製品の健全性を確認するのに用いられる様々な検査や試験。
強度試験のように実際に製品にダメージを与える破壊試験と、整品の形状や性質をそのままに検査を行う非破壊試験。
どちらも現在の日本ではとても重要視される検査です。
今回はそんな様々な試験の中でも非破壊検査、そしてその中でも比較的検査そのものが簡易であることから様々な場面で用いられることの多い「MT検査」とその検査機器についてご紹介します。
このページの目次
MT検査とは
様々な製品検査において「非破壊検査」に分類される試験で、おもに製品表面の傷や欠陥の発見を目的として行われる検査です。
同じように非破壊で行う製品検査に「PT検査」と呼ばれるものがありますが、PT検査とMT検査の最大の違いは、発見できる傷や欠陥の違いです。
PT検査は製品表面にある傷に浸透液と呼ばれる特殊な薬剤を浸透させ、後にその浸透液を現像することで傷を発見したり、その大きさや深さを推測する検査です。
対してMT検査は、先のPT検査に用いる浸透液が入り込むことのできないような、小さな傷や内部的な割れなどを発見・観察することのできる検査となっています。
また、MT検査は検査に用いる機材が比較的簡易であることからPT検査以上に様々な分野で用いられています。
MT検査の必要性
先ほどもお話しした通り非破壊検査におけるPT検査とMT検査の違いは、発見できる傷の種類の違いです。
例えば製品表面に10ミクロン程度の極浅い傷があったとします。PT検査で用いる浸透液はもちろんこの傷の中にもしっかりと浸透します。
しかし、その後の製品表面の余分な浸透液をふき取る工程では、あまりにも浅い傷に浸透した浸透液は余分な浸透液と共に、除去されてしまいます。
こうした場面ではPT検査だけでは製品の傷を発見することは困難で、欠陥を見落としてしまうことにもつながります。
そのため、非破壊検査では検査対象の製品ごとまたは求められる探傷範囲によってPTやMT検査など様々な検査を行うことが重要となります。
MT検査の仕組み
続いて実際のMT検査の原理についてご紹介します。
子どものころに厚紙の上に砂鉄をまき、紙の下から磁石で砂鉄を動かかした経験は多くの人が持っていることでしょう。
MT検査の基本原理はこの砂鉄と磁石の関係を応用したものです。
出典元:https://www.ponyindustry.co.jp/about/mt.html
MT=「Magnetic Particle Testing」
MT検査は日本語に訳すと「磁粉探傷試験」と呼ばれます。
MTとは「Magnetic Particle Testing」の略で、簡単に言えば砂鉄を使った探傷試験と言えます。
砂鉄に磁石を近づけると砂鉄は規則的な形状に整列します。これは磁石の持つ磁力線にそって砂鉄が動かされることで起こる現象です。
この磁力線は一定の磁気抵抗の基では規則的に形成され、形が崩れるといったことはありません。
しかし、磁気抵抗の違う部分があるとそこに磁力線が集中するなどの変化が起こります。
MT検査では、対象の製品の表面に溶解液と共に極微細な磁粉を塗布しそこに磁石を近づけて製品表面に磁力線をあてます。
傷も何もない製品では、整品の表面に塗布された磁粉は規則的に整列します。しかし、製品内部や表面に傷のある場合には磁力線に変化がおこり、その場所に磁粉が集中します。
傷の両側が磁石のN極とS極を形成し、そこに新たな磁界が生まれる為です。
この現象を利用し、探傷を行っているのがMT検査です。
MT検査機器とはどんな機器
MT検査は非破壊検査の中でも比較的簡易に行うことのできる検査です。
それでは実際に検査に用いる器具についてご紹介します。
基本構成は磁石とブラックライト
MT検査に用いる機器の基本構成は、磁力を発生させる装置と磁粉の動きを観察するためのブラックライトです。
上の製品はもっとも一般的なMTの検査機器です。(詳細はリンク先を確認してください)
装置としては非常にコンパクトであるため、検査の環境を選ばずどこでも作業することが可能です。
もう一つの重要な要素
最後にMT検査終了後の注意点についてもお話しします。
MT検査は先にお話ししたように磁力の力を借りて行う非破壊検査です。そのため検査対象の製品の材質によっては検査後に製品が磁力を帯びる可能性があります。
通常であれば気にならない微量の磁力ではありますが、その製品の使用される環境
例えば高速回転するような製品の場合にはこの残留した磁力が製品の稼働等に大きな影響を及ぼすことが考えられます。
その為、MT検査終了後は必ず対象製品の脱磁を行い残留磁力を極力抑制する処置が必要です。また、場合によっては専用の検査器具によって残留磁力がないことを確認する必要があります。
最後に
非常に簡単に製品表面の傷を発見できるMT検査。
今後は工業製品分野でもその技術の転用によって様々な場面でますます活躍する検査方法です。