今回はおそらく誰もが小学校の理科の実験で一度は使ったり、目にしたことのある「リトマス試験紙」についてご紹介します。
一般的にリトマス試験紙は対象となるものが「酸性」なのか、はたまた「アルカリ性」なのかを把握する試験に用いられます。
そんな身近なリトマス試験紙の仕組みや、正しい読みとり方法などについてもご紹介していきます。
このページの目次
リトマス試験紙とは?
まず初めにリトマス試験紙の基本をおさらいします。
リトマス試験紙とは主に液体の液性(pH)を簡易的に把握するための試験紙です。
液体はおおきく「酸性」「アルカリ性」「中性」の三つの状態に分類されます。またそれぞれにその液性の強さによって「強酸性」や「弱アルカリ性」などに細かく分類されます
リトマス試験紙はそうした液性の違いを簡易的に把握するための試験紙です。
基本は2色の試験紙がセットになっており、それそれ「酸性に反応する試験紙」と「アルカリ性に反応する試験紙」です。
リトマス試験紙による中性の判断
先ほどの説明の通り、リトマス試験紙は2色の試験紙を用いて液性を判断します。
酸性に反応する試験紙が反応した場合は酸性(この時アルカリ性に反応する試験紙は変色しません)
反対にアルカリ性に反応する試験紙のみが反応した場合は、対象物はアルカリ性であると判断できます。
では「中性」とはどのような状況でしょうか?
実はリトマス試験紙では中性を明確に把握することは難しいと言われています。
理由は酸性・アルカリ性それぞれの試験紙共に反応しない液体の場合、反応しない理由が「液性が中性の為」とは言い切れない点にあります。
例えばシリコンのように試験紙に浸透することの無い物質の場合は、試験紙は酸性・アルカリ性共に反応しません。
しかしそれは、あくまでも試験紙の試薬と対象物が反応しなかっただけで、液性を把握する判断材料とはなりません。
その為、中性を正確に把握するためには「pH試験機」などの別の試験機を用いる必要があります。
液性の表し方
液性の表記はpHと言われる独自の表記によって表記されます。
数値の基本は「7」で、pH7は中性と呼ばれています。
数値が小さくなると液性は酸性に、逆に大きくなるとアルカリ性であることを示しています。
国内では「工業製品の表示規定」として、液性の表記を以下のように定めています。
- pHが3未満 酸性
- pHが3以上6未満 弱酸性
- pHが6以上8以下 中性
- pHが8以上11以下 弱アルカリ性
- pHが11より大きい アルカリ性
(一部温泉などの泉質を表記する場合には中性の区切りが若干異なるものがあります)
リトマス試験紙の色が変わる仕組みは
それではここからは、実際のリトマス試験紙の原理についてご紹介します。
リトマス試験紙に染み込ませてあるのは「リトマスゴケ」という、苔の一種から取り出した特殊な成分です。
このリトマスゴケの成分を抽出し、試験紙に染み込ませます。
その後、アンモニア水を掛けて青く変色させたものが「酸性用リトマス試験紙」となり、塩化水素を掛けたものはピンク色のアルカリ性用リトマス試験紙となります。
では、どうして酸やアルカリに触れることでリトマス試験紙は変色を起こすのでしょうか?
リトマス試験紙の変色の原理
リトマス試験紙に染み込ませてある「リトマスゴケ」の主成分はアゾリトミンと呼ばれる成分です。
この成分はアルカリと反応すると青色の塩を作り出し、酸と反応すると赤く変色する特徴があります。
これは化学反応に依るものですが、これと似た化学反応は私たちの身近にも存在します。
例えば紫キャベツのしぼり汁にレモンを加えると、変色が起きます。この時の化学反応とリトマス試験紙の反応の原理は基本的に同じです。
リトマス試験紙から情報を読み取るには?
さて、リトマス試験紙には対象の液性を把握するためのメモリのようなものはついていません。
その為、対象がどのような液性であるかを判断するためには下の写真のような対照表を利用します。
実際に変色させたリトマス試験紙と基本となる標本を見比べ比較することで、液性を把握することが出来る仕組みです。
しかし、実際のテストでは乾燥の度合いや光の当たり方などの諸条件によって標本と実際の試験紙との見え方に差異が生まれる為、あくまでもリトマス試験紙は対象の液性を大雑把に把握するためのものと言えます。
リトマス試験紙の欠点を補う?pH試験機
さて最後にリトマス試験紙の欠点である正確な液性の把握ができない点を解決する計器をご紹介します。
それが「pH試験機」です。
その名の通り対象物の液性を細かく把握し、数値として確認のできる計器です。
その仕組みや構造についてはまた別の記事で紹介しますが、現在ではリトマス試験紙に代わって様々な分野で活躍している計器です。
今回は私たちになじみの深い「リトマス試験紙」をご紹介しました。今では100円ショップでも購入することが出来ますので、中学校時代を思い出していろいろな物の液性を検査してみると、これまで気が付かなかった新たな発見があるかもしれません。