「世界初0.1µmを測定」マイクロメータの仕組みと歴史

マイクロメータ

1μm(マイクロメートル)の精度が求められる製品をつくるときに、1μmの誤差が生じては商品になりません。しかし1μmは1,000,000分の1メートルという短さですので、そもそも1μmの誤差を確かめることも容易ではありません。
したがって、1μmの精度が求められる製品をつくるには、短い距離を測定できる機器が必要になります。
測定工具大手の株式会社ミツトヨのマイクロメータは、世界で初めて0.1μmの測定に成功しました。
マイクロメータの仕組みと歴史を解説しながら「0.1μmの価値」を考えてみます。

世界最高精度、ミツトヨ「MDH-25MB」の実力

ミツトヨでは50種類近くのマイクロメータをラインナップしています。そして「高精度デジマチックマイクロメータMDH-25MB」は、世界で初めて0.1μmの測定を実現しました。

0.1μmの測定を可能にしたのは、次の5つの技術です。

  • ABS(絶対)ロータリセンサ
  • 高精度ねじ加工技術
  • 高剛性フレーム
  • 高性能定圧機構
  • 防熱カバー

MDH-25MBの測定範囲は0~25mmで、最小表示は0.1μm(0.0001mm)、誤差は±0.5μmです。
これだけの高性能マイクロメータなので、標準価格は118,000円という価格になっています。同じミツトヨのマイクロメータでも最小表示が0.001mmレベルであれば、価格は2万~3万円ほどですので、MDH-25MBの価格の高さが際立っていることがわかります。
それでもMDH-25MBでしか測ることができない製品をつくる企業は、MDH-25MBを買い求めるのです。

世界に冠たる「日本の金型」を支えている

日本のモノづくりの現場といえども0.1μmの精度を必要とする場所はそれほど多くはありません。その貴重な現場のひとつが、金型の微細パーツを製造している株式会社ミスズ(本社・長野県千曲市)です。1980年創業の従業員9人という小規模な会社ながら、驚くべき精度の製品を生み出しています。

ミスズが製作しているのは、「刃先3mm、面粗度0.32μmの金属製品」や「寸法精度1μmの鏡面加工」といったものばかりです。
「面粗度0.32μm」とは、0.32μmを超えるデコボコはないという意味で、それだけ金属製品の表面が平らであるということです。
「寸法精度1μm」とはユーザーから指示された寸法は1μmしか狂わないという意味です。

そのミスズは自社のホームページで、ミツトヨMDH-25MBを使っていることをPRしています(*)。
つまり、MDH-25MBのユーザーであることは、正確な製品をつくっていることの証(あかし)でもあるのです。

モノづくりのスタートラインが金型なら、金型のパーツは金型づくりのスタートラインです。そのため金型パーツメーカーで使われているMDH-25MBは、モノづくりの源流をつくっているといえます。

株式会社ミツトヨとは

株式会社ミツトヨは神奈川県川崎市に本社を置く、1934年創業、資本金約4億円、年間売上高1,291億円(連結、2017年)の精密測定機器メーカーです。31カ国に研究開発や製造、販売の拠点を設けています。
ミツトヨの測定機器は、マイクロメータ、ノギス、光学レンズ、顕微鏡、形状測定機、三次元測定機など5,500種類もあります。
なかでもマイクロメータとノギスの国内シェアは90%で、他社を寄せ付けません。

マイクロメータの仕組み

マイクロメータは、測定したい対象物をはさんで長さを測る道具です。
マイクロメータはU字型になっていて、ネジ(シンブルといいます)を回すとU字の空間に突起物(スピンドルといいます)が出てきます。スピンドルはシンブルが回転した分だけ出てきます。
シンブルを回転させていくとスピンドルが出続けて、最終的に対象物に接触します。スピンドルが対象物に接触するとシンブルが空転するので、それ以上いくらシンブルを回してもスピンドルは出てきません。

「ネジの回転」は「ネジの移動距離」でもあります。したがって、シンブルの回転数を対象物の長さに変換することができます。
それでシンブルが空転した時点で、対象物の長さが確定するわけです。

マイクロメータは繊細な測定機器ですので、マイクロメータを握るユーザーの手の体温だけで10μmぐらいずれてしまいます。
それでMDH-25MBにはユーザーが触れる部分に防熱カバーがついていて、体温による誤差を生じさせないようにしています。

マイクロメータの歴史

マイクロメータの原形である「挟み尺式マイクロメータ」は、イギリスの天文学者W.ガスコイン(Gascoigne)という人物が1639年に発明しました。
100年以上経って蒸気機関を発明したJ.ワットが1772年に「卓上形マイクロメータ」をつくりました。この時代ですでに0.0025mmまで測定できました。またこの卓上形マイクロメータはU字型になっていて、現代のマイクロメータに主流になっています。

日本国内でマイクロメータが製造されたのは1920年ごろとされています。ミツトヨの前身である三豊製作所がマイクロメータをつくったのは1938年です。

まとめ~高性能を支える高性能

現代のマイクロメータの実力とマイクロメータの歴史を概観すると、高性能の製品を生み出すには高性能の測定機器が欠かせないことがわかります。
高性能のマイクロメータを求めるメーカーの妥協のなさと、それに応えるマイクロメータ・メーカーの妥協のなさが、世界に冠たる日本のモノづくりを支えているわけです。

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ライター紹介
ライタープロフィール
アサオカミツヒサ

フリーライター、ライティング事務所office Howardsend代表。北海道大学法学部を卒業後、鉄鋼メーカー、マスコミ、病院広報などを経て2017年独立。取材した分野は、地方政治、地方経済、過疎化、ワーキングプアなど。現在の執筆領域はIoT、AI、産業一般、人事制度、金融、最新抗がん剤、生活習慣病治療など。趣味はクルマとバイクと登山。北海道釧路市在住。

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