金属の硬さを表現するとき、皆さんはどのような方法で表現していますか?
「豆腐より硬い」「ダイヤモンドより柔らかい」そんな抽象的な表現で硬さを比較していることはありませんでしょうか?
また、金属加工の世界では加工する金属の硬さを正確に把握することは加工法案を決定するうえでも大変重要な情報です。ではそんな金属の硬さをどのようにして調べてどのように表現すれば万人に正しく伝わるのでしょうか?
今回は、そんな金属の硬さにまつわる測定器についてご紹介します。
このページの目次
硬度とは?
まず最初に、金属の硬さを表現する言葉についてご説明します。
ものづくりに携わっている方なら「硬度」という言葉に聞き覚えのある方も多いと思います。この「硬度」という言葉こそが金属の硬さを表す総称です。硬度とはあらゆる金属の硬さを数値で表したもので、その数値を読み取ることで、対象の金属の硬さを客観的な数値として認識することができます。
但し、この硬度という表現はあくまでも総称です。対象となる金属の種類や大きさ、基本となる硬さによって様々な表現を使い分けて硬度を数値化しています。例えば硬い金属の代表ともいえるダイス鋼と代表的な柔らかい金属のアルミニウムでは、硬度を計測する計器も計測した数値を表す記号も違っています。
これは金属以外の物質にも同じことが言えますが、豆腐とダイヤモンドを同じ測定器で硬さを測定することはできないため、別々の機会によって硬さを計測し数値化するため、硬度の表記も変わってくるのです。
では一般的に金属の高度を示す記号はどのようなものがあるのでしょうか?次項では金属の硬さを表現する各硬度記号とその関係性についてご説明します。
硬度には互換性が存在する
現在、構内における金属の高度を表現する記号としては次の4つの表現に集約されます。
- HRc (ロックウェルCスケール)
- HS (ショア)
- HB (ブリュネル硬さ)
- HV (ビッカーズ硬さ)
それぞれ、違った方法で金属の硬度を測ることで硬度を示す記号も全く異なったものを使用しています。ですがここで問題が生じます。前述のとおり硬度を把握することは金属加工にとって非常に重要な要素となります。しかし、硬度を測る計器によって導き出される数値が違っていてはだれが見ても一目で硬度を把握することはできません。また、最近では図面にその製品に求められる硬度が記載されていることも珍しくなく、その場合にも硬さを表す記号が混在していては、その製品の良し悪しを決めることもできません。
そんなときに活躍するのが「硬度換算表」と呼ばれる対照表です。
参考:https://www.silicolloy.co.jp/lookup_table/hardness_conversion_table/
この換算表は例えばHRCで表記された数値をHSに読み替えたり、図面に指示のある硬度表現に置き換えることが可能です。この換算表を用いることで、指定の硬度計が手元にない場合でも手持ちの硬度計の数値から指定の硬度表記へと置き換えることができ、無駄な計器を購入する必要がなくなります。
では各硬度表記の硬度を計測するための計器はどのような特徴があるのでしょうか?次項ではそれぞれの硬度計の特徴についてご紹介します。
硬度計の種類は用途と使用環境によって決まる
それではなぜ、「金属の硬さを測る」という似通った作業のために複数の計測方法が考案されたのでしょうか?それぞれの特徴についてご説明しながら、その理由を解説します。
ロックウェルCスケール 「HRc」
現在ではHSと並んでもっともポピュラーな硬度計測です。原理は基準となる硬さの圧子と呼ばれる鉄球やダイヤモンドを一定の力で試験片(硬度を知りたい対象)に押し付け、その時にできるくぼみの深さを測ることで試験片の硬度を測定します。圧子の硬さを変化させることで様々な硬さの金属の硬度を測ることができるため、いろいろな場所で多く活躍しています。
ショア硬度 「HS」
数ある硬度計の中で最も簡便で、持ち運び性にも富んでいるのがショア硬度計です。見ての通り装置としてもとてもコンパクトなつくりとなっており、大型の製品の硬度を測定する場合や試験片を移動できない場合などには、このショア硬度計が活躍します。一昔前の図面に示されている硬度表記は殆どがこのショア硬度であったのも、その計測の簡便さからです。
硬度測定の原理は、試験片の上の一定の高さからニードルと呼ばれるピンのような形状のものを垂直に落下させ、反動で跳ね返る硬さを計測しその跳ね返った高さによって硬度を導いています。
持ち運びが簡便であるがゆえに、作業者や測定箇所によっては硬度計そのものがきちんと固定できず、測定者や測定環境によって得られるデータにばらつきが大きいことが最大のデメリットです。
ブリュネル硬度計 「HB」
続いてはブリュネル硬度計です。この硬度計の原理は先のロックウェル硬度計と似通っていて一定の負荷で金属に圧子を押し付けくぼみを作ります。ここまではロックウェル硬度計と同じです。違いはロックウェル硬度計ができたくぼみの深さを読むだけでよかったのに対し、こちらは深さとその面積との関係性によって硬度を導いている点です。
元々はブリュネル硬度計が先に開発されていたのですが、より簡便に計測を行うことを目標としてロックウェル硬度計が開発されました。
ビッカーズ硬度計 「HV」
最後にご紹介するのがビッカーズ硬度計です。この試験機もロックウェルやブリュネルと同様に規定の形状をした圧子を試験片に押し付けて、その深さと表面積の関係性から硬度を算出します。最大の特徴は圧子の形状がピラミッド型をしている点です。他の押し付け型の硬度試験器とはこの点において大きく異なります。またそのくぼみの改正にはしばしば顕微鏡が用いられることもあり、深さや表面積の小さな差が硬度に大きく影響する硬度計です。
メリットとしては、他の硬度計では難しい表面の薄い皮膜などに対しても硬度検査を行うことができる点です。そういった微細な硬度検査痕を得るために1K以下の力で計測するビッカーズ硬度計をマイクロビッカーズと呼び、メッキ面の硬さ計測や研磨仕上げされた面の硬度検査などに広く用いられています。
金属用硬度計まとめ
今回は様々な場面で活躍する、金属用の硬度計についてご紹介しました。硬さを測るという行為はその対象となる試験片によって計器や冶具、表記の方法が大きく異なります。
今回は取り上げなかった、ゴムやスポンジなどもっと柔らかな素材の硬さを計る硬度計については別の機会にご紹介します。