金型の「ナノレベル」の誤差を測定するレーザ顕微鏡

顕微鏡

日本の製造業は世界最高水準といわれていますが、これは製造工程のすべての段階で最高の精度を出しているからです。ただ、ある工程で厳格な精度を出そうとしても、その前工程でズレが生じていれば元も子もありません。ということは、モノづくりの「源流」での精度が最も重要になるわけです。

モノづくりの源流とは、金型です。
設計者やデザイナーがつくった原型の形を量産するには、金属で型をつくり、そこに鉄やプラスチックなどの材料を入れて形成していく必要があります。
したがって、金型にズレが生じたら形成が狂い、形成が狂うと組立工程で狂いが生じます。金型の「小さな誤差」は、雪だるま式に膨れ上がり、最終的に「大きな誤差」を持つ完成品となるわけです。
大きな誤差のある完成品は、不良品になります。

そこで最先端の金型づくりの現場では、ナノレベルでの調整が行われています。1ナノメートルは0.000000001メートルですので、その厳密さが想像できると思います。
1ナノメートルの精度を出すには、1ナノメートルの違いを測定する機械が必要になります。その測定機のひとつに、株式会社キーエンスの「形状解析レーザ顕微鏡VK-X1000」があります。
この製品が金型業界にどれほど貢献できるのか検証します。

そもそも金型とは「日本のモノづくりの原点」

金型測定の話の前に、金型の基本知識を身につけておきましょう。そのほうが「なぜ金型の測定をそこまで厳密に行わなければならないのか」を理解しやすいからです。

金型はマザーツールと呼ばれます。またドイツでは「金型は生産の王」ともいわれています。「母」や「王」と呼ばれるほど、金型はモノづくりの根本なのです。

また金型は、設計を形にするだけでなく、完成品の優劣や品質や性能にも影響を与えます。つまり同じ製品を、A社の金型とB社の金型でつくったとき、完成品の見た目がまったく同じでも、製品に優劣がつくのです。金型に投入されるノウハウは、それくらい完成品に影響力を持つのです。
したがって金型には、次のような性質があります。

【日本の金型の性質その1】完成品より厳格・厳密につくらなければならない

これだけ厳しい条件が課される金型づくりは日本企業のお家芸でしたが、1980~1990年代に韓国や台湾の金型メーカーに猛追されることになります。
日本の金型メーカーはなんとかその難局を乗り切りましたが、2000年代に突入すると今度は中国勢に迫られます。輸入量の目安のひとつに輸入浸透度という指標があるのですが、金型の輸入浸透度は、2003年は20%ほどでしたが、2011年には35%にまで上昇してしまいました。
日本政策投資銀行はこの背景に、次の3つがあると考えています。

  • 中国勢が3DのCADやCAMなど高度な成型機を導入し始めた
  • 設計ソフトのコピーの氾濫と技術の標準化が進んだ
  • 日本の図面や加工データが中国に流出した

その結果、金型最大手の株式会社オギハラがタイの資本を受け入れたり、業界2位の株式会社富士テクニカと3位の株式会社宮津製作所が事業統合したうえに企業再生支援機構を受け入れたりする事態に陥りました。
2005~2010年で金型メーカーや金型部品メーカーは、合計701社も倒産するなどして減りました。

【日本の金型の性質その2】中国勢の攻勢による金型の陳腐化と企業競争力の低下

しかし、このような状況下でも生き残っている日本の金型メーカーはあるわけです。それらの金型メーカーは、次のような方法で活路を見出しています。
・製造難度が高い複雑な形状の光学製品の金型をつくる
・高品質が求められる順保安部品や精度が要求されるOA部品の金型をつくる
・金型づくりだけでなく、成形まで手掛ける
・外資系メーカーとの取引を拡大する
そこで日本の金型メーカーには、次のことが求められるようになったわけです。

【日本の金型の性質その3】ナノレベルの正確さを誇る金型づくり

 

なぜ金型は「ナノレベル」の精度が求められるのか

なぜ金型にナノレベルの精度が求められるのか、理解できたと思います。それでは次に、どのメーカーが、金型にナノレベルの精度を求めているのか紹介します。
金型への要求が最も厳しいのが、カメラなどのレンズをつくっているメーカーだといわれています。高性能レンズの需要は年々増えています。レンズの性能は表面の滑らかさにあるので、「傷ひとつない金型」が求められるのです。
また、完成品(部品)が小さくなるほど、その完成品をつくる金型に求められる精度も高くなります。例えば、かつてはパソコンでしかできなかった作業が、いまや手のひらサイズのスマホで済みます。スマホの大きさがパソコンの10分の1であるとすると、スマホには10分の1の部品が必要になるわけです。小さい部品をつくるには小さい金型が必要になります。そして大きい金型では許された誤差が、小さい金型では許されなくなります。
IT機器業界に起きている小型化・微細化の波は、自動車業界、航空業界、金属業界、化学業界にも起きています。
つまりほとんどすべての産業で、ナノレベルで正確な金型が必要とされているのです。

「金型にナノレベルの精度を求める」とは、より具体的にいうと「金型の表面(材料が接触する面)にナノレベルの凹凸があってはならない」ということです。日本金型工業会によると、そのレベルになると「指で触ってわかる」といった職人技が通用しません。
つまり金型は最早、人知を超える製品になったのです。

そのため、世界で戦える現代の金型をつくるには、計測技術を含め科学の粋を投入しなければなりません。日本金型工業会は、現代金型は「サイエンスの箱」である、とまで言い切っています()。

ナノレベル

キーエンス「VK-X1000」の実力とスペック

キーエンスの形状解析レーザ顕微鏡VK-X1000は、次のような課題を持っているメーカーにうってつけの計測機器です。

  • 数ナノの誤差が生じている金型でつくった製品で不良品になってしまうメーカー
  • 接触式の測定機の針が金型の凸凹を感知できていないと感じているメーカー
  • 非接触式の測定機を使っているが、測定ノイズや反射データの抜けが多く計測結果に満足できていないメーカー
  • 金型の測定範囲が狭く十分測定できていないメーカー
  • 金型の測定結果の算出に時間がかかり、加工プロセスのリードタイムが短縮できていないメーカー

VK-X1000のキャッチコピーは「1ナノから50ミリまで正確に測れる」です。

VK-X1000とは

VK-X1000のレーザ顕微鏡は、光学顕微鏡より優れているとされています。
それは、レーザ顕微鏡には、焦点のあった光のみを検出することができるからです。つまり像をつくり出すときに不鮮明さの原因となる散乱光を除去できるのです。レーザの光が直進性に優れているため、このような利点を生み出すことができるのです。

VK-X1000シリーズの上位機種の「1100」だと、金型の表面の凸凹は、高さ0.5ナノメートル、幅1ナノメートルの違いを検知できます。倍率は42倍から28,800倍となっています。
レーザで一瞬で形状をスキャンするので対象物を傷つけることもありませんし、透明な物体は傾斜が強い物体を測ることもできます。

VK-X1000「1100」のスペックは以下のとおりです。

●総合倍率:42~28,800倍
●視野(最小視野範囲):11 µm~7398 µm
●フレームレート(レーザ測定スピード):4~125 Hz、7900 Hz
●測定原理:
・光学系:ピンホール共焦点光学系、フォーカスバリエーション
・受光素子:16bitセンシングフォトマルチプライヤ/超高精細カラーCMOS
・スキャン方式 (通常測定時及び画像連結時):自動上下限設定機能、高速光量最適化機能(AAGⅡ)、反射光量不足補完機能(ダブルスキャン)
●高さ測定
・表示分解能:0.5 nm
・リニアスケール:0.5 nm
・高さフレームメモリ:24bit
・繰り返し精度 σ:レーザー コンフォーカル:×10 100 nm、×20 40 nm、×50 12 nm
:フォーカス バリエーション:×5 500 nm、×10 100 nm、×20 50 nm、×50 20 nm
・高さデータ取得範囲:70万ステップ
・正確さ: 0.2+L/100 µm以下(L=測定長µm)
●幅測定
・表示分解能:1 nm
・繰り返し精度 3σ:レーザー コンフォーカル ×10 200 nm、×20 100 nm、×50 40 nm
:フォーカス バリエーション:×5 400 nm、×10 400 nm、×20 120 nm、×50 50 nm
・正確さ:測定値の±2%以内
●XYステージ 構成
・手動 稼働範囲:70 mm×70 mm
・電動 稼働範囲:100 mm×100 mm
●観察
・観察画像:超高精細カラーCMOS画像、16bitレーザカラー共焦点画像、共焦点+NDフィルタ光学系、C-レーザ微分干渉画像
・照明:リング照明、同軸落射照明
●測定用 レーザ光源:波長 紫色半導体レーザ404 nm
:最大出力:1 mW
:クラス:クラス2(JIS C6802)
●電源
・電源電圧:AC100~240 V、50/60 Hz
・消費電力:150 VA
●質量
・測定部:約13.0 kg
・台座:約16.0 kg(電動ステージ装着時は+2.5 kg)
・コントローラ:約3.0 kg

まとめ~MADE BY NIPPONを支える金型を支える測定器

MADE BY NIPPONの神通力が衰えつつあります。中国をはじめとするアジアのメーカーは、モノマネを究めているうちにオリジナルを超えてしまいました。
無断でモノマネすることは許されない行為ですが、それを取り締まることと、モノマネに負けない製品をつくることは、別に考えなければなりません。モノマネ製品でも高品質ならかまわない、というのが顧客の本音だからです。

製造業ではかつて日本の「専売特許」といわれていたさまざまな分野で、中国に追い抜かれています。モノづくりのスタートラインである金型での優位性を保つために、測定技術の進化が求められています。

中古計測器、測定器を売買したい会社様へ

当サイトはAnyble(エニブル)株式会社が運営しております。 法人間で中古計測器、測定器を直接売買できるプラットフォーム【Ekuipp(エクイップ)】を提供しております。 興味がある会社様ははこちら↓。登録料は無料です。

パソコン用の画像:法人間で中古計測器、測定器を直接売買できるプラットフォーム 【Ekuipp(エクイップ)】 スマートフォン用の画像:法人間で中古計測器、測定器を直接売買できるプラットフォーム 【Ekuipp(エクイップ)】

ライター紹介
ライタープロフィール
アサオカミツヒサ

フリーライター、ライティング事務所office Howardsend代表。北海道大学法学部を卒業後、鉄鋼メーカー、マスコミ、病院広報などを経て2017年独立。取材した分野は、地方政治、地方経済、過疎化、ワーキングプアなど。現在の執筆領域はIoT、AI、産業一般、人事制度、金融、最新抗がん剤、生活習慣病治療など。趣味はクルマとバイクと登山。北海道釧路市在住。

計測器・測定器紹介
Ekuipp(エクイップ) Magazine