乾湿計という測定器をご存知でしょうか。これはとても簡単に作ることができ、学校教育で用いられることもある測定器です。ここでは乾湿計がどのような構造でできているのか、そして測定の原理や実際に使う上で注意すべきポイントなどを紹介していきます。
このページの目次
乾湿計の基本構造と測定原理
湿度を計るための測定器にも何種類かありますが、そのうちシンプルな原理と構造でできているのが乾湿計です。
2つの温度計からできている
乾湿計は湿度を測定するための計器ですが、その測定原理上温度についても計ることができるようになっています。単純な構造をしており、製品によっては精度の高いものもありますが多くは高温および低温、そしてあまりに低い湿度である場合や気圧が低くなっている場合だと誤差が大きくなってしまうという特徴があります。
乾湿計としてもっとも基本的な形は2つの温度計で構成されている状態で、一方の温度計については湿らせたガーゼが巻かれています。このようにガーゼの巻かれた温度計のほうを湿球、何も巻かれていないほうを乾球と呼びます。
蒸発の様子から湿度を読み取る
乾湿計では気化熱がポイントとなります。2つの温度計のうち、片方には湿らせたガーゼを巻き付けてありますが、このガーゼからは少しずつ水が蒸発していきますので、このときに周囲の熱を奪っていくことになります。このときに奪う熱が気化熱です。
水が液体から気体に変化する際熱を奪うのは、水を構成する分子にそれだけ大きなエネルギーを与える必要があるからです。固体である氷を触ってみると堅く、液体だと形状が固定されることがなくなり、そして気体になるとどこに浮遊しているのか分からなくなるほどに飛散していきます。それぞれの段階で分子の運動の活発さが異なっていることからこのような違いが起こっていて、活発に動くためにはそれだけエネルギーが必要となるのです。そこで周囲から熱を奪うことで気体として動き回るためのエネルギーを得ています。
湿球に巻き付けてあるガーゼの水分が蒸発することで温度計の表示する温度が下がっていきます。ガーゼのない温度計と温度差ができますが、この差から空気の乾燥・湿潤具合を読み取ることができます。よく乾燥している空気であれば蒸発がしやすくそれだけ湿球の温度は低下します。しかし湿気がある空気だと蒸発はあまりしないため温度差はあまり生じません。
こうして乾湿計は空間の湿度を測定していますが、多くの場合は相対湿度を測定しています。相対湿度とは、割合としてどれだけ水蒸気が含まれているのかを表す指標であり、絶対湿度とは区別されます。絶対湿度だと単位体積あたりに何グラム水蒸気が含まれているのかということを表現します。
乾湿計の使用上の注意
氷点下や高温環境の測定には向いていない
水が蒸発する際に奪う熱を利用しているため、蒸発が起こらない氷点下では測定をすることができません。
また、ガーゼが凍結してしまってもいけません。含ませた水分は毛細管現象によってガーゼ内を移動し、蒸発ができる状態になっています。しかし凍結してしまうと湿球への水分補給がなされず精度が落ちる、もしくは測定自体不可能になってしまいます。
風の影響
風は強い日の方がよく乾燥します。洗濯物が乾くスピードも風があるほうが早いということは体感しているかと思いますが、乾湿計においても同様のことが言え、水の蒸発は風量及び風速に関係しています。そこで測定する上で風についても考慮しなければなりません。風が強ければ強いほど良いというものではありませんが、正確な測定のためには2.0~5.0m/s程度の風速が望ましいとされています。
ガーゼは清潔に
ガーゼは湿球を湿潤な状態に保つ重要な役割を持っており、十分な水分補給および蒸発を生じさせるには汚れていてはいけません。汚れがあるということは水以外の不純物が含まれているということであり、そのことによって水の飽和水蒸気圧が変化し湿度測定に誤差が出てしまいます。そこで、ガーゼが汚れた場合や固くなってきたようなときには洗うか取り替えるようにしましょう。
熱源との距離
近くに熱源があると水蒸気に影響を与えて正確な測定ができなくなることがあります。その環境下での測定がしたい場合であればいいですが、目盛りを読む際に顔を近づけたり一時的に熱源を近づけたりしているとそのときに値が変化してしまいますので注意が必要です。また放射の影響も受けるため直射日光もできるだけ当てないようにしましょう。
安く購入することができる
実際に販売されている製品を見てみましょう。下の図は佐藤計量器製作所による乾湿計です。乾湿計にも色んなものがありますが、安いものだと1500円ほどで購入することができます。一方で同じ乾湿計でも10万円を超すものが存在していることも分かるかと思います。
製品例1.佐藤計量器製作所
また安藤計器製工所の乾湿計を見てみても、やはり安いもので1000円程度、高いものだと5万円以上にもなってくることが見て取れます。
製品例2.安藤計器製工所
乾湿計の原理と構造は単純
乾湿計は2つの温度計を使い、気化熱の影響を受けて生じた温度差から湿度を読み取ることができる測定器です。非常に単純な構造と原理からできており、1000円程度からで購入することができます。ただし価格の安いものだと測定誤差が起こりやすいことや測定環境の影響を受けやすくなることなどには注意が必要です。
より精密な測定をするのであれば高価格帯のものを検討してみても良いでしょう。