ロジックアナライザの基礎知識と製品の選び方について

ロジックアナライザの基礎知識と製品の選び方について

ロジックアナライザはデジタル回路上の多数のデジタル信号を表示するものです。
デジタル回路を構成している複数のバスの大量のデータ(32ビットや64ビットなど)を同時にまとめて取り込み、解析して表示することができます。
入力信号は電位差によって‘0’か‘1’の2進数データに変換されます。
ユーザーがあらかじめ設定したトリガ条件と一致すると、取り込まれたデータは人間が観測しやすい形式で表示されます。
ロジックアナライザは“ロジアナ”と呼ばれ、、デジタル機器のテストやデバッグ作業、データ解析にしばしば使われてきました。
それでは、ロジックアナライザの仕組みについてみていきましょう。

基本構造と動作原理について

ロジックアナライザの内部構成は以下のようになっています。

ロジックアナライザの内部構成

ロジックアナライザに取り込まれた信号は、まず、コンパレータに入力されます。、
スレッショルド電圧(しきい値)と比較され、信号の電圧の方が高ければ‘1’、低ければ‘0’となります。
スレッショルド電圧は各種信号規格(TTLやCMOSなど)に合わせて、ユーザーが設定します。
コンパレータは入力チャネル数(ビット数)に応じて、構成されます。
コンパレータの出力はクロック信号のタイミングで、ラッチ(保持)され、トレースメモリに記録されます。
サンプリングを行うクロック信号は内部クロック(ロジアナ内蔵)か、外部クロック(テスト対象)のどちらかを選択できます。
この選択によって、動作モードが決まるのですが、このことは後ほど詳しく述べます。
トレースメモリがいっぱいになると、古いデータから順に新しいデータに上書きされます。
ユーザーの設定したトリガ条件と一致すると、信号の取り込みが止まり、動作モードに対応した形式で、データが表示されます。
トリガの設定については後ほど、詳しく述べます。
ここで、ユーザーは表示された波形やリストなどをチェックして、テスト対象のシステムの動作を確認することができます。
トリガ条件を設定し直してテストや解析を繰り返し、問題現象の原因を追及していきます。

ロジックアナライザの使い方

ロジアナの基本的な操作を手順にしたがって、みていきましょう。

ロジックアナライザ

  1. プローブを接続します
    最初に、ロジックアナライザとテスト対象の基板上の端子との間のプロービング(接続)を行います。
    プローブにはさまざまなタイプがありますが、後ほど(「ロジックアナライザの選び方」のところで)詳しく紹介します。
  2. 信号線のネーミングを行います
    プロービングした信号群に名前をつけ、グループごとにまとめ、登録します。
  3. クロックを指定し、モードを選択します
    先ほど触れましたように、サンプリング・クロックをどこから取るかで、「動作モード」が決まってきます。
    2つのモードがあります:
    1)ステート解析(外部クロック、同期モード)
    2)タイミング解析(内部クロック、非同期モード)
    【ステート解析】モードでは、サンプリング・クロックをテスト対象から取るので、テスト機器の動作に同期してバスの信号を観測できます。観測したデータはリストで表示されます。
    ソフトウェアの解析に向いています。
    一方、【タイミング解析】モードでは、サンプリング・クロックはロジアナ内部から取るので、非同期測定となります。テスト機器よりも高速なので、回路上の多数の信号のタイミングを同時に、より正確なデジタル波形で観測できます。ハードウェアの解析に向いています。
  4. トリガ条件を設定します
    複雑な問題の原因を突き止めたり、発生頻度の低い問題を解決するためには、いろいろな”仕掛け”が必要です。
    ロジアナの豊富なトリガ機能をうまく使うことによって、現象をとらえられる可能性が高まり、システムのテストやデバッグを効率的に進めることができます。
    トリガの設定例をいくつかあげてみましょう。
    1)アドレスやデータに指定したパターンが、入力信号に現れたとき
    2)一連のイベントが指定した順序で発生したとき
    3)信号(間)の指定したタイミング(エッジ(立ち上がり/立ち下がり)、あるいは、エッジ後のディレイ(遅延)タイム経過後など)と一致したとき
    これら1)~3)が複雑に組み合わされたトリガ条件も少なくありません。
    ロジアナが提供するトリガ作成ツールを使えば、複雑なトリガシーケンスも簡単に作成することができます。
    操作に慣れるまでは、少々大変ですが。
  5. 実行(RUN)します
    トリガがかかると、そのときの動作モードにしたがって、ロジアナの画面には信号群の波形か、アドレスとデータのリストが表示されます。
    もっとも、最近のロジアナの中にはステート解析とタイミング解析を同時に行い、表示できるものもあります。
    さらに、取得したデータを正常なデータと比較する「コンペア機能」、メモリにストアされた長時間の「トレースデータを逆アセンブルする機能」、「プロトコルをデコードする機能」など、有用な付加機能を備えたロジアナも増えてきました。
    こんにち、FPGA、DDR4の測定ニーズは高いので、FPGAアナライザ、DDRアナライザがメーカーから提供されています。
    セットアップが容易で、測定しやすい環境が整ってきました。

ロジックアナライザと他の測定器との使い分け

ロジックアナライザと他の測定器

ここまで、ロジアナの仕組みと操作について、ざっと説明してきました。
ロジアナは最大数百チャネルの信号を同時に解析、表示する測定器だということがお分かり頂けたかと思います。
いま、ロジアナのタイミング解析モードを実行して、ようやく、システム上の問題現象をとらえたとしましょう。
疑わしい箇所がピンポイントでわかったときには、その信号の波形を見たくなります。
ロジアナの表示では、HiかLoのまっとうな出力に見えたものが実際は、ノイズやグリッチかもしれません。
ですが、
残念ながら、ロジアナでは波形観測はできません。
そこで出番となるのが、ハード屋さんが使い慣れているオシロスコープです。

オシロスコープ

オシロスコープ(以下、オシロ)に切り換えて、
信号のアナログ特性(立ち上がり時間、オーバーシュートなど)やセットアップ/ホールド時間をじっくり測定して、問題の所在を確認していきます。
やっぱり、最後の拠り所はオシロスコープ?
いえいえ、ロジアナもオシロもそれぞれ一長一短あり、補い合ってより強力な測定ツールとなるのです。
オシロはアナログのチャネルが多くても4chあるだけで、ロジアナのようなロジック・チャネルはありません。
長時間記録できるトレースメモリもありません。
ステート解析機能もなく、トリガ設定機能もロジアナほど充実していません。

デジタル形式の信号

そこで、最近のロジアナはオシロと連携できるものが増えてきました。
ロジアナの画面にデジタルとアナログの両方の形式で信号が表示され、デバッグの効率も飛躍的に向上しました。
もうひとつ、忘れてはならない測定器がミックスド・シグナル・オシロスコープ(MSO)です。
MSOはロジアナとオシロの中間的なものです。
アナログとデジタルを同時に解析したり、波形観測を行うには大変、有用です。
MSOはアナログ2chか4ch, 加えてロジック16Chをもつものもあります。
ところが、
ステート解析はできず、ロジアナのような長時間のトレースは取れません。
トリガ機能の設定もあまり複雑なことはできません。
ご自分の設計したシステムをテストするには、どの程度の性能を持った測定器がふさわしいか、それぞれのスペックを付き合わせて検討し、最適なものを選びましょう。

ロジックアナライザの選び方

ロジアナ選定のキーとなる機能は

  1. 最大サンプリング速度
  2. 最大メモリ長
  3. トリガ検出速度
  4. プローブの性能

です。
昨今、テスト対象のシステムはますます高速化、複雑化していますので、正確なタイミングを測定するにはターゲットに見合った高速なサンプリング分解能(サブナノ秒クラス)が求められます。
メモリが長いほど、トリガにかかったタイミングをずっと遡って異常を検出できます。
また、せっかく複雑なトリガシナリオを組み立てても、トリガ・シーケンサの速度が遅ければ、トリガは目論見どおりに機能しません。
プローブにも配慮が必要です。
テスト対象に与える影響をできるだけ抑えたプローブが要求されます。
用途に応じて、以下のようなプローブがよく使われます。

フライングリード・プローブ

昔からあるプローブで、1本の端子にプローブ先端のグリップを挟み込んで接続します。このタイプのプローブしかなかった時代には、多いときには何百本ものプローブを接続する作業はなかなか大変でした。現在はトラブルシューティングのときなど、特定の信号を測定するときに使います。

フライングリード・プローブ

コネクタ・プローブ

観測する基板上にはあらかじめロジアナ専用のコネクタを取り付けておきます。フライングリードと同様に、1.5Gb/s程度の転送速度に対応したものもあります。

コネクタレス・プローブ

高速・高周波回路の場合に、プローブの容量負荷を小さくしたいときに使います。基板にはフットプリントとプローブを固定するリテーナを備え付けておきます。プローブのピンにはスプリングが内蔵されており、確実に接続されます。

いずれのタイプに対しても、昨今の高速回路に対しては容量負荷の小さなプローブが求められます。
データシートに書かれたプローブの容量値に注意しましょう。
加えて、
測定前のさまざまな設定の操作がしやすいかどうかも大事なポイントです。
製品紹介のビデオを見たり、デモンストレーションに参加して、操作性をよく見極めましょう。
結局のところ、機能とコストのせめぎ合いになっていくかと思います。
ロジアナは高価な測定器ですので。

ロジックアナライザの主要メーカーと製品モデル

キーサイト・テクノロジー社 (旧アジレント・テクノロジー社。以下、キーサイト社) とテクトロニクス社の製品がロジックアナライザ市場の9割以上を占めています。

モジュラー型のロジックアナライザ

キーサイト社の最新製品は「U4164A」システムで、モジュラー型のロジックアナライザです。
チャネル数は最大408、ステートモードでの最大速度は4Gb/s、タイミングモードでは最大10GHz、メモリ長は最大400Mbまでアップグレードできるようになりました。
2つの構成方法があります。
ひとつは、ロジックアナライザ・モジュール「U4164A」をスロットインしたシャーシ内に、組込みコントローラーをセットするケース。
このボードの代わりに、PCを使う構成もあります。
外付けディスプレイ、キーボード、マウスも用意します。
測定対象の要求が厳しくなった場合にはモジュールの追加も検討し、構成を最適化した上でテストに臨んだ方がよいでしょう。。
「U4164A」のフィーチャーは上記に述べた高速化だけではなく、新たに加えられた2種類の動作モードです。
「クワッド・サンプル・ステート・モード」と「10GHzクォーター・チャネル・タイミング・モード」です。
「クワッド・サンプル・ステート・モード」によって、リード/ライトデータと個別の立ち上がり/立ち下がりから、2つのしきい値をとり、4つのサンプリング位置が設定できるようになりました。
そのため、DDR5などの超高速データのプロービングが1ヶ所でできるようになりました。
「U4164A」の参考価格は、基本構成(136ch/350MHzステート/2Mメモリ)で360万929円。
実際はこれに何らかのオプションが加わるので、いずれにしてもこのクラスのロジックアナライザは値段も半端ではないようです。
ところで、
キーサイト社のロジックアナライザの前バージョンの16850、16900、16800シリーズも販売終了になっているとはいえ、まだまだ仕事場、レンタル会社では現役バリバリです。
メーカーサポートも継続中のようです。
一方、テクトロニクス社の対抗製品としては、「TLA7000」シリーズでしょうか。
インストールされたモジュールによって異なりますが、
チャネル数は最大136、ステートモードでの最大速度は1.4Gb/s、タイミングモードでは最大50GHz、メモリ長は最大128Mbまでアップグレードできます(「TLA7Bxx」シリーズ)。
「U4164A」と比べると、タイミング分解能のみが高いということになりそうですが、サンプリング分解能が高いというのは大きな強みです。
グリッチの発生箇所を時間とチャンネルで表示できる独自の機能によって、マニュアルでの検索が不要というのも魅力的です。
これら以外のフューチャーについては「U4164A」と大きな相違ははないようです。
「TLA7000」シリーズの価格は325万円。
お手頃価格と謳ってるのは下位シリーズの「TLA6400」シリーズで188万円~332万円。
このシリーズは高速信号品質の異常検出と原因追跡を支援する機能に注力しています。
ホビーユーズに近い超廉価盤のロジアナもぽちぽち出回るようになりました。

  1. 「ポケアナ」(ハギワラソリューションズ社)
    名前のとおり、ポケットサイズのUSBインターフェイスのロジック&プロトコルアナライザ。
    (10万5840円)
  2. 「LAP-C(16032)」(ZEROPLUS社)
    16チャンネルで、メモリは512Kビット。USBインターフェイス  (1万2800円)
  3. 「LogicStudio」(テレダイン・レクロイ社)
    USBインターフェイス。強力なデバッグ機能。PCにオシロスコープを接続すれば、MSOとして活用できる。
    (16万円)

まとめ

ますます、高速化、複雑化しているデジタルデザインのさまざまなテスト、解析にロジックアナライザは欠かせなくなってきています。
抱えている問題解決にもっとも有用なソリューションを提供してくれる機種を選ぶには、デバッグやテスト作業で苦しんできた経験に基づくニーズがまず、明確であることが望まれます。
全くの初心者なら、取りあえず、超廉価版のポケット・ロジアナから始めてみるというのもいいかもしれません。
ここまで述べてきましたスペック的なデータは機種選定の基本になります。
ですが、
ハイクラスのロジアナに組込まれている各種のアナライザ/ソリューション、ソフィストケートされた表示機能、自動化された操作についてはできるだけ、デモ機などで実際に触って実感する機会を持つことをオススメします、
1ヶ月のレンタル料金が100万円を越す機種もありますので。

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ライター紹介
ライタープロフィール
ランしゃー

企業エンジニアとして、メカトロニクスやパソコンの開発業務に十数年間携わった後、サイエンス&テクニカルライターに転身。企業時代の製品開発経験と知識を生かし、テクニカルライターとしてパソコン関連記事やマニュアルの執筆・翻訳に関わった。しだいにサイエンスライターとしてさまざまな分野にチャレンジ。国内外の豊富な取材をもとに、新聞、科学系雑誌などにロボットや介護/介助テクノロジー、人類進化・古代史の記事を20年余、執筆・翻訳する。2012~2017年にシンガポールに滞在。シンガポールの知られざる自然、驚異の生き物について、現在、厖大な取材データを整理中。メカメカしいモノと生き物(とくに犬、次いで鳥)がともに大好きなシニアライターです。

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