光学顕微鏡について

光学顕微鏡とは、可視光及び近傍の波長領域の光を利用した顕微鏡です。医学・生物学分野では各種細胞や血液などの観察・検査に使われたり、工業分野では各種材料の分析や検査に使われるなど、非常に幅広い分野で微小試料の観察に使われています。

光学顕微鏡の種類には様々なものがありますが、ここでは「構造」「用途」そして「観察法」によって分類してご紹介します。

また光学顕微鏡の購入をお考えの方は、「どのような画像が得られるのか?」とか「どの顕微鏡を使えば、自分の目的とする観察ができるのか?」そして「お値段は?」といったことを知りたいのではないでしょうか。その点に関してもご紹介したいと思います。

構造による分類

光学顕微鏡の構造で分類すると、「正立型」、「倒立型」と「実体」顕微鏡に分けられます。それぞれの特徴についてご紹介します。

正立型顕微鏡

対物レンズが下を向いていて、資料を上から観察します。照明は試料の下から当てるので、スライドガラスなどの透明で平板状の試料が向いています。このタイプの顕微鏡には、「生物顕微鏡」、「検査顕微鏡」、「偏光顕微鏡」、「位相差顕微鏡」、「分散顕微鏡」などがあります。

倒立型顕微鏡

対物レンズが上を向いていて、試料を下から観察します。照明は試料の上から当てるので、ある程度厚みのある試料(例えばシャーレなどの培養容器に入っているサンプル)でも観察できます。

OLYMPUS「正立型顕微鏡BX51M」と「倒立型顕微鏡GX51」

OLYMPUSの顕微鏡。左は正立型BX51M、右は倒立型GX51。(引用元)

左の写真はOLYMPUSの顕微鏡、正立型顕微鏡BX51Mです。
医療の検査・研究用、工業の検査用に使われる高級システム顕微鏡です。国内市場において70%を越えるシェア(全世界でも60%超)を持つ業界のスタンダード機で、価格は180万〜290万円の範囲です。

右の写真は同社の倒立型顕微鏡GX51です。
明視野、暗視野、微分干渉、簡易偏光観察に対応した倒立金属顕微鏡です。現在(2018年12月)は生産終了していますが、発売当初は160万円程度で販売されていました。

実体顕微鏡

昆虫などの小さな生き物の観察など、サンプルを加工せずにそのまま観察する場合に使用します。接眼部分が双眼鏡のようになっているため、試料を立体的に観察できます。対物レンズとステージまでの距離が長いため、小さな生き物を顕微鏡で観察しながら解剖するというような作業も可能です。
島津理化「生徒用実体顕微鏡 VCT-VBL1e/2e」

島津理化の「生徒用実体顕微鏡 VCT-VBL1e/2e」 引用元

写真は、島津理化の「生徒用実体顕微鏡 VCT-VBL1e/2e」です。倍率は20・40倍でLED照明付です。価格は3〜5万円ほどです。実体顕微鏡は、安価なものは数万円からあり、様々な機能がついているものでは数10万円になります。

用途による分類

光学顕微鏡を構造で分類すると、透過光で観察する「生物顕微鏡」と反射光で観察する「金属顕微鏡」に分けられます。それぞれの特徴についてご紹介します。

生物顕微鏡

この種類の顕微鏡の倍率は1000〜1500倍と言われています。生体組織を薄くスライス状にした試料、細胞、細菌など、光を透過する物体の観察に用います。生物顕微鏡では試料の下に照明があり、試料を透過した光で観察をします。このように透過光によって標本を観察するため、「透過型顕微鏡」とも呼ばれるそうです。

「生物顕微鏡」で検索すると、様々な機能を取り揃えたものが出て来ますが、5万円〜数10万円の価格帯で、多くのメーカーに取り扱いがあります。

金属顕微鏡

この種類の顕微鏡の倍率は1500〜2250倍と言われています。金属や半導体の表面など、光を透過しない物体の観察に用います。金属顕微鏡では、対物レンズの上に照明があり、試料が反射した光を観察します。このように反射(落射)照明によって試料を観察するので、「落射型顕微鏡」、または「反射型顕微鏡」とも呼ばれるそうです。

このタイプの顕微鏡は生物顕微鏡ほど種類はありませんが、不透明な試料であればなんでも観察できるといった感じで、多目的用途に使える顕微鏡です。また中倍率〜高倍率の観察が得意です。価格は比較的高価で100〜300万円ほどと言われています。

観察法による分類

光学顕微鏡では、可視光で照射された試料を拡大して観察することができますが、単に可視光を照射するだけでなく、光が持つ様々な性質(屈折、回折、干渉、偏光、蛍光など)を利用して試料の微細構造を観察する顕微鏡があります。

そこで光学顕微鏡を観察法で分類して、例えば「明視野観察」ができる「明視野顕微鏡」や、「偏光観察」ができる「偏光顕微鏡」などがあります。以下に典型的な6つの観察法と、その特徴についてご紹介します。

明視野観察法

明視野観察法は、光学顕微鏡における最も一般的な観察方法です。生物顕微鏡では透過率の違い(色の違い)により試料の微細構造を観察できます。他方、金属顕微鏡では反射率の違いにより、試料の形態観察をします。染色試料を観察する場合に多く使われています。典型的な観察画像例を以下にあげます。

明視野観察法による写真

明視野観察法による写真(日本顕微鏡工業会HP「顕微鏡の基礎」より) 引用元

暗視野観察法

暗視野観察法では、対物レンズに直接照明用の光が入らないように、試料の斜めなどから照射して、試料が散乱または回折した光を観察します。この観察法では、試料を薄くしたり染色したりする必要がなく、さらに顕微鏡の解像限界(約200nm)よりはるかに小さい数nmの微粒子、直径約20nmの細菌の鞭毛の動きや、微細な段差を検出できるのが特徴です。暗視野観察は光学顕微鏡に「暗視野コンデンサ」を取り付けるだけで行えます。コンデンサには安価な「乾式」、より明るい照明ができる「油浸」があります。コンデンサは安いもので1万円程度、高くなると3〜4万円になります。

視野観察法による写真

視野観察法による写真(日本顕微鏡工業会HP「顕微鏡の基礎」より) 引用元

位相差観察法

位相差顕微鏡は、光学顕微鏡に位相差コンデンサーと位相差対物レンズをつけた構造になっています。位相差観察法は、光の回折と干渉を利用しています。光の回折は、試料の屈折率が異なる境界で起きます。例えば微生物と溶液との境界部分や微生物の内部構造では屈折率が異なるために、光が回折されます。その回折光と直接光の干渉により、明暗のコントラストがついた像ができるのです。この方法では、無染色試料をそのままの状態で(非侵襲的に)コントラストを上げて観察できるのが特徴で、主に細胞の観察で使われています。また位相差観察像には、像の周囲に「ハロー」と呼ばれる明るい縁取りが現れることもよく知られています。位相差顕微鏡の価格は20万〜50万円ほどです。

微分干渉観察法

微分干渉顕微鏡は、光学顕微鏡に2枚の偏光板と2個のノマルスキープリズムをつけた構造になっています。下図に示したように、得られる像は位相差観察法によるものと似ていますが、異なる点は、ハローが起きないことと、微分干渉の方が位相差よりも厚い試料を観察できる点です。細胞の観察だけでなく、ICウェハ表面・磁気ヘッドの研磨面の外観検査や結晶成長過程の観察などにも使われています。価格には大きな幅があり、数10万円〜数100万円します。
珪藻の位相差像(左)と微分干渉像(右)

珪藻の位相差像(左)と微分干渉像(右) 引用元

写真は、珪藻の位相差像(左)と微分干渉像(右)です。位相差像には像の周囲にハローが生じていて、微分干渉像にはない様子を観ることができます。

偏光観察法

偏光観察法では、2枚の偏光板が配置され、試料に偏光した光を照射して観察します。主に岩石や鉱物の観察に利用されており、結晶構造を決定することができます。その他には、偏光特性を持つ高分子材料や新素材、液晶や配向膜の欠陥検査、細胞や石綿(アスベスト)なども観察できます。価格は10万円代から簡易型がありますが、50万円前後〜が一般的です。

蛍光観察法

蛍光観察法では、試料に特定の波長の励起光を照射し、その結果試料から発せられる蛍光・燐光を観察できます。構造的には「透過型」と「落射型」がありますが、励起光の強度が上げられたり、位相差観察と組み合わせたりできたり、厚みのある試料も測定できるという利点から
現在では落射型が中心となっています。生物や医学の研究用として用いられる場合が多いですが、工業的には半導体製造工程中の残留レジストの検出。ゴミの検出、同定に使われていることもあるようです。価格は、ポータブルタイプが100万円弱でありますが、大抵のものが100万円代で高価になっています。

顕微鏡は用途、構造、観察法で種類や値段が豊富

光学顕微鏡を「構造」「用途」と「観察法」に分類して、各々の顕微鏡の特徴や観察できる像の特徴、価格などについてご紹介しました。生物顕微鏡で光が透過できる試料を数10倍の倍率で見たり、実体顕微鏡で数10倍の倍率で観察する場合には安価なものがあり、数万円から入手できますが、もう少し倍率が上がって数100倍〜1000倍の倍率で観察する場合は数10万円ほどになります。さらに高倍率でも観察できる光学顕微鏡システムや、コンデンサーやプリズム、偏光板などを利用して観察に工夫が必要な試料の場合には非常に高価で50万円程度から100万円代になります。

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ライター紹介
ライタープロフィール
藤井暢子

小規模農業従事者、野菜ソムリエプロ、野菜栽培士。京都生まれ。大阪市立大学理学部物理学科卒業、京都教育大学大学院修了、大阪大学大学院理学研究科物理(単位取得後卒業)、2004年博士(理学)。大阪大学産業科学研究所勤務を経て、化学系の研究開発会社に8年間勤務後、2012年より農業者へ転身。実父とともに、自然農、自然栽培、無肥料、自家採種をキーワードに京都郊外で野菜を作り、地元カフェや地方家庭などへ提供している。物理と化学の研究経験をもとに、畑の研究を新しく展開するべく日々研鑽中。生物物理の研究者の夫、5歳の一人息子と同居。

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