二つの空間に違った圧力の気体が充満しているとします。
その両方の空間には圧力に違いがあること以外分かっていません。
そんな状況で両方の空間の圧力の差を計測できる計器が、差圧計です。普段はあまり目にする機会はありませんが、私たちの生活を陰で支えてくれる大切な計器です。
今回は差圧計(マノメーター)についてご紹介します
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差圧計とはどんな計器なのか?
それでは、まず差圧計がいったいどのような計器であるかについてご説明します。
一般的な圧力計が、対象となる加圧状態にある検査対象の圧力を大気圧(絶対値)と比較しているのに対して、差圧計は2つの圧力の違いを計測できる圧力計です。
例えば、Aの容器に1Mpaの気体が入っています。Bの容器には2Mpaの気体が充填されています。
通常の圧力計であれば、二つの容器に別々に圧力計をつけて中身の圧力を測定します。そしてその二つの容器の圧力の差は、計算によって求めることとなります。
しかし、差圧計は二つの容器に同時に接続することで、二つの容器の中の圧力の差を瞬時に、且つ正確に計測することが可能です。
その反面、片側にしか圧力の無い状態では差圧計は適正に圧力を計測することはできない構造でもあります。
差圧計の構造は?圧力計とは何が違うの?
では、差圧計と圧力計では構造はどのように違うのでしょうか?
まず、通常の圧力計に関しては一定方向の圧力をより正確にします為、多くの場合「ブルドン管」呼ばれる圧力によって一定の形状変化を起こす部品構造を利用しています。
ブルドン管には様々な形状や方式がありますが、すべてのブルドン管に共通しているのは加えられた圧力と変形の度合いに比例関係があるという点です。
では、差圧計の構造はどうなっているのでしょうか?
差圧計はその方式によって「U字管圧力計」や「環状てんびん型差圧計」「デジタル差圧計」などに分類されます。
「U字管圧力計」の仕組み
U字管圧力計はその名の通り、Uの形をした圧力計です。差圧計の中ではもっとも単純な構造をした圧力計と言えます。U字管の中には液体が充填されています。
上の絵でP1とP2はU字管にかかる圧力を示しています。P1とP2には圧力の差があることが分かっているだけで、圧力そのものの大きさは不明です。
U字管の両端に同時にP1とP2の圧力を加えると、より圧力の大きなP1の側の液面が下がります。この時、P1側がP2側よりも液面を押し下げた量=h2の値などから二つの圧力の差を数式によって求めることができます。
詳しい数式は冗談のリンク先で確認してみてください。
デジタル式差圧計の仕組み
続いてデジタル式差圧計の仕組みについてです。デジタル式差圧計は多くの場合、感圧素子と呼ばれる圧力を感知できる素子に対して、左右から違った圧力を加えます。
その時、感圧素子がどちらの方向にどれだけ変形したのかを電気的な信号として読み取り数値化します。この原理は金属が変形を起こす際に、そこに流れる電流の大きさと変形量に一定の関係性があることを利用しています。
これはデジタル式のトルクレンチなどにも幅広く応用されてるいる原理で、力の強さをデジタル方式で表す計器には欠かせない原理とも言えます。
また、近年では感圧素子の素材も様々なものが開発されており、高精度・低差圧の計測も可能になりました。
差圧計の活躍する場面は?
では、差圧計はいったいどのような場面で使われているのでしょうか?
私たちの身近なところにある差圧計をいくつかご紹介します。
クリーンルームの環境計測
携帯電話やパソコンに使用する半導体、その製造過程で欠かせないのがクリーンルームです。クリーンルームとはその名の通り、清浄な空気で満たされた環境のことです。
クリールの製造には様々な集塵機やフィルターを使用します。そうして作り出されたクリールームは人や物の出入りによって外気が内部に侵入しないよう、内外で気圧に差を設けています。
その時、クリーンルームの内外の気圧の差を監視しているのが差圧計です。
差圧計によってクリーンルームの内外の気圧差が一定以下に下がったことが検知されると、クリーンルーム内部の気圧を上げる措置がとられ、クリーンルーム内部は常に外部と比較して高い気圧となるようコントロールされています。
油圧・空圧機械の故障の把握
もう一つは、油圧や空圧機器の状況の把握です。身近には実は油圧や空圧で作動しているものがたくさんあります。例えば新幹線の扉は空気の力を利用して開け閉めが行われています。
そうした油圧や空圧器機のトラブルの際にも差圧計は活躍します。
油圧や空圧の配管のどこかで目詰まりなどのトラブルが発生した際、その場所を特定する目的でも差圧計は使用されます。
清浄な配管では機器の入り口と出口で同じ圧力を検知するはずの構造の場合、差圧計を取り付け二つの配管に圧力の差が確認できれば、その箇所が故障やトラブルの原因であると特定することも可能です。
一般的な差圧計はどんなもの?
最後に一般的に販売されている差圧計の中でも、操作が非常に簡単で誰でも容易に差圧も計測できるオールインワンタイプの差圧計をご紹介します。
デジタル式のハンディータイプの差圧計です。上部2か所の穴と計測したい対象をつなぐことで差圧を簡単に計測できます。
また、高湿度の環境でも使用できるほか流体の圧力差を測定するピトー管を利用した測定も可能で、空調ダクト内部の差圧測定も簡単に行うことが可能です。