アドバンテスト社のスペクトラム・アナライザ「U3741/3751」の特長は次の3点です。
- コンパクト、高性能、高速処理
- 多彩な測定機能
- 豊富なオプション
さらにコストパフォーマンスにも優れ、U3741は698,000円、U3751は980,000円となっています。
1. コンパクト、高性能、高速処理
U3741/3751はコンパクト、高性能、高速処理を実現しました。
持ち運びが楽、どこでも使える
U3741/3751は従来製品より性能を高めながら、大きさを1/2にしました。幅308mm×高さ175mm×奥行209mmというコンパクトさです。
軽量化も実現し、U3741は5.0㎏、U3751は5.6㎏です。
楽に持ち運べるので、生産ラインでも保守でも場所を選ばず使うことができます。
専用バッテリを使えば2時間30分間にわたって電源のない場所で使用できます。
電源にはそのほか、AC(100V/200V)とDC(+11~+17V)も利用できます。
施設内でも、工場内でも、屋外のフィールドでも、場所を選ばず測定できます。
電力測定精度が飛躍的に向上
デジタル変調波の電力測定精度が飛躍的に向上しました。
3~8GHzのプリアンプを標準装備し、表示平均ノイズ・レベルはプリアンプのオンのときに-155dBm/Hz@1GHzを実現しました。
トラッキング・ジェネレータの採用により、100kHz~3GHz/6GHz帯域をカバーできます。
IFセクションをデジタル化したことで、パワー測定の絶対値確度が向上しました。
U3741/3751は±0.8dB(10MHz~3GHz)、U3751は±1.0dB(3~8GHz)となっています。
測定スピードが2倍に
U3741/3751のシステム・スループットは、GP-IBを使用時に350msと、従来製品の875msから約2倍の高速化に成功しました。
測定の高速化は、工場の生産ラインの試験コストを大幅に削減するでしょう。
2. 多彩な測定機能
測定機能は次のとおりとなっています。
Channel Power | Total Power | Avg Power | OBW |
ACP | Spurious測定 | Harmonics 測定 | IM測定 |
Noise/Hz換算 | マルチ・マーカ(10個) | デルタ・マーカ | ピーク・マーカ機能 |
チャンネル設定機能 | 3トレース同時サンプリング |
測定機能の多彩さもU3741/3751のアピールポイントになっています。
RMS処理により高確度のパワー測定が可能に
通信容量を拡大したデジタル変調波では、電力の広帯域への拡散やピーク・ファクタの拡大が問題になります。
そこでU3741/3751では、高速サンプリングした瞬時値パワーを実効値計算(RMS)処理し、パワー・スペクトラムにすることにしました。これによりU3741/3751は高確度のパワー測定が可能になりました。
デジタル変調波のパワー測定で、0.01dBの再現性が得られます。
正確な周波数測定ができる
従来の製品では、複数のスペクトラムが存在するとき、そのなかから測定したいスペクトラムだけを選択することは簡単ではありませんでした。
そこでU3741/3751では、1Hz分解能周波数カウンタを装備。これにより、測定したいスペクトラムにカーソルを合わせるだけで正確な周波数測定が可能になりました。
U3741/3751は、マルチ・キャリア・システムにおける各搬送波周波数測定において、1Hz分解能周波数カウンタは必須の機能となるでしょう。
広帯域の測定をしながら特定信号を解析できる
U3741/3751はF-TモードやT-Tモードで多彩な信号解析ができます。
ウインドとF-Fモードを使うことで、広帯域の測定をしながら特定信号を解析する、といった使い方もできます。
また、RBWなどを自由に変更することもできます。これにより、測定したい信号の広帯域解析と狭帯域解析を短時間で測定できるようになります。
ハイエンド・モデル並みの入力感度
U3741/3751は、全周波数帯域をカバーできるプリアンプを標準装備しています。
これにより、微弱レベルの信号解析では、ハイエンド・モデル並みの入力感度が得られます。
屋外で電波環境調査を行うとき、使用するアンテナのロスを補えます。
「自分だけのファンクション・キー」で操作性アップ
ユーザ・ファンクションを活用すれば、複数のファンクション・キーから任意のファンクション・キーを選択し、画面に配置することができます。
ユーザが「自分だけのファンクション・キー」を集約すれば、操作性が格段に向上するでしょう。
PASS/FAIL判定でデジタル家電の生産性が向上
U3741/3751ではPASS/FAIL判定に、スペクトラム・マスクやリミット・ラインを使っています。この機能は、デジタル家電の生産性を向上さるでしょう。
また、スペクトラム・エミッション・マスク(SEM)を使うことで、無線LANなどの規格測定が容易になります。
3. 豊富なオプション
U3741/3751は豊富なオプションがあります。一覧表で紹介します。
品名 | 型式 | 概要 | 本体との対応 (○搭載可能、×搭載不可) |
||||
U3741 | U3751 | ||||||
1ch | 2ch | 1ch | 2ch | ||||
50Ω系 | 2チャンネル入力(50Ω) | OPT.10 | RF INPUT2(9kHz~3GHz)の追加。 RF INPUT1と2は独立した測定。 |
- | ○ | - | ○ |
EMCフィルタ | OPT.28 | EMI測定用CISPRバンド幅、QP検波を追加。 RBW(6dB Down):200Hz、9kHz、120kHz、1MHz |
○ | ○ | ○ | ○ | |
トラッキング・ジェネレータ(3GHz) | OPT.76 | 周波数:100kHz~3GHz。出力:0~-60dBm。 | ○ | ○ | ○ | × | |
トラッキング・ジェネレータ(6GHz) | OPT.77 | 周波数:100kHz~6GHz。出力:0~-30dBm。 | × | × | ○ | × | |
75Ω系 | 2チャンネル入力(75Ω) | OPT.11 | OPT.15にRF INPUT2(9kHz~2.2GHz)の追加。 RF INPUT1と2は独立した測定。 |
- | ○ | - | × |
1チャンネル入力(75Ω) | OPT.15 | RF INPUT:75Ω(9kHz~2.2GHz)。 CATVやTV映像信号測定用。 チャンネル・ テーブルデータ インストール済。 |
○ | - | × | - | |
トラッキング・ジェネレータ(2.2GHz) | OPT.75 | 周波数:100kHz~2.2GHz。出力:107~47dBμV。 | ○ | ○ | × | × | |
共通 | 高安定周波数基準源 | OPT.20 | エージング・ レート±2×10-8/日、±1×10-7/年の基準源。 | ○ | ○ | ○ | ○ |
時間軸解析(1ch/2ch) | OPT.53/54 | 時間軸での高周波基本量解析。 最大測定帯域幅:3MHz(振幅/位相/周波数/FFT/IQ/IQ出力) |
○ | ○ | ○ | ○ | |
広帯域時間軸解析(1ch/2ch) | OPT.55/56 | 時間軸での高周波基本量解析。 最大測定帯域幅:40MHz(振幅/位相/周波数/FFT/IQ/IQ出力) |
○ | ○ | ○ | ○ |
ユーザの「便利さ」を追求
U3741/3751は、さまざまな機能を搭載することで、ユーザの「便利さ」を追求しています。
ウォームアップ時間5分だから「便利」
使いやすさの点では、ウォームアップ時間の短縮にも成功しました。U3741/3751のウォームアップ時間は気温20~30度の環境下でわずか5分です。予熱時間に配慮する必要がないので、現場に到着してすぐに測定を開始できます。
画面ショットを簡単に貼り付けられて「便利」
USBインターフェースを装備したので、画面ショットを簡単にコピーできます。画面ショットはBMP形式でもPNG形式でも保存できます。
これにより、パソコンにデータを蓄積することも、報告書に測定データを貼り付けることも容易になりました。
送信時のパワー・スペクトラムの観測に「便利」
レーダ波やTDMA通信方式では、出力パワーを間欠的にオン・オフします。
したがって、レーダ波やTDMA通信方式の送信時のパワー・スペクトラムを観測するには、オンのタイミングでスペクトラムを解析しなければなりません。
U3741/3751にはGated Sweep機能が搭載されているので、オンのタイミングでスペクトラムを容易に解析できます。
また、同期信号を必要としないIFトリガ機能も搭載しています。
遠隔操作ができるから無人の無線送信所で「便利」
U3741/3751には10/100BASE-T LANポートが付いているので、LANを経由することで外部のパソコンで遠隔操作することができます。
例えば無人運転している無線送信所とLANでつなげば、遠隔地から操作したりモニタリングしたりすることができます。信号出力の測定や観測も可能です。
障害点までの距離測定に「便利」
U3741/3751では、同軸ケーブルの障害点(オープン/ショート)までの距離の測定を容易に行えます。
この機能を実行するには、U3741/3751のトラッキング・ジェネレータ・オプションと外部パソコン用のサンプル・ソフトウェアが必要です。