医療機関や救急救命医療の特集番組などで、ときおり耳にする「チアノーゼ」
これは、血液の中の酸素の濃度が著しく低下している状態のことを指す、医療用語です。
この血液中の酸素の濃度を観察しているのが、今回ご紹介する血中酸素濃度計です。
医療現場では当たり前に使用されてきたこの計器ですが、近年では健康管理のために家庭で使用されることも多くなり、身近な計器となりつつあります。
今回は健康管理を血液状態から観察できる、血中酸素濃度計についてご紹介します。
このページの目次
血液と酸素の関係
人間の活動や生命の維持に酸素は欠かすことのできない大切な要素です。
そんな酸素を体の隅々まで運ぶ役割をしているのが血液です。
血液はどのようにして酸素を運ぶのか?
血液は肺にとりこまれた空気と反応し、酸素だけを取り込み体中へ運んでいきます。
この時、血液の中のヘモグロビンという物質がその運搬の役割を担っています。ヘモグロビンは酸素と非常に結びつきやすい性質をもった物質です。
肺の毛細血管にいきわたった血液は、そので酸素をヘモグロビンに結合させ体中に運んでいきます。
ちなみにヘモグロビンの原料は鉄分です。鉄が酸素と反応して錆びるのと原理としては同じ原理でヘモグロビンは酸素と結びつきます。
酸素と結びついたヘモグロビンは鉄が錆びて赤くなるのと同じように、その個体に赤味を帯びる性質があります。
これが血液が赤い原因です。
血中酸素濃度計の仕組み
では、本題の血中酸素濃度計についてです。
まず血中酸素濃度系は全ての血液の中の酸素濃度を計測している訳ではありません。
先ほどの説明のとおり、肺で酸素を吸収したヘモグロビンはその酸素を体中に届けたのち、静脈を通って再び肺に向かいます。
つまり静脈を流れる血液は酸素を受け渡した後の状態となり、基本的にはいつも酸素不足の状態です。
その為、血中酸素濃度計が計測しているのは酸素の受け渡し前の血液の流れる「動脈」ということになります。
血中酸素濃度計の構造
血中酸素濃度計の基本的な構造は大きく分けて二つです。
一つは赤い色を判別するための機構。
もう一つは血液(血管)の脈動を感知する機構です。
酸素濃度は血液の色で計測する
血中酸素濃度計の一つ目の機構である赤い色の濃さを判断する機構は、特定の色の光線を照射しその光線の跳ね返りや透過の具合を観察しています。
前述のとおり、血液が赤味を帯びるのは血液中のヘモグロビンと酸素が結びついた結果です。
その為、酸素の量が豊富な血液はより赤味の強い色を発し、酸素濃度の低い血液は黒みががった色をしています。
その血液の赤色のベクトルを検知することで、血液中にどの程度酸素がいきわたっているかを判断しているのです。
もう一つ欠かせない、脈動の検知
血中酸素濃度計でもう一つ欠かすことのできない機構が、血液(血管)の脈動を感知し心拍数を測る機構です。
血中酸素濃度計は基本的に指先に装着して使用します。
もちろん指先には動脈・静脈・毛細血管など様々な欠陥が張り巡らされています。
こちらも前述のとおり、静脈では常に酸素濃度は低い酸素欠乏の状態にあります。そのため動脈のみを見極めて酸素濃度を計測する必要があります。
その際に使用するのが二つ目のこの機構です。
血管のうち、静脈は心臓の影響が薄れ脈動をしません。反対に動脈は心臓などの拍動の影響で常に脈度を繰り返しています。
その脈動している欠陥にのみ注視して観察することで、動脈のみの血中酸素濃度を計測することができるのです。
血中酸素濃度はどの程度が適正?
それでは血中酸素濃度計で計測される酸素濃度はどの程度が適正と言えるのでしょうか?
まず、混乱しがちな酸素量と酸素濃度の違いについてご説明します。
血中酸素濃度計で観察しているのは血液中の酸素濃度=ヘモグロビンと酸素の結びつきの量です。
例えばヘモグロビンが100個存在する血液の場合、そのうちの100個すべてが酸素と結合していれば血中酸素濃度は100となります。
50個であれば血中酸素濃度は50と表現されます。
通常の健康な成人の血中酸素濃度の目安は96~99と言われています。
これ以下の数値の場合は基本的に酸欠の状態となりやすく、吐き気やめまいなどの体調不良の原因となったり、目立った症状のない場合でも潜在的な肺や呼吸器の欠陥の可能性が高くなります。
ちなみに血中酸素濃度の値が95以下となると運動などに支障の出るレベル、90以下だと呼吸不全と診断され直ちに治療が必要な状態となります。
血中酸素濃度計は身近な存在に!
最近ではスポーツ科学の分野などでも血中酸素濃度計が頻繁に使用されるようになりました。
血液中の酸素濃度と運動の関係性を科学的に解析し、トレーニングに活かすためです。マラソンなどの高地トレーニングもこの酸素濃度をコントロールしながら行う代表的なトレーニングです。
最後に、いくつか特徴的な血中酸素濃度計をご紹介します。
日々の健康管理に
医療用機器メーカーの製造する、一般家庭向けの血中酸素濃度計です。
酸素濃度と脈拍に加え、灌流指標と呼ばれる血液の流れる強さも同時に計測してくれます。
コンパクトで持ち運びにも便利なバッテリー式です。液晶も大きく見やすい構造となっています。
継続的な測定でも邪魔にならない、腕時計型の血中酸素濃度計
スポーツなど体を動かした結果と血中酸素濃度の関係を観察するのに優れたタイプです。
通常の指先での計測は、どうしても動きが制限されますがこの製品のように腕時計のようなタイプであればその心配はありません
血中酸素濃度計は一般家庭に普及
少し前までは医療機関限定の計測機器でしたが、近年では急速に一般家庭での使用が増えています。
計測の目的に応じて、最適なモデルを選んでください。