計測の基本は正しい計測方法の取得から!
穴の径などを比較的簡単に計測できる計測機器であるシリンダーゲージ。
しかし簡単に計測できる反面、三点マイクロなどと比べると測定誤差が大きい計測器でもあります。
今回はシリンダーゲージによる計測の仕組みと、正確な計測の為のノウハウなどを一般的な穴の計測だけにとどまらず、応用的な計測方法を含めて詳しくご紹介していきます。
このページの目次
シリンダーゲージは計測する機器ではない!?
さて、まず最初にシリンダーゲージとそれによく似た三点マイクロメーターの違いについてお話します。
両者の最大の違いは、シリンダーゲージがその名の通り「ゲージ」であるのに対して、三点マイクロメーターが計測器であるという点です。
結局は同じように穴の寸法を計測するための道具であることから、しばしばゲージと計測器はしばしば同義として取り扱われます。
しかし、計測器がそれ単体で寸法を把握できる機能を有しているのに対し、ゲージはあくまでも寸法を比較するための道具であることから、それ単体では寸法を計測することはできません。
ゲージの仲間であるシリンダーゲージは、計測の対象となる穴の寸法を可能な限り忠実に再現することでを目的とし、その寸法を値を得るためには「アウトマイクロ」などの別の計測機器が必要となります。
シリンダーゲージは比較によって数値を得ている
シリンダーゲージを使用する場合、その多くは「アウトマイク」や「基準リング」といった別の対象物との寸法の誤差を読み取ることで、計測数値を得ています。
例えば検査対象がφ50の穴であったと仮定します。
この場合準備するのはφ50を計測することのできるシリンダーゲージ本体とダイヤルゲージ、そしてφ50の寸法の基準となる「アウトマイクロ」や基準リングと言うことになります。
計測に先立って、基準リングなどを用いてφ50を計測した時に付属のダイヤルゲージの数値が「0」を指すようにセットします。
その後、計測対象に実際にシリンダーゲージをあてがい、その時のダイヤルゲージの指し示す数値を読み取り、基準リングを計測した時の数値との差を把握し、差し引きすることで寸法を把握します。
このようにシリンダーゲージは比較対象があって初めて数値を把握することが出来る仕組みであるため、使用には必ず比較対象が必要と言えます。
シリンダーゲージでの計測の基本
それでは実践的な計測について話を進めていきます。
まず、準備として計測に必要なサイズのシリンダーゲージを組立てます。
多くのシリンダーゲージの場合は、複数のサイズを一つのボディで計測できるようパーツを複数組み立てて使用します。
その為、計測する寸法が計測できるサイズのボディーのセットを準備します。
検査前の確認事項 有効桁数を考慮する
続いて、実際の計測で使用するダイヤルゲージを準備します。
ダイアルゲージにはその動きの大きさによって計測できる最小サイズの違うものが存在します。
その為、計測する対象の寸法精度がどの程度まで必要かによって、ダイヤルゲージを選択します。
多くの場合、ダイヤルゲージの一目盛りは1/100のタイプを使用しますが、場合によっては1/1000のゲージののタイプを使用することもあります。
これは図面に記載されている公差を基に判断されますが、実際のシリンダーゲージの測定では後述の計測誤差などの理由でほとんどの場合1/100の物を使用します。
セット時の注意点
シリンダーゲージの準備が乗ったのちに必要となるのが、基準寸法との比較による付属ダイヤルゲージのセット作業です。
例えば計測寸法がφ50の時、シリンダーゲージは比較対象となるアウトマイクロやリングゲージのφ50を測定したときに、ダイアルゲージが50ちょうどを指すようにセットします。
この時、長時間かけてシリンダーゲージのセットを行うと測定者の体温によってシリンダーゲージのボディそのものが伸縮し、正確な測定の様上げとなるためできるだけ速やかなセッティングが必要です。
また、綿の手袋を使用するなど体温をシリンダーゲージに伝えない工夫も必要となります。
数値の読み取り方
さて、準備が整った段階で速やかに計測作業に移行します。
この時も体温による計測機器の伸縮を最小限に抑えるため、できるだけ速やかな作業が必要となります。
実際の計測では、対象となる計測箇所にシリンダーゲージを挿入し計測した際のダイヤルゲージの数値を読み取ることによって計測数値を導きます。
例えばダイヤルゲージの数値が基準の0を境に左側に振れていた場合は、計測した穴がその数値分大きいことを意味し、反対に右に振れればその数値分小さいことを意味します。
また、シリンダーゲージではダイアルゲージの数値を読み取る際に正面から直視し角度による読み取り誤差を最小限にすることも重要です。
シリンダーゲージを使用した様々な応用的計測
さて、シリンダーゲージの計測の基本は穴の大きさを測る事です。
しかし、同じ穴の大きさを測る三点式マイクロメーターと違い、シリンダーゲージでは穴の大きさ以外にも工夫次第では様々なものを計測することが可能です。
ここではシリンダーゲージで計測することのできる、穴以外の寸法要素についてもご紹介します。
溝の幅を計測する
シリンダーゲージを使用して溝の幅を測ることも可能です。
同じような用途でキャリパー式のアウトマイクロを使用することももちろん可能ですが、アウトマイクロの場合は測定できる寸法が20ミリ刻みとなっており、幅の広い様々な溝の計測を行う場合には大量の種類のアウトマイクロが必要となります。
その点、シリンダーゲージでは組み立て式である特性を活かし、少量のボディラインナップで幅広い寸法の計測に対応することが可能です。
段差の大きさを計測する
定盤の上に下向きにセットされた製品の、定盤からの高さを計測する際にもシリンダーゲージは優れた汎用性を発揮します。
通常、この種の測定は直接その高さを計測することが難しく、2点や3点の計測結果から計算によって導き出されることが多い計測です。
その場合、計測誤差の積算によって寸法の精度が狂いやすといった弊害がありますが、シリンダーゲージであれば直接艇に計測が可能であるため、簡易で且つ正確に計測を行うことが可能です。
計測方法にルールは存在しない、でも取扱いには注意が必要
このように、工夫次第では様々な計測に柔軟に対応できるシリンダーゲージ。
計測方法やその使用方法には明確なルールといった物は存在しません。
計測やの工夫によってその可能性は大きく広がります。
しかし、アウトマイクロなどの計測機器と比較して構成部品の多さやその細かさ故の強度不足も否定できません。
計測方法にルールはないとはいっても、取り扱いには他の計測器以上の注意を払い慎重に取り扱う必要があります。
きちんと扱ってその性能を余すことなく発揮してください。