粒度分布計について

粒子のイメージ

ナノメートル(1億分の1m)からミリメートル(100分の1m)の粉体粒子径の分布を、粉のまま(乾式)あるいは液体中に分散させて(湿式)測定できるのが粒度分布計です。ベックマン・コールター社の粒度分布学術情報によると、主な粒度分布測定原理には、ふるい法、自然沈降法、遠心沈降法、画像解析法、コールター法、動的光散乱法、レーザー回折・散乱法、そして超遠心沈降法などがあります。各々の装置で得意な測定範囲と分解能がありますので、測定する試料特性に合う装置を使用します。このコラムでは、各々の測定原理と装置紹介をしたいと思います。

ふるい法・自然沈降法、遠心沈降法

ふるい法

ふるい網で粒度を測定する方法です。日本工業規格JISの8815に「ふるい分け試験方法通則」として、試験方法が記載されています。試料をふるい網にいれてふるい、ふるいの上に残ったものと下に落ちたものの重量を測定し、重量分布を求めます。そして「どのような大きさ(粒子径)の粒子が、どのような割合(全体を100%とする相対粒子量)で含まれているか」を知ることができます。
ふるい法による粒度分布の例

ふるい法による粒度分布の例  出典:https://www.an.shimadzu.co.jp/powder/lecture/practice/p01/lesson02.htm

ふるい網のサイズは20μm〜125mmと広範囲です。測定できる粉体は、無機物・有機物を問わず医薬品、農薬、染顔料、飼料、添加剤、充てん剤、セラミック、セメント、樹脂、金属粉末などのあらゆる粉粒体に適用が可能です。

重力、遠心沈降式

「沈降法」とは粒度分析法の一種で,重力または遠心力による粒子の沈降速度から粒子径を測定する方法です。自然沈降法は重力沈降法とも言います。一般的に、重力沈降法は2μm以上の粗粒な粒子に、遠心沈降法は2μmより微細な粒子に適用します。日本工業規格JISにより分析方法が規格化されており、前者は液相重力沈降法 (JIS Z8820-1:2002)に、後者は液相遠心沈降法に試験方法が記載されています。

微粒子を水または不溶溶媒中に懸濁させ、重力場にそのまま静置するか遠心場に粒子懸濁液を置くと、大きな粒子ほど速い速度で沈降していきます。その様子を粒子懸濁液に照射したレーザー光の透過光強度によって検出します。粒子サイズは重力沈降の場合、Stokesの式から得られます。重力による沈降の場合、ストークス則の上限は62.5µm程度、下限は1μm程度であると言われています。

すでに2004年に販売終了していますが、堀場製作所の「自然/遠心沈降式粒度分布測定装置CAPA-700」という装置がありました。

堀場製作所「自然/遠心沈降式粒度分布測定装置CAPA-700」

堀場製作所「自然/遠心沈降式粒度分布測定装置CAPA-700」  出典:http://www.horiba.com/uploads/media/R004-05-023_01.pdf

また島津サイエンス東日本(株)からは「X線透過式沈降法粒度分布測定装置SediGraph Ⅲ 5120」という装置が発売されています。大変正確で再現性が高いことが売りで、測定範囲は0.1μm〜300μm、測定時間も最短3分と非常に高速な測定ができます。

さらに最近では新しい遠心沈降法として「超遠心分析法」というのがあり、ベックマン・コールター社より「プロテオームラボ XL A / XL I」という装置が発売されています。測定範囲は0.5nm〜100nmという小さな粒子を測定でき、同時に粒子の形状も解析できます。シングルナノ粒子の粒度分布や、凝集などの粒子の状態などを、他の測定原理では不可能な高分解能で分析できるところが売りの装置です。

画像解析法

粒度分布測定法は、乾式・湿式のいずれも粒子の形状が球であることを仮定しているため、球からかけ離れた形状をしていたり、粒子どうしが凝集してしまうと正しい粒径を求めることが難しくなります。そのような場合には、この画像解析法による粒度分布測定を用いると、粉体の実際の形状と粒径を正確に求めることができます。基本的には光学顕微鏡や電子顕微鏡などで観察して、得られた画像から粒子の形状や粒径分布を測定します。最近ではデジタル解析技術により、数多くの粒子の画像情報を処理することができるようになり、円形度やアスペクト比などで表される形状パラメータなどの統計処理も同時に行えるようになっています。

「画像解析式粒度分布測定装置」には、Malvern Panalytical社より「モロフォロギシリーズ(測定範囲:0.5μm〜1.3mm)」や「ナノサイトシリーズ」、レッチェより「カムサイザーシリーズ(測定範囲:0.8μm〜30mm)」、島津サイエンス東日本(株)より「フロー式画像解析粒子径・形状測定装置 Particle Insight(測定範囲:1~150㎛、3~300㎛、10~800㎛)」、などが発売されています。

また(株)日本レーザーからは「動的画像解析式」による粒度分布測定装置「PDIA式 リアルタイム画像解析 VisiSize SF」が発売されており、粒子や液滴をバックライト照明でデジタル撮影をして、その画像からは粒子の「粒子や液滴のサイズ」「移動速度」および「粒度分布と速度分布」をリアルタイムで計測できます。

動的画像解析法における粒子画像取得の様子

動的画像解析法における粒子画像取得の様子  出典:http://particle.japanlaser.co.jp/?page_id=459

コールター法

この方法は「電気的検知帯法」とか「細孔電気抵抗法」とも言われ、下図にあるように粒子を分散した電解液中に試験管を入れます。この際、試験管の下部には小さな穴(細孔:下図の赤丸拡大図)が空いています。試験管の上部を一定の力で吸引(バキューム)すると、試験管中に電解液と共に粒子が流入します。そして試験管上部と電解液中の2点間に電極を置き、電圧を印加します。この時、細孔に流れている電流は粒子の存在にかかわらず一定であるため、電圧変化量が電気抵抗の変化量に比例します。そこで電圧変化量(パルス波高)から粒子の体積を計測し、この体積から粒子の粒径を求めて、粒子系分布を得ることができます。さらに電圧変化量からは、粒子が細孔を通過した数がカウントできるため、粒子濃度も測定することができます。国際規格ISO 13319「Determination of particle size distributions -Electrical sensing zone method」には、コールター原理をによる粒度分布測定について記載されています。

コールター法で使用する装置の模式図

コールター法で使用する装置の略図  出典:https://ls.beckmancoulter.co.jp/column/particle/toner/02

この方法による装置は、ベックマン・コールター社の「Multisizer 3」(2018年販売終了)があります。測定範囲は0.4~1,200μmですが、この装置は最高分解能が非常に高く10nmとなっているところが売りです。

また島津サイエンス東日本にもこの方法による装置の扱いがあり、「高精度粒度分布測定装置 Elzone Ⅱ 5390」というのもあります。測定範囲は0.4〜240μmで、測定時間が30秒程度と高速であることが売りです。

動的光散乱法

この方法では、nmオーダーの粒子径を測定することに向いています。液体中に分散した微粒子は、通常「ブラウン運動」をしています。牛乳の固形分が10%ほどで、残りの90%ほどは水分です。牛乳の10%ほどの固形分粒子がブラウン運動をして入射光が散乱されるために、牛乳は白く見えるのです。白色光が散乱されると白く見える理由は、雲や雪が白く見える理由と同じで、可視光の様々な波長(色)の光が散乱されるので、白く見えるのです。

このように液中における微粒子はブラウン運動をすることが知られていますが、ブラウン運動する粒子へレーザー光を照射してその散乱光を観察し、数学的な解析をへて、粒度分布を求めることができます。ここで散乱光強度の時間的な揺らぎは、粒子径が小さいとゆらぎの時間間隔が遅くなり、大きいと速くなります。

粒子径と散乱強度の揺らぎ

散乱光の「揺らぎ」をデータとして観測して、あとは複雑な数学的解析をすると微粒子のブラウン運動の速度(拡散係数)が得られます。するとアインシュタイン・ストークスの式より、ブラウン運動する粒子を球であると仮定すると、粒子径を求めることができます。

代表的な動的光散乱法による粒度分布計は、BECKMAN COULTER社の、Delsa Maxシリーズや、Malvern Panalytical社のゼータサーザーシリーズなどがあります。

動的光散乱による粒度分布計「Zetasizer Ultra」

動的光散乱による粒度分布計「Zetasizer Ultra」  出典:https://www.malvernpanalytical.com/jp/products/product-range/zetasizer-range/zetasizer-ultra

他にも大塚電子、堀場製作所、島津製作所など比較的多くのメーカーが動的光散乱法による粒度分布計を取り扱っています。価格はおおよそ500万円〜1千万円程度です。

レーザー回折・散乱法

この方法による粒度分布測定装置がもっともポピュラーであると言われています。この原理での測定範囲は、0.1μm〜1mm程度です。ナノ粒子などの小さな粒子の測定には向いていませんが、広い範囲の粒度分布を測定できるところが良いとされています。

レーザー光を微粒子に照射すると、粒子の大きさとレーザー光の波長によって回折と散乱のどちらが支配的になるかが変わってきます。粒子の大きさがレーザー光の波長より十分に大きい場合(粒径が数μm以上)には、回折が支配的になります。他方、粒子の大きさがレーザー光の波長(750nm)と同程度かそれ以下の場合には、散乱が支配的になります。その様子を表したのが以下の図です。回折が支配的な場合には、光は進行方向にほとんど進み(図の上)、散乱が支配的な場合には、光は粒子の周りにまゆ状に散乱されます(図の下)。図の真ん中にあるのは、粒子が1μm程度の大きさの場合で、回折光と散乱光が同程度に混ざった状況です。

3つの粒子径における回折・散乱光の強度分布

3つの粒子径における回折・散乱光の強度分布  出典:https://www.an.shimadzu.co.jp/powder/lecture/middle/m01.htm

回折光についての理論はFraunhofer(フランホーファ)回折理論、散乱光についての理論はMie(ミー)散乱理論がありますので、各々の理論を用いて回折・散乱光を解析することにより、粒子径を求めることができます。

この原理による粒度分布計は多くのメーカーが扱っていて、島津製作所の「レーザ回折式粒度分布測定装置 SALDシリーズ」、ベックマンコールター社の「LS 13 320シリーズ」、マイクロトラックベル社の「マイクロトラック粒子径分布測定装置MT3000IIシリーズ」、マルバーン社、堀場製作所の「LA-960V2シリーズ」などがあります。

その他の測定方法

ナノトラッキング法

堀場製作所の「ナノ粒子径分布・濃度測定装置 ViewSizer™ 3000」が採用している「ナノトラッキング法」では、粒子にレーザーを照射し、その散乱光から各粒子のブラウン運動を追跡します。その拡散速度から、Stokes-Einsteinの式に基づき粒子の径と個数を計算することができます。測定範囲は10nm~15μmです。濃度が低く、レーザー回折・散乱や動的光散乱法で検出しにくいような試料でも、簡単に測定できるのが売りです。

ナノトラッキング法のイメージ図

空気透過法

島津サイエンス東日本の全自動乾式粒子径測定装置「Subsieve AutoSizer」では、空気透過法を利用して粒子径を測定しています。この方法では、粉体が充填された層に空気を通過させ、その時の圧力降下と流速から粉体の比表面積(単位重量の粉体の表面積)を求めることができます。そしてここから平均粒子径を決定できるというわけです。測定範囲は0.2〜75μmです。粒度分布測定の手法としてはやや古い時代の手法です。

超音波減衰式

Sympatec社の「超音波減衰式 粒度分布測定装置 OPUS」は、光学的な手法を用いないため、一般的な光学的手法では測定が困難な高濃度・高粘度の試料を、希釈することなく測定できる優れものです。
超音波減衰式のイメージ図

超音波減衰式のイメージ図  出典:https://www.japanlaser.co.jp/Products/tabid/68/pdid/G00000588/Default.aspx

粒度分布計には沢山の種類がある

粒度分布計の主な粒度分布測定原理である「ふるい法」「自然沈降法、遠心沈降法」「画像解析法」「コールター法」「動的光散乱法」「レーザー回折・散乱法」の装置についてご紹介しました。またこれらの測定原理以外の原理を使った粒度分布装置もありますので、それについても少しご紹介しましたが、まだ他にも様々な原理を使った粒度分布計というのが世の中には発売されています。

粉体の粒度分布を測定する際には、粉体が適切な方法で分散されていないと正しい測定ができません。例えば、粉同士が凝集してしまうと正しい測定ができないので、粉が一様に分散できる溶媒を選んで分散させなければいけません。分散剤を加える場合や、超音波ホモジナイザーなどで物理的に分散させる場合もあります。また分散液の固形分濃度についても、薄すぎても濃すぎても適切なデータが得られません。実験的に適正な濃度を探さなくてはいけません。

加えて粒度分布計には非常に多くの種類がありますので、分析する試料の特性に合わせた機種選定は骨が折れるかもしれませんが、原理が新しい装置ほど、試料の調整に苦労せず、測定方法が簡単で迅速にデータ取得できるように作られている傾向があります。そして装置の価格は1千万円前後と非常に高価ですので、中古品の入手ができると測定できるチャンスが増えるのではないでしょうか。

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ライター紹介
ライタープロフィール
藤井暢子

小規模農業従事者、野菜ソムリエプロ、野菜栽培士。京都生まれ。大阪市立大学理学部物理学科卒業、京都教育大学大学院修了、大阪大学大学院理学研究科物理(単位取得後卒業)、2004年博士(理学)。大阪大学産業科学研究所勤務を経て、化学系の研究開発会社に8年間勤務後、2012年より農業者へ転身。実父とともに、自然農、自然栽培、無肥料、自家採種をキーワードに京都郊外で野菜を作り、地元カフェや地方家庭などへ提供している。物理と化学の研究経験をもとに、畑の研究を新しく展開するべく日々研鑽中。生物物理の研究者の夫、5歳の一人息子と同居。

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