現代の計測器において利用されている様々な記述を、一つ一つ詳しくご紹介していくシリーズ記事。
現代の計測機器の多くは旧来のアナログ式の計測機器に比べデジタル方式を採用したことで飛躍的にその精度が高くなっています。
しかし実はそこに応用されている技術は計測機器の種類や用途が変わっても、同じ技術が応用されていることもしばしばです。
このシリーズではそうした様々な計測機器に応用される、基本的な技術や仕組みについてできるだけ分かり易く、できるだけ詳しくご紹介していきます。
第四回は超音波についてご紹介します。
このページの目次
超音波の正体は
それではまずあ超音波とは一体どのようなものなのか?
超音波の正体についてご説明していきます。
音波とは?
人間が音を音として認識できるのは、その音の持つ振動が空気によって伝わり鼓膜を振動させる為です。
この音の持つ振動の周波数を「音波」と呼びます。
音波は人間の耳で聞くことのできる周波数は、20~20000メガヘルツと言われており、この範囲の周波数を「可聴音域」と言います。
可聴音域は個人差や年齢によって変化しますが、概ね上記の周波数帯が可聴音域と言われています。
音波と超音波の違いは?
上記の通り、人間の耳で聞くことのできる周波数をもった音波の範囲を可聴音域と言いますが、この可聴音域よりもさらに高い周波数をもった音波のとこを「超音波」と呼んでいます。
超音波の周波数は20000MHz以上と言われています。それ以上であればすべて超音波と表現をされるため、超音波の周波数については上限は定まっていません。
つまり、超音波と通常の音波の違いは周波数の違いということになります。
ちなみに、人間には聞くことのできない超音波ですが、自然界では多くの生き物が人間に聞き取ることのできない超音波を聞き取り(感じ取り)情報の伝達などに利用しています。
極稀に人間には聞き取ることのできない音域のいわば超音波を発することのできる歌手がいることも知られています。
超音波を聞き取ることのできる動物たち
有名なところではイルカやクジラなどの海洋生物が挙げられます。
彼らは超音波を感受することができるだけではなく、自らも超音波を発することができます。
また、陸上ではコウモリも超音波を操る動物の代表といえます。
超音波の特徴とは?
超音波は揺らぎをもった振動の部類であるため、真空中では伝わることはありません。
同じように揺らぎのエネルギーである光が、透明な媒体でしか伝わらないのに対して超音波は水や空気、個体などあらゆるものによって伝わる性質があります。
また、媒体によってその伝わる速度が変化します。基本的には気体中がもっとも伝わりにくく、液体・個体の順に伝わりやすくなっています。
また、その速度は伝わりやすさに比例して早くなる傾向があり、空気中では秒速約340mですが液体(水中)での伝達速度は秒速1500メートルになります。
超音波は消滅する?
超音波は音の伝わりと同じように、伝わっていく距離が長くなるほどにその強さが失われ、やがて消滅してしまいます。
この消滅までの距離は、超音波をつたえる媒体によっても変化するほか超音波自身の周波数の違いによってもその距離や時間は変化します。
一般的には周波数が高いほど、短い距離にしか届かなくなります。
超音波はまっすぐ進む
超音波のもう一つの特徴は、その指向性です。
超音波は可聴音と比較して、まっすぐ進み拡散しにくい特徴を持っています。
コウモリが暗闇の中でも、障害物の位置を正確に把握したり捕食対象である昆虫などの位置を正確に把握できるのは、超音波のこの性質を利用していると考えられています。
この指向性ついても周波数が高ければ高いほどに鋭くなる傾向があります。
また、音速の違う物体にあたった際にはその境界面で反射するという特徴も持っています。
例えば、ショートケーキのようにクリームとスポンジが層をなしているような場合に、表面のクリームの層を通り抜けた超音波は、その下のスポンジの層に到達したタイミングで反射されます。
この原理は医療用のエコーなどに、先ほどの高い指向性と合わせて利用されている特徴です。
超音波の利用方法
超音波の利用には大きく分けて二つのものがあります。
一つは超音波の特性を活かしたセンサーなどによる情報的観点での利用。
もう一つは、超音波の持つ力に着眼した動的な利用です。
それぞれの利用について、いくつか具体例を挙げてご紹介します。
超音波の情報的観点での利用
もっとも身近なのは、医療用のエコーでしょう。
医療用のエコーは先ほども紹介した超音波の指向性と反射の二つの特徴を利用した機器です。
人体に向けて照射されたる超音波は皮膚などの体の表面を通り抜ける性質をもった周波数のものが船体されます。
人体の表面を通り抜けた超音波は骨や筋肉といった、表皮とは違った特徴をもった組織に当たりその境界面で反射します。
その反射を受信し映像化したものが医療用のエコーです。
同じように体内を撮影できるものにX線がありますが、X線は骨は透過しないものの筋肉などは透過してしまいます。
その点、超音波はその周波数をコントロールすることで透過させたい対象を選ぶことができ、体内の狙った個所を画像として移しだすことができます。
超音波の動的利用
音などと同じように超音波はエネルギーを持った存在です。
超音波の利用ではしばしばそのエネルギーの利用を目的とした機器も存在します。
こちらも身近なところでは眼鏡店などに設置されている「超音波洗浄機」などが、この超音波を動力として利用している器機になります。
この超音波洗浄機では、洗浄対象に対して通常は液体の媒体を利用して大量の振動を加えます。
そうすることで対象の表面に付いた汚れなどを浮き上がらせる効果があり、結果として対象を洗浄することが可能になります。
超音波の可能性
超音波は比較的安全なものでもあり、今後も身近なところでの利用が盛んにおこなわれるものです。
また、他の技術とのハイブリッド利用も盛んにおこなわれており、今後ますますその利用価値は高まる技術と言えます。