現代の計測器において利用されている様々な記述を、一つ一つ詳しくご紹介していくシリーズ記事。
現代の計測機器の多くは旧来のアナログ式の計測機器に比べデジタル方式を採用したことで飛躍的にその精度が高くなっています。
しかし実はそこに応用されている技術は計測機器の種類や用途が変わっても、同じ技術が応用されていることもしばしばです。
このシリーズではそうした様々な計測機器に応用される、基本的な技術や仕組みについてできるだけ分かり易く、できるだけ詳しくご紹介していきます。
第四回は金属と電気抵抗の関係についてです。
このページの目次
金属は電気的要素で大きく二つに分かれる
まず初めに、一般的に「金属」と呼ばれるものは、電気的な特性の観点から2つに大きく分けることができます。
小学校の頃に理科の実験でやった「電気を通すもの」「電気を通さないのも」です。
乾電池と豆電球の実験を思い浮かべて頂くと分かり易と思います。
電気を通す「導体金属」
金属の電気的な特性のうち、電気を通す特性をもったものを「導体金属」と呼びます。
身近な金属の多くはこの導体に分類されます。
例えばニッケル合金であるステンレスや炭素鋼であるS45Cなどが、この導体に分類されます。
また、もっとも電気を抵抗なく通す素材としては「金」の存在がよく知られています。
電気を通さない「絶縁金属」
実はこの絶縁と分類される金属は、ほとんど存在しないことが知られています。
空気中で絶縁効果をもつ金属は「水銀」のみです。
通電の原理
それでは、金属はどのようにして電気を伝えているのでしょうか?
通電する様を「流れる」と表現しますが、実際に金属の中ではどのような現象がおこっているのでしょう?
ここでは金属が電気を伝える仕組みについてご説明します。
電気の流れは電子の流れ
金属に電気の流れる仕組み、それは電子の動きと言い換えることができます。
先ほど説明した導体と呼ばれる電気を通す性質の金属の中には、自由電子と呼ばれる比較的自由に原子と原子の間を移動できる電子が存在しています。
上のイラストのように、電池に繋がれた導体は電池に蓄えられた電気の力で、金属の中の自由電子がマイナス側からプラス側へと移動します。
この状態のことを一般的に電気の流れた状態=通電状態と言います。
また、この自由電子の量やその移動のしやすさは、金属に毎に異なる性質を持っています。
自由電子の移動が活発な金属ほど電気を良く通す=通電性の良い金属ということになります。
そしてこの電子の動きは、外的な環境や金属そのものの変化が起こらない限り不変であることも特徴の一つです。
金属の電気抵抗とは
こんどは通電の反対に金属の持つ電気抵抗についてです。
金属の電気抵抗とは先ほどの通電性の逆の性質。つまり電気を流しにくくする力です。
金属は基本的には電気を通す性質を持っているため、金属の電気抵抗と通電性は反比例の関係にある同じ意義の言葉と捉えることもできます。
金属の電気抵抗が変化する要因
では、金属の電気抵抗あるいは通電効率が変化する外的要因とは何なのでしょうか?
先ほどの説明の通り、金属の電気的な性質は経年等では変化しない普遍的な性質です。
そんな金属の電気的性質を変化させるもとしては次の二つの要因が広く知られています。
形状の変化
金属の電気的特性の変化を生む最初の要因は、その金属の形状的な変化です。
これは写真のようなゴムホースを思い浮かべると説明しやすのです。
水の通ったゴムホースの一部をおり曲げると、そこに抵抗が生まれ水は流れにくくなります。
金属の形状の変化と電気の流れとの関係もこれに近い関係性があります。金属は一定の状態までは形状が変化しても流れる電気の量は変わりません。
しかし、一定以上形状が変化が起こるとゴムホースと同じように電気の流れる量に変化が起こります。この時の一定以上の変化とは金属が持つ形状を維持しようとする力、それ以上の変化(力)の事です。
電化製品のコードなどを折り曲げても電気がきちんと流れるのはそのためです。
そしてこの形状による電気的な特性の変化は、ランダムに起こるわけではなく変化量と電気的な抵抗の変化の大きさには相互関係があり、その相互関係もまた金属ごとに違いがあることが分かっています。
温度の変化
もう一つ、金属と電気の関係性を変化させる要因が熱です。
金属に熱を加えると金属の特性は様々に変化します。たとえはS45Cとい呼ばれる0.45%の炭素を含有有した金属(鉄系)に変態温度以上になるまで熱を加え急冷すると、S45Cの硬度は何もしなかった時の数倍硬くなります。
Feなどの一部の金属を除いて、現在市場に流通しているほとんどの金属は様々な元素を組み合わせて作られたい、いわゆる合金です。
それらの合金は熱を加えたり、急激にれいきゃくしたりといった温度変化を与えると、元素レベルでの結合そのものが変化し、全く違った特性を発揮します。
その特性の一部として、電気的特性も変化します。
この熱による電気的特性の変化についても、各金属ごとに決まった変化となっており、熱と電気的な特性に関しても相互関係性が立証されています。
金属の変化を利用した主な計測機器
こうした金属特有の変化は計測機器にも利用されています。
また、電気的な変化であることからデジタル値としてその値を得ることができる為、これまでのアナログ計測機器ではできなかった、計測数値の2次利用なども頻繁に行われています。
金属電気的特性を利用した計測機器には次のようなものがあります。
金属と電気の関係を利用したさまざまな計測機器
・ロードセル
・トルクレンチ
・熱電対
この他にも挙げればきりがありません。
電気と金属の関係は、地球上のどの地点においても変化することの無いいわば普遍の関係性です。
そうした特性を活かした計測機器は今後も数多く開発されていくものと思われます。