毎回、さまざまな計測器をご紹介していますが、今回ご紹介するのは穴の計測に特化して開発された計測器である「三点式内径マイクロメーター」通称「ホールテスト」です。
穴の計測と言えばシンダーゲージやインサイドマイクロが一般的ですが、それらの計測器の欠点を補ってくれるホールテストについて、構造や計測の注意点までを詳しくご紹介します。
このページの目次
三点式内径マイクロとは?
まずは三点式内径マイクロの基本的なところからご紹介します。
三点式内径マイクロはその名の通り、内径の計測を3点同時に測定子を当てることで行う、内径用のマイクロメーターです。従来のシリンダーゲージやインサイドマイクロが2点計測ですので、計測の方法そのものが違う内径計測器と言えます。
三点式内径マイクロメーターの構造は?
続いて、三点式内径マイクロメーターの構造を見ていきましょう
三点式内径マイクロは図の通り、シンブルと呼ばれる部分を回転させることで、測定子が出入りをする構造となっています。基本的な構造としては外径を計測する「アウトマイクロメーター」と同じなのですが、測定子が放射線状に移動する点が、特徴的と言えます。
三点式内径マイクロの計測方法は?
それでは、三点式内径マイクロの実際の計測について順を追ってみていきましょう。
1.計測器の準備
当たり前のことですが、計測をしたい穴と計測器の計測範囲があっていなければ計測を行うことはできません。
ただ、三点式内径マイクロメーターの場合はその他の計測器と違い、計測のできる範囲が狭いという特徴があります。これは機械的な制約によるものが大きい為です。
その為、計測をしたい穴の径をある程度正確に把握する必要があります。
2.計測器の自主校正
「計測の前には必ず、計測器の自主校正を行う」これも、他の計測器と変わりません。
しかし、インサイドマイクロやシリンダーゲージの構成がアウトマイクロで代用可能であったのに対して、三点式内径マイクロメーターは自主校正にどうしてもリングゲージが必要となります。
これも、三点を同時に計測する構造ゆえの宿命です。
3.計測
計測は、三点式内径マイクロを計測対象に入れた状態で、アンビルを回転させ三点ある測定子を均一に測定対処に押し当てます。
この時、上下左右に軽く揺らしながら計測すると簡単に計測することが可能です
4.計測を終えたら・・・
三点式内径マイクロメーターの測定子やその周囲の構造は、他の計測器と比較して非常に繊細です。
万が一、ぶつけてしまい事のないよう測定子を規定の位置まで縮めて保管する必要があります。
三点式内径マイクロメーターのメリットとデメリットは?
ここからは三点式内径マイクロメーターの構造上の様々なメリットとデメリットがあります。
そうしたメリットとデメリットを十分に理解したうえで使用することでその効力を最大限発揮することができます。
三点式内径マイクロメーターを使用するメリット・デメリット
まずはメリットから!
- 計測が簡単且つ、間違えても大きく計測されないためトラブルになりにくい
- 三点で計測することで、内径の変形に気づきやすい
- 三点計測のため、安定して計測ができる
続いてデメリット
- 計測機器が高額
- 構成の為に専用のリングゲージが必要
- 測定範囲が限られるため、穴ごとにサイズ違いの計測器が必要
- ルーローの三角形は判別できない
このような特徴となっています。
特にメリットの「計測が簡単」というのは、簡単=間違えにくいとも解釈できます。同じ内径を計測する計測器でありシリンダーゲージやインサイドマイクロメーターの計測には、それなりの熟練が必要とされます。しかし、三点式内径マイクロメーターはそう言った熟練をあまり必要としません。
反対に、最大のデメリットは計測範囲の狭さです。
量産加工品の検査さなどで、規定のサイズ以外に計測の機会の無い場合を除いては、三点式内径マイクロメーターはどうしてもその種類を多く保有する必要があります。
近年では、計測機器の管理体制にたいして様々な制約があり検査機器の増加はそうした管理業務の増加にもつながるため、できることなら避けたいというのが本音です。
三点式内径マイクロメーターの種類
最後に、現在販売されている三点式内径マイクロメーターを何点かご紹介します。
アナログとデジタルの違いや防水・防塵の機構を備えたものなど、様々な種類の三点式内径マイクロメーターが販売されていますので、用途に合わせて適切な商品を選んでください。
もっとも一般的な三点式内径マイクロメーターです。測定子がある程度長く設定されているため計測が簡単なモデルです。
おなじミツトヨ製のデジタル式三点内径マイクロメーターです。
バーニヤを読み取る必要が無いため、読み間違いを抑制できるほか、規定の穴の大きさに対しての誤差を計測することも可能です。