音で柔らかさを測定する「やわらかセンサー ソフトグラム」

リス

硬さと柔らかさは「同一線上にある感覚」ですが、硬さを測定することは簡単で、柔らかさを測定することは困難です。
硬さの数値は、割れるまで力を加え、割れたときの力で表示できます。鉄とチタンの硬さの違いは数値化できます。
しかし大福とマシュマロの柔らかさの違いはなかなか数値化できません。

この柔らかさの測定という難題を解決したのが、新光電子株式会社(本社・東京都文京区)の「やわらかセンサー ソフトグラム(SOFTGRAM)」です。
ソフトグラムは、音で食材や肌などの柔らかさを測定し、数値化します。

柔らかさに価値を置いた商品は、大福、パン、ソファ、マットレス、歯ブラシの毛など、数多く存在します。これまでは、ベストの柔らかさを出すのに熟練者の感覚に頼っていましたが、ソフトグラムによって誰でも柔らかさを測ることができるようになります。

柔らかいサーモン

ソフトグラムの外観と使い方

音で柔らかさを測定する「やわらかセンサー ソフトグラム」

ソフトグラムの外観 引用:https://www.vibra.co.jp/softgram/

ソフトグラムは、ペンと取っ手を合体させた外観をしています。ペン先に接触検知センサーがついていて、ユーザーは取っ手をつかみながら測定対象にペン先を軽く押し当てます。それで測定は終了します。
柔らかさの数値は、パスカル(Pa)で表示されます。パスカルは圧力の単位です。

3つの原理で音を柔らかさに変換

ソフトグラムは、音で柔らかさを測定します。
新光電子は、物体の柔らかさと物体が出す音に相関関係があることを発見しました。音とやらさかさの関係は次のとおりです。

  • 2つの物体が同じ材質でできていても、柔らかさが異なると出す音が異なる
  • 2つの物体が異なる材質でできていても、柔らかさが同じなら同じ音を出す

柔らかさは直接数値化できませんが、音なら数値化できます。それでソフトグラムは、物体の音を測定し、それを柔らかさの数値に変換している、というわけです。

ここでひとつ疑問がわきます。
「かなり柔らかい」物体と「普通に柔らかい」物体と「柔らかいけど硬い」物体が違う音を出したとしても、その3つの音をどのように「かなり柔らかい音<普通に柔らかい音<柔らかいけど硬い音」と並べるのでしょうか。
つまり、ド、レ、ミの3つの音を聴いても「ドがかなり柔らかく、レが普通に柔らかく、ミが柔らかいけど硬い」とは判定できません。

音の数値を柔らかさの数値に変換するには、次の3つの原理が必要です。

  • 弾性接触理論
  • ヤング率
  • 音叉(おんさ)の原理

弾性接触理論

弾性接触理論とは、球体と平面が接触するとき、点ではなく面で接触する、という理屈です。

球体と平面が接触しても、そこに力が加わっていないとき、「理論上は」点で接触します。数学や物理での「理論上の」点は、面積ゼロです。
面積ゼロの点に力を加えると、その力は「理論上は」無限大になってしまいます。しかし「現実世界では」無限大の力を受け止められる物体は存在しません。
つまり、「現実世界では」球体と平面が点で接触することはあり得ません。

では「現実世界での」球体と平面の接触で何が起きているのかというと、球体または平面が変形して、面で接触します。
この変形が、球体または平面の耐えられる範囲内で行われていれば、力が取り除かれれば球体も平面も元に戻ります。
しかしさらに力が加わると、変形したまま元に戻りません。
この現象を数式で表したのが弾性接触理論です。

ソフトグラムの先端には金属製の球体が取り付けられていて、それを測定物に押し付けます。
ソフトグラムの金属球体が、弾性接触理論の球体であり、測定物が弾性接触理論の平面になります。
ソフトグラムが弾性接触理論の力を測定するときに使うのが、ヤング率です。

ヤング率

ヤング率は物体の強さの尺度で、物体にかかる力の数値と、その力によって生じる物体のひずみの数値を使って表します。

物体に力を加えると、物体の内側に力が発生します。その力を応力といいます。
物体に加わった力は物体をひずませようとしますが、応力がひずみを阻止して物体を復元させようとします。
しかし、物体に加わる力が応力を超えると、物体のひずみは復元しません。ひずんだままになります。さらに物体に力を加えると、物体は壊れます。
ソフトグラムは、物体にかかる力とひずみと応力を測定します。

音叉の原理

音叉の原理とは、同じ固有振動数を持つ2つの物体は共鳴し合う性質がある、という理論です。
世の中のすべての物体には、固有振動数があります。固有振動数とは、物体を揺らしたときの揺れの数のことです。
2つの物体の固有振動数が同じなら、2つの物体の形が異なっていても共鳴します。
共鳴とは、固有振動数が同じ物体を2つ並べ、片方の物体に力を加えて揺らすと、他方の物体が、力が加わっていないのに揺れる現象のことです。

さまざまな種類の音叉を並べ、その近くで別の音叉を鳴らすと、同じ固有振動数の音叉が共鳴します。

固有振動数は、物体の硬さによって決まります。物体の硬さには、硬いほど音が速く走るという性質があります。
そして、音の速度が速いほど、音は高くなります。硬い金属ほど高い音を出すのはそのためです。
つまり音を測定すると物体の硬さ、または柔らかさがわかるわけです。

世界初の技術「音叉式力センサー」

新光電子は弾性接触理論、ヤング率、音叉の原理の3つの現象を使って、「音叉式力センサー『ビブラ(ViBRA)』」を開発しました。
ビブラが、柔らかさを測定するソフトグラムの基礎技術となっています。

ビブラは、音叉を2個つないだ装置です。ビブラに力を加えると、ビブラの振動数が変化します。つまりビブラの振動数を計測すると、力が判明します。
ソフトグラムは、ヤング率の測定と、ビブラによる振動数によって、測定物の柔らかさを数値化します。

年商10億円を目指す!!

柔らかさの測定技術は、これまで存在しませんでした。しかし「柔らかさを測定したい」「製品の柔らかさを一定に保ちたい」と考えている企業はたくさんあるはずです。
ソフトグラムの価格は120万円で、新光電子では年間売上高10億円を目指しています。単純計算で、年833個売る必要があります。
「そんなに売れるのだろうか」と思うと同時に「もっと売れるはずだ」とも感じます。

新光電子株式会社とは

新光電子株式会社は東京都・湯島に本社を置く、1963年創立、資本金5,000万円、従業員139人の中小企業です。主要製品は、分析用天秤、電子天秤などで、はかりメーカーです。
新光電子は、株式会社イシダのグループ会社です。

イシダは1893年創業、資本金約1億円、連結売上高1,283億円(2019年3月決算)、グループ従業員数約3,688人の大企業です。
イシダは、食品製造工場、工業製品工場、小売業、物流などに、計量、計数、包装、箱詰め、検査、管理、搬送などのソリューションを提供しています。

まとめ~変えて数値化する

数値化できてはじめて「測ることができた」ということができます。これまで柔らかさは数値化できなかったので、測ることができない現象と考えられてきました。
それを新光電子は、音と振動と変形とゆがみで、柔らかさを解析して数値化することに成功しました。
柔らかさを、感性の領域から数値の領域に移行させた功績は大きいといえるでしょう。

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ライター紹介
ライタープロフィール
アサオカミツヒサ

フリーライター、ライティング事務所office Howardsend代表。北海道大学法学部を卒業後、鉄鋼メーカー、マスコミ、病院広報などを経て2017年独立。取材した分野は、地方政治、地方経済、過疎化、ワーキングプアなど。現在の執筆領域はIoT、AI、産業一般、人事制度、金融、最新抗がん剤、生活習慣病治療など。趣味はクルマとバイクと登山。北海道釧路市在住。

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