ユニバーサルカウンタの基礎知識と製品の選び方について

ユニバーサルカウンタ

太古から人類はいろいろなものを数えてきました。文明が発達し、やがて、目に見えないさまざまな物理現象もカウントする必要が生まれました。電気信号もそのひとつ――。「ユニバーサルカウンタ」は電気信号の周波数や時間を測定するものです。電気信号に関連するさまざまなパラメータも計測します。そして、これらの測定結果を人間の目で見られるようにデジタル表示します。さまざまな産業の製造・検査ラインや研究開発、教育現場などで広く使われてきました。マニアが好んで自作する測定器としても、つとに知られています。ここでは、ユニバーサルカウンタの動作原理、機能と製品の選び方について解説していきます。まずはもっとも基本的な周波数や時間の測定の機能について、みていきましょう。

ユニバーサルカウンタの基本構造と動作原理

周波数とは単位時間あたりの信号のサイクル(繰り返し)数をいいます。1秒間あたりの周波数の単位はHz(ヘルツ)、またはサイクル/秒です。「ユニバーサルカウンタ」(以下、カウンタ)は図に示すように、いくつかの機能を持った回路から構成されています。
ユニバーサルカウンタ回路図

入力される電気信号はカウンタの「入力回路」に入り(①)、つづいて「整形回路」(②)に出力されます。波形は整形され、入力信号は処理しやすいパルス列③へと変換されます。一方、基準となる時間信号は水晶振動子を用いた「クロック(タイムベース)発生回路」(④)で作られます。つづく「分周回路」で測定に適した時間間隔の信号(⑤)にします。信号③と信号⑤がゲート回路の入力信号となり、AND演算が行われます。ゲートがオープンしているゲート時間(”1”の状態)に通過したパルス数(⑥)が、次の「カウンタ回路」で積算されます。積算の結果は、「デジタル表示回路」によって、数値で示されます。

この方式を「直接(計数)方式」または「ダイレクトカウンタ」と呼びます。直接方式では、たとえば1MHz(メガヘルツ)の信号を1秒間のゲート時間で測定するとき、1000000回をカウントし、表示すればこれが分解能となります。つまり、1MHzに対しては7桁が期待できる最大分解能です。この表示桁数はカウンタの性能を示す大事な指標のひとつです。

同様に、1秒間のゲートタイムで1KHz(キロヘルツ)に対しては4桁になり、分解能は1Hzです。ずっと低い周波数、たとえば10Hzの場合にはわずか2桁しかありません。1kHzの周波数を測るのに、たとえばゲートタイムを100秒にすると、6桁表示になり、分解能は0.01Hzになります。しかし、100秒といった測定時間では一般的には使いものになりません。

この場合はゲート回路の入力を逆にしたモードで測定が行われます。時間信号の方は長く取らず、たとえば1ms(ミリ秒)と短くします。測定したい入力信号が‘1’の期間(1周期間)に、今度は時間信号をカウントすることで、時間(周期)が測定されます。周波数=1/周期から、周波数が得られます。この方式を「レシプロカル方式」と呼びます。

内部のクロック周波数を高くすれば、高い分解能で低い周波数から高い周波数までの入力信号の測定が可能です。古いタイプのカウンタは「直接方式」ですが、昨今の“高級な”カウンタは「レシプロカル方式」(の改良型)が主流です。両方式が組み込まれたものも少なくありません。この場合、高い周波数の信号に対しては、「直接方式」、低い周波数に対しては「レシプロカル方式」のモードでと使い分けることが多いようです。

ユニバーサルカウンタならではの機能

「ユニバーサルカウンタ」はこれまで述べてきた「周波数カウンタ」の機能に幾つかの機能が付加されたカウンタです。

周波数カウンタ
上段が周波数カウンタ。ユニバーサルカウンタの前面パネルに比べ、ぐっとシンプル。

著作権者:Coaster J、ライセンス:GFDL 出典元:リンク

信号のパルス幅、位相、ヂューティ比(パルス幅/周期)、立ち上がり時間/立ち下がり時間、そして、2つの入力信号の時間差(タイムインターバル)や周波数比なども測定できる、なかなかの万能選手なのです。ある時間、蓄えた測定データを統計解析し、その結果を表示できるものもあります。

ユニバーサルカウンタの操作について

ユニバーサルカウンタは入力された信号の周波数を測定し、表示するだけのシンプルな機器と思われがちですが、カウンタの操作にあたってはいくつか注意することがあります。

  1. 測定前に入力信号の大きさ・波形をチェックしておきましょう。
  2. カウンタの仕様書の耐圧を越える入力電圧を加えないようにするためです。入力信号に対して、カウンタの最適な測定モードを設定するためにも必要です。

  3. インピーダンスを合わせましょう。
  4. データシートに記載されていますが、カウンタの入力インピーダンスは、一般に1MΩ(<約10MHz)や50Ω(>10MHz)です。信号側とのインピーダンスマッチング(整合)が悪いと、信号の電圧レベルが小さすぎて測定不能になったり、逆に、過大入力がカウンタに加わる怖れが出てきます。

  5. 信号線のノイズに注意しましょう。
  6. ノイズが大きい入力信号は測定誤差を引き起こすことがあります。ノイズの正体を十分に見極めた上で、必要に応じてケーブルへの対策、フィルタの挿入などの措置を講じて、 ノイズの低減化を行った上で、測定に臨みましょう。

  7. 電源プラグは抜かないようにしましょう。

タイムベース発振器の安定性はカウンタの測定の確度に大きく影響します。
発振器は仕様に記された温度環境にカウンタが置かれていたとしても、仕様の安定度に達するには、電源をオンしてから24時間以上かかるカウンタもあります。
電源プラグさえ抜かなければ発振器には電源が供給されますので、カウンタの電源をオフしても、ウォームアップは必要ありません。

測定誤差とその対策

ハイクラスのカウンタであっても、程度の差こそあれ、以下のような測定誤差が存在します。

  1. ±1カウント(量子化)誤差
  2. 測定を開始すると、表示桁の最下位が1つ増えたり減ったリします。これを量子化誤差といいます。クロック周波数と入力信号とが同期していないために生じます。 

  3. タイムベース誤差
  4. 水晶発振器の経年変化(エージング)、温度変動、校正の不確かさによって、生じるクロック周波数の誤差です。

  5. トリガ誤差
  6. カウンタの感度が良いと、ノイズの乗った入力信号にも反応して、測定結果を狂わすことがあります。信号が本来のトリガポイントを上回ったり、下回ったりするためです。

1.については、レシプロカル方式で測定する場合、ゲートタイムを長くするか、高い周波数のタイムベースを使えば量子化誤差を相対的に小さく抑えられます。
補間器を採用し、誤差を軽減したカウンタもあります。2.については、定期的にカウンタを正しく校正することで誤差を小さくできます。

校正済ラベル
ユニバーサルカウンタの前面パネル上部に「校正済」ラベルが貼ってあります。 所有者はNASA(アメリカ航空宇宙局)のラボのようですね。校正作業は抜かりなく毎年行っていることが伺えます。

著作権者:Colby Gutierrez-Kraybill、ライセンス:CC BY-2.0 出典元:リンク

3.については先ほど触れましたように、入力信号のノイズを減らすことが先決ですが、カウンタ側にもちょっとした仕掛けがあります。カウンタの感度との兼ね合いになりますが、小さなノイズによってカウンタが動作しないように内部に不感帯(ヒステリシス・リミットといいます)を設けています。

主要なメーカとそのモデル

プロフェッショナルユーザー向けカウンタの筆頭にあげられるメーカーは「キーサイトテクノロジー」でしょう。「531XXAシリーズ」はひところ、業界標準ともいわれました。販売は終了していますが、現在もメーカーサポートは継続中で、中古品、レンタル品も人気のようです。後継機種の「53200Aシリーズ(53210A/53220A/53230A)」は“業界最高水準”とうたっています。当然、お値段も本体だけで約500,000円(税込)とハイクラスです。

キーサイトテクノロジー
キーサイトテクノロジーのユニバーサルカウンタ53131A。HEWLETT PACKARDはキーサイトテクノロジーの前身の前身の計測器メーカー。 1952年に世界初の周波数カウンタを作りました。

著作権者:Colby Gutierrez-Kraybill、ライセンス:CC BY-2.0 出典元:リンク

「岩崎通信機」も歴史のあるメーカーで、現在販売されているのは末尾に”A”がついた「SC-72XXAシリーズ」です。「SC-7217A/SC-7215A/SC-7205A」はそれぞれ税別で、約300,000円/200,000円/100,000円です。「SC-72XXやSC-72XXHシリーズ」は販売を終了していますが、中古品、レンタル品ではいまだ健在です。

いずれの機種も入力2チャネル+1チャネル(オプション)を備えており、第3チャネルはGHzオーダーのマイクロ波の測定に対応しています。

古いカウンタでも、発振器の校正をまめに行ったり、外部の高精度の基準信号を使うことで、まだ、そこそこ使えるものもあります。

1980年代にプロフェッショナルユーザー向けに販売された「アドバンテスト」のTR5821~5823はいまだに中古販売やレンタルされていますが、マニアの間でも根強い人気を持っています。TR582Xはただの「周波数カウンタ」ではなく、すでに「ユニバーサルカウンタ」としての機能も備えていました。取りあえず、「ユニバーサルカウンタ」を使ってみたいという人には、これは選択肢のひとつになるかもしれません(ただし、ジャンク品にはご用心!)。

 

ユニバーサルカウンタの選び方

「ユニバーサルカウンタ」としての機能をもちながら、主要な仕様に対して優れた特性をもつ製品を求める場合は、購入後のサポートの点からも、上記のメーカーのものが無難かもしれません。

ポイントとなる仕様項目は次のようになります。(メーカーによって、同じ仕様項目を異なる表現で表していますので、()内に付記しておきました)

1)周波数帯域(周波数レンジ)
(参考 53200Aシリーズ : DC~350MHz、SC-7217A/7215A : DC~450MHz)帯域幅が広いほど優れていますが、被測定対象の要求に見合った帯域幅をもつカウンタを選ぶのが賢明でしょう。

2)表示桁数(周波数分解能。“/s”表記は1秒のゲートを表します)
桁数が多いほど優れています。(参考 53200Aシリーズ :12桁/s、SC-7217A/7215A : 12桁/s)

3)時間分解能(タイムインターバル分解能/シングルショット分解能)
(参考 53200Aシリーズ :インターバル=100ps/シングルショット=20ps、SC-7217A/7215A : 6ns)キーサイトテクノロジーの53200Aシリーズはとうとう、ピコ表示レベルへ到達したようです。

4)内部基準周波数の安定度(タイムベースの安定性)
(参考 53200Aシリーズ、SC-7217A/7215Aともに±1ppm/年)ハイクラスの機器でも校正をしないと、10MHzの基準クロックの場合、1年たつと10Hzの誤差が発生してしまいます(基準温度25°C)。

入力感度については周波数帯域に依存しますが、どの機種も似たり寄ったりのようです。

*周波数の時間的変動など、時系列な測定結果をEXCELに出力する
*測定結果を高速に統計解析して表示する
などの付加機能、ソフトを提供している機種もあります。

いくつか機種を絞り込んだら、何をどこまで行いたいのかをしっかりイメージして、仕様項目だけでなく、操作性、メンテナンス性、拡張性も検討し、最終決定するのがよいかと思います。

こういった製品の機能は少々過剰で、予算的にも厳しいという場合には、別の選択肢もあります。

「周波数カウンタ」としての機能だけなら、多くのメーカーのものがあり、1万円未満からあります。中国製などの安価な製品もあり、ネットでも実際に使用したユーザーの詳細なレポートがあがっていますので、参考にしてみるのもいいでしょう。昨今では、安価なデジタルテスタでも、周波数カウンタの機能を搭載している機種があります。

ユニバーサルカウンタを使いこなす

「ユニバーサルカウンタ」は時間と周波数を測定する「周波数カウンタ」にいくつかの測定項目が付加された拡張型カウンタです。分解能が向上し、測定データをより詳しく、よりスピーディーに解析する機能が加えられるなど進化し続けています。その一方で、ユニバーサルカウンタを正しく使いこなすには、固有の誤差についての正しい理解と測定データの不確かさを減らすための対策や定期的なメンテナンスが求められます。ユニバーサルカウンタの基本的な機能は80年代の機器にすでに作り込まれていました。古い型のものもいまだに多く出回っており、「ユニバーサルカウンタ」の市場は多様です。それだけ、選択肢が広いといえそうです。

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ライター紹介
ライタープロフィール
ランしゃー

企業エンジニアとして、メカトロニクスやパソコンの開発業務に十数年間携わった後、サイエンス&テクニカルライターに転身。企業時代の製品開発経験と知識を生かし、テクニカルライターとしてパソコン関連記事やマニュアルの執筆・翻訳に関わった。しだいにサイエンスライターとしてさまざまな分野にチャレンジ。国内外の豊富な取材をもとに、新聞、科学系雑誌などにロボットや介護/介助テクノロジー、人類進化・古代史の記事を20年余、執筆・翻訳する。2012~2017年にシンガポールに滞在。シンガポールの知られざる自然、驚異の生き物について、現在、厖大な取材データを整理中。メカメカしいモノと生き物(とくに犬、次いで鳥)がともに大好きなシニアライターです。

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