丸いゲージに課せられた使命!100年後も同じ寸法であるために!?

「リングゲージ」

そんな名前のゲージをご存知でしょうか?製造の現場ではしばしばお目にかかるこのゲージ。実は製造の現場にはなくてはならない、寸法の基準を示していくれるとても大切なゲージです。

そんな、計測の世界では日陰の存在であるリングゲージですが、実は他の計測機器以上に精巧に、精密に作られている事実はあまり知られていません。

今回はそんなリングゲージにスポットを当ててお届けします。

リングゲージとは?

ここで紹介するリングゲージやマスターリングは、それそのものが数値を計測できる機能は持っていませんが、計測をする上ではなくてはならない寸法の基準となるゲージの事です。

ちなみに「リングゲージ」とは広義では「円形状のゲージ」全般をさし、ねじの加工などにも用いられるゲージも「リングゲージ」と呼ばれます。今回はあくまでも寸法の基準となるゲージという狭義においての「リングゲージ」についてご紹介します。

ねじ加工の基準として使用するねじゲージについては、機会を改めてご紹介します。

「リングゲージ」はどうして寸法の基準となりえるのか?

 

さて、ここで質問です!

あなたは製品を加工する中で、内径の寸法を三点式内径マイクロメーターで計測し、ちょうどφ100㎜に仕上げなくてはなりません。計測に必要な寸法の基準はφ100のリングゲージを使用することにしました。

リングゲージで三点式内径マイクロメーターの表示寸法に狂いの無いことを確認したあなたは、三点式内径マイクロメーターの数値を信用し、加工を行いました。

では、あなたはなぜリングゲージの寸法と三点式内径マイクロメーターの指し示す数値を信用することができたのでしょうか?

答えはそのゲージと計測器がに以下のような関係性と、事前の建前が存在しているからです。今度は計測結果をもとに、その数値の根拠をさかのぼって確認していきます。

計測器での計測結果が図面値通りであった→計測器は寸法を正しく示している

加工後に計測した寸法は、図面の規定値に沿った寸法に加工されていました。計測の結果を確認したのは「三点式内径マイクロメーター」です。

ではこの計測器の健全性はどのようにして担保されるのでしょうか?

計測器の健全性→リングゲージを実測した際の数値が正しかった

計測機器の健全性は、リングゲージを実測し確認できた寸法がリングゲージの寸法と一致していたかを基に、寸法的な健全性の根拠となっています。

では、なぜリングゲージの寸法が健全であると言えるのか?

リングゲージの健全性は定期的な校正と、それに伴う証明書をもって健全性を担保する

リングゲージの寸法と計測器の寸法が等しく計測できたとして、可能性としては計測機器・ゲージの両社が同じだけ寸法ずれが起こっていたとの可能性も捨てきれません。

では、リングゲージはいったいどのようにしてその健全性を証明してるのでしょうか?

答えは校正にあります。計測機器に校正は付きもの(定期的に必要な作業)ですが、リングゲージについても定期的な校正は不可欠です。

リングゲージの構成は、その必要とさえれる寸法が変化していないかなどを体系的に確認する作業です。その際、できるだけ客観的な根拠に事づいた校正と、その校正の結果を保証することでリングゲージの健全性を担保しています。

100年狂わないために!

では、リングゲージの示す寸法に変化は起きないのでしょうか?

加工の現場では寸法の基準として用いられるリングゲージは、時間の経過とともに寸法が変化してしまうことは、ゲージとしての役割を果たさないのと同じです。

リングゲージの寸法変化を抑制させる方法と、その目的についてご紹介します

そもそも、金属が経年変化を起こす理由は?

まず始めにリングゲージの狂いの原因となる、金属の経年変化についてお話します。

一般的に金属は経年とともに微量ではありますが、寸法に変化をきたします。この金属の経年変化を「時効効果」と言います。時効効果とは、金属素材を作ったり熱処理を行った段階で金属の中に残留してしまった「オーステナイト」と呼ばれる組織が原因です。

残留オーステナイトは経年と共に、マルテンサイトと呼ばれる組織に徐々に変化していきます。その際、組織構造が変わってしまうために、微細な寸法変化が伴います。

特別な熱処理、「サブゼロ」

では、どのようにしてこの時効効果による寸法変化を抑制するのでしょうか?

答えは「サブゼロ」と呼ばれる熱処理にあります。

熱処理と聞くと「金属を加熱する」とイメージされますが、サブゼロはその反対の超低温状態を作り出す熱処理です。

液体窒素によってマイナス196℃の状態に冷却された金属は、通常数十年かかって起こる時効効果が短時間で起こり、結果として数十年先のその金属の状態を強制的に再現することが可能です。

リングゲージはその加工の最終段階の一歩手前で、このサブゼロ処理を施工し素材の状態を変化させることで、時効効果による寸法の変化を抑制しています。

様々なリングゲージたち

最後に、一般的に流通している様々なリングゲージをいくつかご紹介します。

まずはもっとも一般的なリングゲージから

新潟精機製のリングゲージです。もっとも一般的な「通り」と「止り」がセットになったリングゲージですこのゲージは主に軸に直接はめ込んでその寸法を確認する際などの用いられます。

次はちょっと変わり種のリングゲージです。

こちらはセラミックによって作られたリングゲージです。前述の時効効果をもともと起こさないセラミックでせいさくすることで、100年たっても変化しないゲージを実現しています。

また、セラミックは非通電性のため電気の通っている場所や、静電気を嫌うような製造の現場でも活躍しています。

100年先まで見越したリングゲージの製法

普段何気なく使っているリングゲージですが、その製造工程では100年先まで見越した製法が用いられるなど、非常に手の込んだつくりとなっていることが分かってもらえましたでしょうか?

リングゲージを手にした際には、そのゲージがいつ頃製造されたものなのか、気にしてみると新たな発見に出会えるかもしれません。

 

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シバ

広島県出身の41歳。現在は製造業で管理職の傍ら執筆活動を行っている。実は調理師出身という経歴の持ち主。得意分野は工業系の専門分野からアウトドアクッキングまで幅広く対応可能。

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