高い温度はこう測定する

高温度

生産現場において、高温は必要不可欠なものであり、厄介ものでもあります。
鉄は鉄鉱石を溶かしてつくるので、高い温度が必要です。金属の再結晶温度以上の高温で加工する熱間加工はコストパフォーマンスに優れた加工法です。高温は物質の性質や形状を変えるときに便利です。
しかし高温は、物体を溶かしたり、物体を蒸発させたり、物体の性質を変えたりするので、不具合の原因になります。
そこで生産現場では高温をコントロールする必要があり、そのためにはまず高温を正確に測定する技術が欠かせないわけです。
最新の高温測定技術をみていきましょう。

2,100度を測定する熱電対

株式会社フルヤ金属(本社・東京)はプラチナ、イリジウム、ルテニウムなどの工業用貴金属製品をつくっているメーカーです。
そのフルヤ金属が2,100度までの温度を測定できる「イリジウム-ロジウム合金熱電対(IrRh熱電対)」を開発しました。
ガラスが溶けるのが1,000度ほど、鉄が溶けるのが1,500度ほどですので、IrRh熱電対の性能の高さがわかると思います。

熱電対とは、ゼーベック効果を利用した温度計です。ゼーベック効果とは、種類が異なる2つの金属線をつなげて「輪」をつくり、2点の接点(T1,T2)に温度差を与えると電圧が発生して電流が流れる現象です。つまり電力が生まれるわけです。温度差と電力量の関係から温度を割り出します。

ゼーベック効果

(著作権者:Malyszkz (talk)、ライセンス:CC BY-SA 3.0 出典元:リンク

これまで一般的だった「タングステン-レニウム合金熱電対(WRe熱電対)」は1,700度までしか測定できませんでした。フルヤ金属のIrRh熱電対は2,100度まで対応できるので、通常の熱電対より24%も性能を向上させたわけです。

熱電対の性能を測るテストに温度ハンチング耐性があります。これは800~1,700度の間で温度を上げたり下げたりして熱電対がどれほどもちこたえられるかをみます。
WRe熱電対に温度ハンチング耐性を実施すると10回ほどで壊れてしまうのですが、IrRh熱電対は230回耐え抜くことができました。耐久性が23倍になったわけです。

パワー半導体のSiC基板、LED用サファイヤ結晶、自動車排ガス浄化用セラミックといった製品は、1,700~2,100度の環境下で製造します。IrRh熱電対は、これらの製品メーカー向けの温度計です。

キーエンスの放射温度計

高温用の温度計としては、放射温度計もあります。熱電対は体温計のように、温度を計測したい対象物(被測温物)に接触させて温度を測りますが、放射温度計は被測温物が発する赤外線を測定する非接触方式です。
手の平を頬に近づけると、頬に接触する直前に暖かさを感じることができます。これは頬が赤外線を発しているからです。赤外線はどの物質も発しています。

キーエンスの放射温度計
放射温度計のメリットは、温度計を接触させないので、被測温物も放射温度計も傷つけないことです。さらに接触しないので被測温物を回転させたまま温度を計測することもできます。例えば、ある製品を回転させているときの温度を測定したいときに便利です。
また測定が短時間で終了するので、工場などで使うと生産性が向上します。

赤外線は光の一種です。放射温度計は、被測温物が放射している赤外線をレンズで集め、サーモパイルという部品に当てます。
サーモパイルは赤外線を吸収して電気信号を発する性質があります。「電気信号の量」と「赤外線の量」と「被測温物の温度」は比例するので、電気信号の量を量れば被測温物の温度がわかるわけです。

ただここでひとつ問題が発生します。2つの異なる物質が異なる熱(温度)を持っているのに、同じ量の赤外線を発することがあることです。被測温物Aは100度で赤外線量Xを発するのに、被測温物Bは200度で赤外線量Xを発するのです。そのため「補正」をしないと、放射温度計はAとBも両方とも100度(または200度)と表示してしまうのです。

補正は「放射率」を使います。コンクリートの放射率は0.94、水は0.92、皮膚は0.98などとなっています。つまり放射温度計を使うときは、「どの素材を測定するか」がわかっていないとならないのです。

株式会社キーエンスはセンサーや3次元測定器、3Dプリンタなどをつくっているメーカーです。
そのキーエンスは2種類の放射温度計をつくっています。
キーエンスの携帯型放射温度計「IT2-80シリーズ」はハンディタイプで、例えば検査員が被測温物に近付いて測定することができます。
一方、設置型放射温度計「FTシリーズ」は、例えばライン上に設置しておき、ラインを流れる製品の温度を次々測定していくことができます。

2億3,000万度の測り方

太陽の表面の温度は6,000度もあります。太陽の中心部は1,500万度もあります。これでは放射温度計も役に立ちません。
しかし、2億3,000万度を測る温度計があるのです。
大学共同利用機関法人自然科学研究機構が開発した「プラズマ温度計測」です。
プラズマ温度計測は、ドップラー効果と光を利用します。ドップラー効果とは、救急車が近づくときは高い音に聴こえ、遠ざかると低い音になる現象のことです。ドップラー効果を使うと、自動車の速度がわかります。つまりドップラー効果の原理を使えば、移動する物体の速さを測定できるわけです。

すべての物質は原子で構成されていて、原子は原子核のまわりを電子が回っている構造になっています。電子の移動速度と物質の温度には相関関係があります。つまり電子の速度を計測すれば、その物質の温度がわかるわけです。
プラズマ温度計測は、光を電子に当てて、電子が反射した光を回収し、そこからドップラー効果を使って電子の移動速度を計算し、それを温度表示に換算するのです。

原理としてはこれだけですが、実際の温度測定方法はかなり大がかりになります。
2億3,000万度に達している電子は、光の3分の1の速度で原子核のまわりを回っています。1秒間に10万kmも進むのです。
そして電子の直径は、1ナノメートルの10万分の1ほどです。1ナノメートルは10億分の1メートルです。
したがって「光を電子に当てる」だけでも至難の業なのです。
そこでプラズマ温度計測では、2億ワットで生み出した超強力レーザーを光として使います。しかしそれだけの光でも、電子が反射する光は1個や2個です。よってプラズマ温度計測では超高感度な光検出器も必要になります。

さて、そもそもなぜ2億3,000万度を測定する必要があるのでしょうか。
それは、核融合の研究開発に欠かせないからです。

核融合とは核分裂の反対の現象です。どちらも大きなエネルギーを生む現象です。核融合は原子が融合(合体)することでエネルギーが生まれ、核分裂は原子が分裂(分解)することでエネルギーが生まれます。
核分裂は原子力発電や原爆、水爆に使われていますが、取り扱いがとても難しく製造時に危険が伴います。また核分裂が起きた後に高レベル放射性廃棄物が残り、その処理は世界的な問題になっています。
一方の核融合は、核分裂に比べるとはるかに「暴走」が少なく、安全対策が容易です。さらに高レベル放射性廃棄物は生じません。

核融合は夢のエネルギー源ですが、この現象を生み出すことはとても難しく、まぜ実用レベルの核融合をつくった国はありません。
核融合を起こすには、複数の原子核を毎秒1,000㎞の速度で衝突させなければならず、その衝突を引き起こすには1億度以上の高温環境が必要なのです。
1億度以上の高温環境は、もはや固体でも液体でも気体でもなく、「プラズマ」と呼ばれます。
つまり核融合の研究開発は「高温との闘い」でもあるのです。それでプラズマ温度計測のような温度計が必要になるわけです。

まとめ~測り知れない世界を測る

なんでも溶かしてしまう高温の世界は、まさに「測り知れない」世界といえるでしょう。それだけに未知の世界が広がっているはずです。
高温測定は未知の世界を可視化する技術といえるでしょう。

中古計測器、測定器を売買したい会社様へ

当サイトはAnyble(エニブル)株式会社が運営しております。 法人間で中古計測器、測定器を直接売買できるプラットフォーム【Ekuipp(エクイップ)】を提供しております。 興味がある会社様ははこちら↓。登録料は無料です。

パソコン用の画像:法人間で中古計測器、測定器を直接売買できるプラットフォーム 【Ekuipp(エクイップ)】 スマートフォン用の画像:法人間で中古計測器、測定器を直接売買できるプラットフォーム 【Ekuipp(エクイップ)】

ライター紹介
ライタープロフィール
Ekuipp Magazine編集部

法人間で中古計測器・測定器の売買を専門にしているプラットフォームEkuippが運営する、Ekuipp Magazineの編集部です。機材に関するあらゆる情報を発信していきます。

計測器、測定器紹介
Ekuipp(エクイップ) Magazine