの吸光度(A)が0.1であった場合、上の式からこの分子の400 nmにおけるモル吸光係数はε = 10000と求まります。逆にモル吸光係数が既知である場合、吸収スペクトルを測定することによって試料溶液の濃度を求めることができます。

紫外可視分光光度計の応用

Lambert-Beerの法則から、吸収スペクトルから試料に関する定量的な情報を得ることができます。一方で、紫外~可視光領域における物質の光吸収は、分子の電子遷移と非常に深く関係していることから、吸収スペクトルの形状は分子の構造や電気化学的性質に関連した情報を与えてくれます。
例えば、有機化合物の吸収スペクトルを測定した際に観測される最も長波長側のピークは、有機分子の最高占有軌道(HOMO)と最低非占有軌道(LUMO)のエネルギー差に相当し、計算化学や電気化学測定によって導出されるHOMO-LUMOエネルギーギャップとおよそ良い一致を示します。このことから有機エレクトロニクスの分野では、最も基本的で、最も重要な情報を、紫外可視分光光度計によって得ることができます。
もう一つの主な応用例としては、化学反応追跡があげられます。例えば操作前後での吸収スペクトルを比較することによって、任意の化合物AとBの混合によって、化合物Cができるかを調べることができます。

A + B → C

もしこの化学反応が進行しない場合、セル中でAとBを混ぜた時に得られる吸収スペクトルは、別々に測定したAとBの吸収スペクトルの足し合わせと完全に一致します。一方で、反応が進行した場合、新たに化合物Cの吸収スペクトルが表れるため、少しでも反応が進行していれば、AとBを足し合わせたスペクトルとは形状が異なります。
これらは紫外可視分光光度計の利用例のごく一部にすぎません。非常に簡易な測定でありながら、この測定から得られる結果は非常に多岐にわたる考察を可能にします。

紫外可視分光光度計の選び方

先ほども述べたように、普通に市販されている紫外可視分光光度計であれば、装置ごとにそれほど大きな違いがある訳ではありません。当然、装置の質によって感度や測定時間、測定可能範囲等の違いはありますが、予算にあったものを選ぶのが良いでしょう。
ただしより精度の高い測定を行いたい場合は、シングルビームかダブルビームかという点においてある程度留意しておく必要があります。
先に説明した測定原理のように、セルを設置する場所が一か所しかなくブランクとサンプルを同時に測定できない構造のものがシングルビームと呼ばれます。一方で、光源から出て分光器を通過した光が二手に分かれて、サンプルセルとブランクセルを並行して通過できる装置がダブルビームです。ダブルビームの方が光源の出力の揺らぎを厳密に補正できるので、より正確な定量測定には向いていると言えます。
この他、測定できるセルの種類や温度可変測定などのオプション機能の有無など目的に合った測定ができるかどうかを基準に選ぶのが良いでしょう。測定原理の説明図

紫外可視分光光度計主要メーカーと販売価格

紫外可視分光光度計の国内シェアは主に「日本分光」、「島津製作所」、「日立ハイテクサイエンス」によって占められています。この他、海外メーカーでは「パーキンエルマー」、「アジレント・テクノロジー」があげられます。
販売価格は装置によってかなり幅があり、100万円以下のものから、高級モデルでは1000万円を超えるものまで様々です。以下、いくつかのモデル機種を紹介します。

アジレント・テクノロジー Cary 6000i <最高級モデル>

測定可能範囲が175 ~ 1800 nmであり、近赤外領域の吸収スペクトルも測定できる。感度も非常に高く、最大で吸光度8まで測定できる。その他固体サンプル測定用などの拡張ユニットの取り付けが可能である。

日本分光 V-700 series <中級モデル>

非常に高い国内シェアを誇る日本分光の標準シリーズ。測定可能範囲の広いものや、コンパクトなものまでいくつかのモデルがある。

島津製作所 UV-1280 <エントリーモデル>

コンパクトで、制御パネルが装置に組み込まれているため別でPCを置く必要がない。安価でありながら、ダブルビーム形式を採用しており、十分な精度の測定ができる。

まとめ

紫外可視分光光度計は化学分野において最も基本的な分析手法です。測定原理もシンプルで、使い易く、多分野の研究現場において活躍する測定装置です。

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ライター紹介
ライタープロフィール
井関 秀太

現役理系大学院生。光化学・超分子化学分野を中心に研究活動を展開中。

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