現代の計測器において利用されている様々な記述を、一つ一つ詳しくご紹介していくシリーズ記事。
現代の計測機器の多くは旧来のアナログ式の計測機器に比べデジタル方式を採用したことで飛躍的にその精度が高くなっています。
しかし実はそこに応用されている技術は計測機器の種類や用途が変わっても、同じ技術が応用されていることもしばしばです。
このシリーズではそうした様々な計測機器に応用される、基本的な技術や仕組みについてできるだけ分かり易く、できるだけ詳しくご紹介していきます。
第三回目は身近な存在であるねじについて、その定義や理論を含めてご紹介します。
このページの目次
ねじとは?
第一回と第二回では身近な存在ではあるものの、目で見ることができないためにその存在を認識しにくい二つの原理をご紹介しました。
今回はちょっと志向を変えて、古くから計測機器に多く使用されている構造の一つ「ねじ」についてご紹介します。
ねじとは表面に一定(一様)ならせん状の突起を持った円筒状や円錐状の形状を有したものの総称です。
「一様」という表現が入るため、螺旋形状の途中でその形状が変化してしまうものは、厳密にはねじとは呼べません。
ねじの分類
ねじは螺旋形状の構成とその突起部分が対象となる形状の内側にあるのか、外側にあるのかによって大きく分けることができます。
まず、突起が物体の表面外側に形成されているものを「おねじ(雄ねじ)」と呼び、反対に内側部分に突起を有した形状のものを「めねじ(雌ねじ)」と呼びます。
また、円筒上の表面に突起を持つ構造のねじを「平行ねじ」、円錐の形状を持つものを「テーパねじ」と呼びそれぞれに分類されています。
また、右回りに進むねじを「右ねじ」、その反対を「左ねじ」と呼び、こちらもねじの種類として分類されています。
ねじの突起部分の違いによる分類
先ほどのねじ全体の形状による分類の他に、ねじはその突起部分の形状の違いによっても分類されます。
- 三角ねじ(突起の形状が三角の形をしたねじ)
- 梯形ねじ(突起部分が台形の形状をしたねじ)
- 四角ねじ(突起部分が正方形もしくは長方形の断面をしたねじ)
- 丸ねじ (突起部分が丸い形状をしたねじ)
更に、それぞれの形状ごとに異なった特徴を持ったねじが複数存在し、それぞれに違った規格と呼び名を持っています。
ねじの特徴
正確に製造されたねじには次のような様々な特徴があります。
もちろん突起部分の形状の違いによっては、多少の差はありますが基本的にねじである以上は同じような特徴を持っています。
一回転で進む距離は常に一定
ねじが一回転で進む距離を「ピッチ」と呼びます。
通常ねじはおねじとめねじを組み合わせて使用します。その際、ねじを一回転回すことでねじが進む距離はそのねじの規格(ピッチ)に等しく、常に一定距離進みます。
ピッチが小さいほど、おねじとめねじの隙間は小さくなる
おねじとめねじは一定の隙間(クリアワンス)をもって構成されています。
この隙間(クリアランス)はねじのピッチが小さくなるほどに、狭くなるという特徴があります。
これはねじの大きさを規定する場合に用いる「有効径」と呼ばれる数値の、おねじとめねじの差がピッチが小さいほど狭くなるように規定されているためです。
ねじを利用した様々な計測機器
最後にここまで紹介したねじの特徴を最大限りようした計測機器をいくつかご紹介します。
現代のように科学的な測定のできなかった時代に、先人たちの知恵によって生み出された様々な計測機器
その多くは現代でも加工の現場の第一線で活躍しています。
マイクロメーター
ねじの原理を利用した計測器としてもっとも有名且つ普及している計測機器です。
現在国内で販売されているほとんどのマイクロメーターに使用されているのは
「三角ねじ」・「ねじ山角度60°」・「ピッチ0.5」・「左ねじ」
の四つの要素を持ったねじです。
マイクロメーターの多くは、計測用のハンドルを一回転回すと測定子が0.5㎜進む構造を持っています。
インサイドマイクロ
基本的にはアウトマイクロと同じ原理で構成されている、内径計測専用の計測機器です。
ねじのまとめ
ねじはその種類を上げればきりがないほどに世の中に多数の種類が存在します。
それらのねじは工業の発達に欠かすことのできない存在として、古くから利用されてきました。
これからどれだけ工業が発展を遂げても、きっとなくなることの無い技術として利用され続けていくことでしょう。