フォトリソグラフィについて

ICチップ

私たちの生活は非常に多種多様な電化製品にかこまれて成り立っています。電化製品なしに生活することはもはや不可能と言える勢いです。このような電化製品には必ず「電子回路素子」が使われています。非常に小さな部品であり、またその原理については非常にマニアックな内容になるため、電子回路をどうやって作製するのか、一般的にはあまり話題になることも少ないと思います。フォトリソグラフィについて知ることは、まさに電子回路素子をどうやって作っているのかを知ることにつながります。ここでご紹介できる内容は概要といわれるものに過ぎませんが、フォトリソグラフィの工程概要と応用分野、必要な装置や価格相場についてご紹介したいと思います。

フォトリソグラフィとは

フォトリソグラフィという技術はどのような技術なのか。まず語源から始まり、その工程の概要、そして私たちの身の回りでどのように応用されているのかをご紹介します。

    • リソグラフィとは

リソグラフィはリトグラフともいい、もともとは石版刷りのことです。石版刷りは主に美術の分野で版画に用いられています。描いた絵をほぼそのまま紙に擦り取れるのが特徴です。

リトグラフでは、版板に石版石と呼ばれる石灰岩、もしくはアルミや亜鉛といった金属板を用い、そこへ油分が多い描画材(リトクレヨン、解墨など)で描画します。描画された版板の表面を化学的処理により、油性インクを引きつける部分(親油部:描画部)とインクを弾く部分(親水部:非描画部)に分離します。このように化学的処理を施された版面にインクを盛り、その上に紙を載せて、プレス機で圧力をかけて転写して版画を作成します。

石版画

    • フォトリソグラフィ工程の概要

元々フォトリソグラフィは、半導体基板上に電子回路の非常に微細な(数10nm〜数100μmオーダーの)パターンを形成させる技術です。基板上に塗布された感光材料を光(フォトphoto)で化学反応を起こさせ、マスクのパターンを転写するので「フォト・リソグラフィ」と名付けられました。半導体のシリコン基板におけるフォトリソグラフィの工程概要は以下のようになります。

まずシリコン基板上に金属酸化物の薄膜を形成します。その上に「フォトレジスト」と呼ばれる感光性の有機材料を塗布し、電子回路のパターンが描かれている「マスク」をかぶせて、基板上へ紫外線(もしくは電子線・X線の場合もあり、紫外線よりも精細なパターン形成ができます)を照射することによりフォトレジストが感光します。フォトレジストを現像して感光した部分が除去される場合は「ポジ型」、感光した部分が残る場合は「ネガ型」になります。

マスクと露光の様子

次にフォトレジストを保護膜として、フォトレジストのない部分の金属酸化膜をエッチング(食刻)します。最後にフォトレジストを除去すると、シリコン基板上に金属酸化膜層による電子回路のパターンが形成されていることになります。

    • フォトリソグラフィ技術の応用分野

フォトリソグラフィの技術は、IC(電子回路の素子・集積回路)やLSI(高密度集積回路)といった電子・集積回路に欠かせないものとなっています。半導体部品は、パソコンやスマートフォン、タブレットPC、薄型テレビ、自動車など、私たちの生活を取り巻く様々なエレクトロニクス機器に必要不可欠なものです。

また電子・集積回路を小さく仕上げることができると、電気製品の小型化・省エネルギー化に結びつくため、より精細なパターンを形成するための技術革新が世界中でこぞって行われている分野でもあります。初期の頃は光源として超高圧水銀ランプ(波長:436nm-g線、365nm-i線)が使われていましたが、より短波長化・高出力化するために光源はレーザーになり、波長もエキシマーレーザーのKrF(248nm)からArF(193nm)へと移行してきました。近年ではさらに極端紫外線レーザー(EUV)という波長13.5nmの光源にまで開発の手が伸びています。

もともとは半導体の電子回路で発展したフォトリソグラフィ技術ですが、近年ではMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、物性研究、バイオテクノロジーなど、様々な分野における微細加工に応用されています。

フォトリソグラフィの工程と必要な装置

フォトリソグラフィにおける主な4つの工程「フォトレジストの塗布・露光・現像・エッチング」で使用する装置と価格相場などについてご紹介します。

    1. フォトレジスト塗布

通常フォトレジスト(感光性有機材料)は、半導体基板上にスピンコーターで塗布します。スピンコーターは、平坦平滑な板を高速回転させ、その上に膜原料液を滴下し、遠心力により薄膜を作製する装置で、低価格なものであれば価格帯は50〜数100万円程度からあるようです。

成膜後は膜厚を測定する必要があります。膜厚測定には膜厚計、段差計などが使われます。膜厚の測定範囲は数nm〜数100μmを測定できるものであれば、対応できます。接触式段差計(プロファイラー)の価格は500〜1000万円程度です。代わりに、もしラボ内にレーザー顕微鏡、SEMなどがある場合には代用することができます。

    1. 露光

露光機には、基板上へのパターンの投影方法の違いから、「ステッパー」または「アライナー」という種類があります。

光源から発せられた光が縮小投影レンズにより基板上をステップしながら投影露光して、マスクのパターンを基板上のレジストに焼き付ける場合には、分割露光をしているということで「ステッパー」と呼ばれます。

またマスク上のパターンを一括で描写してウエハー上に投影させる装置をアライナー(一括露光装置)ということから、露光機は「アライナー」もしくは「マスクアライナー」とも呼ばれています。

露光機の価格相場としては通常、数千万〜数億円単位です。しかし比較的低価格な露光機を扱うメーカーもあり、ネオアーク(株)「マスクレス露光装置」比較的安価500万円〜販売されていて、1μm〜5μmのパターン形成が可能だそうです。

マスクレス露光装置

写真:ネオアーク(株)より「マスクレス露光装置PALET

またアサヒ・テクノソリューションズ(株)でもコンパクトで低価格(500万円〜1千万円)のステッパーの取り扱いがあるようです。

    1. 現像

露光後には、基板を現像液を浸すことで、フォトレジストの感光部分を除去(ポジ型)、または未感光部分を除去(ネガ型)します。通常の化学系ラボ設備があれば、薬剤とビーカーなどの小道具、ホットプレートやオーブンなどを使って、現像→リンス(すすぎ)→振り切り(乾燥)の作業をすることはできますが、これを一括に自動でやってくれる装置が、現像装置(ディベロッパー)です。価格帯は100〜500万円程度です。

現像装置

写真: (株)ミカサ「フォトリソグラフィ.com」より「フォトリソ用小型現像装置 AD-1200
    1. エッチング

現像終了後、半導体基板上の金属酸化膜をエッチング(食刻)する場合に、やり方は2通りあります。ひとつは酸などの液体薬剤に浸けてエッチング処理する方法で、ウエットエッチングといわれます。これはラボ設備があれば手作業でもできます。もうひとつは、プラズマを利用したガスによって加工する方法でドライエッチングと呼ばれています。

露光装置(ステッパー)

写真: SPPテクノロジーズ(株)より「化合物/酸化膜エッチング装置

ウエットエッチングは手作業でもできると述べましたが、「ウエットエッチング→リンス(すすぎ)→振り切り」までの処理を一括でやってくれる装置もあります。数多くの試料を取り扱う場合にはこのような装置があるとよいでしょう。

エッチング装置

写真: (株)ミカサ「フォトリソグラフィ.com」より「フォトリソ用小型エッチング装置 ED-1200

これからのフォトリソグラフィ研究開発

半導体の電子回路を作成する技術としてのフォトリソグラフィをご紹介しましたが、最近では様々な分野への応用も試みられています。フォトリソグラフィ技術をつかった研究開発を新規で行うには、数億円ほどの非常に多額の設備投資が必要と思われます。しかし一方では、基礎研究系の研究室では、フォトリソグラフィ装置を有効活用できずに眠らせているところもあると聞きます。これほど高額の装置を眠らせておくのはもったいない!研究開発をしたいけれども資金がない人と装置を涙ながらに眠らせてしまっている人たちがEkuippと出会い、いい形で結びつけられると、新たな技術開発にも繋がるのではないでしょうか。

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ライター紹介
ライタープロフィール
藤井暢子

小規模農業従事者、野菜ソムリエプロ、野菜栽培士。京都生まれ。大阪市立大学理学部物理学科卒業、京都教育大学大学院修了、大阪大学大学院理学研究科物理(単位取得後卒業)、2004年博士(理学)。大阪大学産業科学研究所勤務を経て、化学系の研究開発会社に8年間勤務後、2012年より農業者へ転身。実父とともに、自然農、自然栽培、無肥料、自家採種をキーワードに京都郊外で野菜を作り、地元カフェや地方家庭などへ提供している。物理と化学の研究経験をもとに、畑の研究を新しく展開するべく日々研鑽中。生物物理の研究者の夫、5歳の一人息子と同居。

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