「姿勢」を計測すればバイクはより安全に走れる

「姿勢」を計測すればバイクはより安全に走れる

車輪が2つしかついていないバイクは、走っていなければ倒れます。それにも関わらず多くのバイク乗りは、カーブをすり抜けることに快感を覚えます。バイクでカーブを通過するには、車体と一緒に体を傾けなければならず転倒リスクが高まります。

バイクが「危険な乗り物」「乗りこなすには高い操縦スキルが必要」といわれることがあるのは、そのためです。

そこで注目されているのが、ドイツのバイク・自動車部品メーカーのボッシュが開発したIMU(慣性計測装置、イナーシャル・メジャーメント・ユニット)です。これはバイクの姿勢を計測する装置で「転倒しにくいバイク」づくりに欠かせない部品となっています。つまりIMUはバイクの安全装置でもあるのです。

そもそもバイクはなぜ転倒するのか

バイクは、静止状態のときにライダーがハンドルから手を離すと倒れてしまいます。なぜ倒れるのでしょうか。

答えは「タイヤが2つしかついていないから」ではありません。

例えば、タイヤが太ければ2輪でも倒れませんし、車高が異様に高ければ4輪でも静止状態から倒れてしまいます。

バイク 図1

接地面積と力の方向と力の大きさのバランスが崩れたとき倒れる

バイクに限らずモノが転倒するのは、モノと地面の接地面積とモノに加わる力の方向と力の大きさのバランスが崩れたときです。

つまり倒れやすいと考えられているバイクでも、タイヤと地面の接地面積に見合った適度な力が正しい方向から加われば倒れません。

下の写真をみてください。もしこのバイクがこの状態になった瞬間に静止したら倒れます。それは車体と体を傾けているので重力がバイクを倒す方向に働くからです。

しかしこのバイクがこのときのスピードを維持していれば、倒れずにこのカーブを抜け出します。この状態で静止しているときも、この状態でスピードが出ているときも、バイクとライダーにかかる重力は同じなのに、前者では倒れ、後者では倒れないのです。

それは、重力以外の力が働いているからです。

バイク走行

バイクは危険ではない?

「バイクは危険だ」と言う人の多くはバイクに乗っていない人のようです。バイクに乗っている人の多くは「バイクは世間で言われているほど危険ではない」と言います。

なぜなら、サーキットであれば、時速200キロでカーブに突っ込んでも転倒しない人は転ばないからです。それは大袈裟でも、高速道路のカーブを時速100キロで走行してもほとんどの人は転びません。

つまりバイクは、テクニックがある人が操縦すれば、安全で楽しい乗り物なのです。

そしてバイクの操縦テクニックこそ、「バイクのタイヤと地面の接地面積とバイクに加わる力の方向と力の大きさのバランスを取ること」なのです。

では、バイクのテクニックを身につけていない人はバイクに乗れないのでしょうか。また、年を取ることでテクニックが衰えたら、バイクを降りなければならないのでしょうか。

その難題を解決するのが、ボッシュのIMU(慣性計測装置)なのです。

もちろん、IMUを搭載したバイクでも、テクニックがまったくない方が乗れば転倒してしまいます。しかしテクニックが少ない人やテクニックが少し衰えたくらいの人なら、IMUの力を借りることで安全走行が可能になるかもしれません。

IMUとは

IMUは慣性計測装置というだけあって、計測しかしません。「倒れにくいバイク」をつくるには、IMUで計測したデータを使ってバイクの車体を制御する装置も必要になります。

ヨーとは、ピッチとは、ロールとは

これまで「力の方向」と「力の強さ」と表現しましたが、ここからはヨーとロールとピッチという用語を使って解説します。

バイク 図2

進行するバイクを中心にヨー、ロール、ピッチをみると、上のイラストのようになります。
ヨーとは、上下の軸(地面に垂直の棒)を中心に回転する力です。
ロールとは、前後の軸(地面に水平で進行方向と同じ方向の棒)を中心に回転する力です。
ピッチとは、左右の軸(地面に水平で進行方向に垂直の棒)を中心に回転する力です。
走行中のバイクには常にヨー、ロール、ピッチの力が働いていて、しかもそれぞれが常に力の強さと力の方向を変えているのです。

このバイクが左カーブに入ったときに倒れない条件は、こうなります。

  • ブレーキがかかるのでピッチの力は前方向に増加する(ライダーが前につんのめる感じ)
  • ヨーとロールの力はいずれも左方向に増加する(ライダーの体が左に傾く感じ)

では次に、このバイクが左カーブに入って「倒れる」条件を考えてみましょう。

例えば、ブレーキをかけ忘れてピッチの力が前方に増えなければ倒れます。
またヨーが右方向に増えてしまうと、バイクは左カーブを曲がり切れず道路を飛び出して転倒します。

つまりバイクがカーブでも倒れないためには、ヨー、ロール、ピッチの力の大きさと力の方向を制御する必要があります。

IMU1秒間に100回も「いい状態ですよ」「傾きすぎですね」と注意してくれる

ボッシュのIMUは手の平にすっぽり収まり、重量はわずか40グラムなのですが、ヨーとロールとピッチの3軸の力の強さ(加速)と、ヨーとロールの2軸の力の方向(角度)を計測します。そのためボッシュのIMUは「5軸センサー」と呼ばれることもあります。

IMUの計測回数は、1秒間に100回にもなります。つまりIMUは1秒間に100回もバイクの姿勢や状態を検知するのです。

擬人化して表現すると、IMUは1秒間に100回も「バイクはいまよい状態で走っています」「あ、少し前方向に傾きすぎています」「これ以上左からの力が加わると倒れます」と注意してくれるのです。

そしてIMUの注意にしたがってバイクを制御するのが、ABSやトラクションコントロールやウイリー制御装置です。

ABSなどと連動して安定させる

ABSは急ブレーキをかけてタイヤがロックしそうになったときに、ブレーキの効きを弱めてロックを自動で解除する装置です。

トラクションコントロールはタイヤが滑り始めたらタイヤの回る強さを自動で弱めて空転を防ぐ装置です。

ウイリー制御装置は自動でウイリーさせない機器です。ウイリーとは、前輪を持ち上げて後輪だけで走る走行法なのですが、前輪を意図的に持ち上げなくても、エンジンのパワーが強すぎると前輪が持ち上がってしまうことがあります。したがって後ろのタイヤに力が加わりすぎてウイリーしそうになったらウイリー制御装置が作動してウイリーを止めます。

この3つの装置(ABS、トラクションコントロール、ウイリー制御装置)は、IMUから得た「注意」(バイクの姿勢や状態の情報)を受けて作動し、ヨー、ロール、ピッチを微調整してバイクを転倒から救うのです。

ボッシュという会社

ボッシュはドイツの自動車部品メーカーです。バイク部品も多数手がけています。
ボッシュはIMUだけでなくABSもつくっています。

ボッシュのIMUは世界中のバイクメーカーが使っていますが、ヤマハは自社でIMUを開発しました。ボッシュのIMUは5軸を計測しましたが、ヤマハのIMUは6軸すべて計測します。

まとめ~小さいから可能になった

IMUがすごいのは、小型で軽量であることです。これだけ小さいと、バイクにも簡単に搭載できます。バイクは自動車に比べて車体が小さいので、大きな装置ではかえってバランスを崩してしまいます。それでボッシュも、IMUの小ささにはとてもこだわりました。

ただIMUには注意も必要です。IMUによってバイクが「倒れにくくなった」ということは、これまでより速いスピードでカーブを走り抜けることができる、ということです。しかしスピードを出しすぎると、IMUでもコントロールできなくなります。

IMUの能力を超えた走りをすれば確実に転倒するので、その点はすべてのライダーが肝に銘じておく必要があるでしょう。

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ライター紹介
ライタープロフィール
アサオカミツヒサ

フリーライター、ライティング事務所office Howardsend代表。北海道大学法学部を卒業後、鉄鋼メーカー、マスコミ、病院広報などを経て2017年独立。取材した分野は、地方政治、地方経済、過疎化、ワーキングプアなど。現在の執筆領域はIoT、AI、産業一般、人事制度、金融、最新抗がん剤、生活習慣病治療など。趣味はクルマとバイクと登山。北海道釧路市在住。

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