現代の計測器において利用されている様々な記述を、一つ一つ詳しくご紹介していくシリーズ記事。
現代の計測機器の多くは旧来のアナログ式の計測機器に比べデジタル方式を採用したことで飛躍的にその精度が高くなっています。
しかし実はそこに応用されている技術は計測機器の種類や用途が変わっても、同じ技術が応用されていることもしばしばです。
このシリーズではそうした様々な計測機器に応用される、基本的な技術や仕組みについてできるだけ分かり易く、できるだけ詳しくご紹介していきます。
第六回は電磁コイル(インダクタ)についてご紹介します。
インダクタとは?
インダクタとは、簡単に言えば小学校の時に理科の実験で電磁石を作ったときに使用した、電線をくるくると巻き付けた形状のコイルです。
このコイルは電気と深い関係性にあり、その性質を利用した様々な電子機器が開発されています。
電気制御の世界ではインダクタ・抵抗・コンデンサは三大要素と呼ばれるほど重要なものとして、広く認識されています。
ではインダクタの特徴とはどのようなものなのでしょうか?
電流と磁界の関係
まずは電流とそれによって生じる磁界についての関係からご説明します。
導線に電流を流すと、その導線の周りには磁界が生まれます。これは1820年にエルステッドによって発見された原理で、「電流の磁気作用」と呼ばれる原理です。
その時生まれる磁界は電流の流れる方向によって決まっており、上の図のように電流の進む方向に対して右回りの磁界が生まれます。
複数の磁界と電流の関係
また、複数の磁界を同時に発生させたばあには、同じ方向に電流の流れている導線どおしはひきつけ合い、反対方向に電流の流れている導線は反発しあう特性があります。
この反発やひきつけ合う力の大きさを測るために考え出されたのが、導線を四角いコイル状に巻いたソレノイドと呼ばれる装置です。この四角いコイルが後のソレノイドコイルのルーツと言われいます。
磁力線の集約と電流
コイル状にまいた導線に電流を流すと、導線の周りに発生する磁界は上の絵のように集約され、極を持つようになります。
小学校の理科の実験、電磁石はこの原理そのものです。電磁石ではより極の特性を引き出すためにコイルの中心に鉄などの芯を配置し、極を判別しやすくしていました。
電磁誘導とは?
電磁誘導とは前項までの、電流によって磁界が発生する仕組みの反対の原理です。
「導線の周りに意図的に磁界を作り出すことで導線に電流が流れる原理」
それが電磁誘導の原理です。
これは1831年にファデラーによって発見された原理で、下の絵のようにリング状の鉄心に2つのコイルを巻き、1次側のコイルに電池をつないでスイッチを入り切りします。
すると2次側のコイルに起電力(誘導起電力)が発生して電流が流れます。この電磁誘導現象を相互誘導といいます
自己誘導とコイル
上記のような現状は単独のコイルでも発生します。
単独のコイルをもつ上の絵のような回路で、スイッチを入れたり切ったりするとその度ににコイル周辺の磁界が変化します。
磁界が変化することでコイルに起電流が発生します。これを自己誘導と呼びます。
また、この時の起電流の大きさは右の式で表されるように、起電流と磁界の変化には一定の関係性があります。
インダクタを利用した計測装置
最も身近なインダクタを利用した計測関連機器は、デジタルノギスなどに代表されるデジタルスケールです。
これらの機器は、今回ご紹介したコイルと電流・起電流の関係性を利用した測定関連機器です。
スケールの基本となるベースの内部に極小さな電気コイルを埋め込み、その上を磁力を持ったものが通過する際に生じる起電流お大きさや強さを測ることで、メジャーとして利用できるようになっています。
連続するコイルでは、均一な連続した磁界が形成されています。
その均一な磁界を横断する形で別の磁界もしくは磁界に変化を与えることのできる物質が通過することで、コイル周辺の磁界に変化おこします。
磁界が変化することで、コイルに一定の起電流が発生する原理を利用しています。
インダクタまとめ
理科の実験で誰もがしってる電磁石の原理と、精密計測に欠かせないスケールは実は同じ原理でした。
このように、実は身近な技術がさらに洗練され計測機器に利用されていることはよくあることです。
今後もこうした身近な技術を中心に、様々な技術についてご紹介していきます。