前回、前々回と計測機器の校正について触れましたが、計測機器は校正だけを行っていれば良いというものでもありません。
アウトマイクロの校正の記事の最後で触れたように、計測機器はその状態の管理を体系的且つ、継続的に行っていく必要があります。
近年では、製品の寸法や計測データはその数値のみをもって評価されるのではなく、計測に使用した機器の健全性も製品の評価の一環として取り扱われることが多くなりました。
そうした観点からも計測機器を適切に管理し、最善の状態をキープすることは非常に重要と言えます。
今回は、様々な計測機器を如何に管理すれば適正と呼べる状態をキープできるのかや、実際の現場にどのようにして管理意識を根付かせるのかなどについて実例を上げながらお話していきます。
このページの目次
計測機器の管理の第一歩は把握から
計測機器を管理する上で最初に行うことは、自社にどれだけの計測機器が存在しどのような状況に置かれているのかを把握することです。
例えばものづくりの現場にはアウトマイクロやノギス・シリンダーゲージといったありとあらゆる計測機器が存在しているかと思います。
まずはそうした多種多様な計測機器を適切に分類し、現状を把握することが重要です。
分類の手法はその会社にあったものであるべきですが、基本的には用途や目的・使用頻度などといった物を手掛かりに分類を行います。
あくまでもモデルケースではありますが、会社にある様々な計測機器の分類には次のような手法が一般的です。
計測機器の分類モデルケース1 使用目的による分類
最終検査などの品質を担保するために行う検査用の計測機器と、実際の製造の現場などで使用する計測機器とによる分類です。
この手法はモノ作りの現場では多く採用されている方式で、最終検査の健全性をできる限り有効なものにするために有効な手法です。
また、使用目的別に校正の頻度などを定めることで、管理コストの低減にも貢献してくれます。
計測機器の分類モデルケース2 機材の種類ごとの分類
一言に計測機器と言ってもその種類は膨大です。
その為、計測機器を「寸法計測機器」「圧力計」「ねじゲージ」といった具合に種類ごとに分類し管理する手法です。
この手法は単独で採用されることは少ないものの、分類管理の基本として広く用いられています。
計測機器の分類モデルケース3 使用頻度による分類
計測機器の中には、数年に1度もしくは特定の機会にしか使用することの無いものも多く存在します。
そうした使用頻度の極端に低い計器を他の計測機器とは分けて管理を行う事で、管理業務の簡略化が見込めます。
また、特定の場合にしか使用しない計器関しては「専用計測器」として、別の管理を行い更なる管理の簡略化を行うことも可能です。
計測機器の管理は履歴の管理
上記にて分類と数量などの把握を終えた計測機器を実際に管理してい上で最も重要視されるのが、その計測機器の修理や校正・新規購入といった履歴の管理です。
これは校正の記事でもご紹介しましたが、計測機器の履歴管理はトレーサビリティ管理の一環と位置付けられ、近年では非常に重要な管理項目として注目されています。
個々の計測機器の履歴を管理する手法として一般的なのは、各計測機器に個別の管理番号を振り当て、「計測機器管理台帳のような台帳を製作し管理する手法です。
管理台帳にはその計測機器の新規購入から廃却までのすべての履歴が網羅される必要があり、通常は次のような項目が記載され管理されています。
- 購入実績
- 校正履歴
- 修理履歴
- トラブル履歴
- 付属書類の管理
など、その計器に関する様々な項目を一括で管理できるようにします。
履歴管理には現場の協力が不可欠
計測機器を使用するのは主として現場です。
その為、計測機器に起こる様々な事象のほとんどは現場で発見されることとなります。
計測機器の様々な履歴を管理する上では、現場からの報告は必要不可欠と言えます。
現場で計測機器に起こった様々な事象を的確に報告し、精査・対応するために専用の用紙などを用いて計測機器に発生した事故などを、速やかに報告する体制作りも大切な要素となります。
計測機器の健全性を保つには、適切な使用と使用環境
幾ら統括的に管理された計測機器であっても、使用環境や使用方法が間違っていれば計測機器の寿命は短くなってしまうばかりか、修理などの回数が増大しその分、管理作業は煩雑になってしまいます。
その為にも普段から計測機器の取り扱いや保管方法などについてのルール作りを行い、それを徹底することも重要となってきます。
例えば、現場作業で使用する計測器でもっとも多い破損理由は落下です。
加工機周辺の作業台で計測作業を行う場合など、乱雑にものが置かれている作業台では計測機器が製品の上に置きっぱなしになっているなど、落下の危険性が高い状態で作業されていることがしばしば見受けられます。
加工の現場などにおいても、検査機器の置き場や保管方法などを明確に定めるなどして、計測機器の健全使用を促進することで、管理のわずらわしさから解放されるだけでなくコストの抑制にもつながります。
計測機器管理は日々の継続が大切
最後に計測機器管理について重要な点をまとめておきます。
- 現状の把握
- 分類と仕分け
- 適切な管理体制の構築と周知
- 現場での使用環境の改善と維持
計測機器は一度購入すると、長いものでは何十年も同じ機器が使用されることが想定されるなど、長期にわたる厳格な管理が求められるものです。
一時的な管理体制ではなく、現場も含めた継続可能なしっかりとした管理体制を構築することが重要です。