電子天びん・はかりについて

電子てんびん・はかり

物体の質量を測定する機器に「天びん」と「はかり」があります。家庭、学校、病院、スーパー、宝石店、動物園、工事現場、危険物取扱場所や工場など非常に多くの場面で多種多様な「天びん」や「はかり」が使われています。
「天びん」と「はかり」にはアナログ方式とデジタル方式があります。アナログのはかりには、バネ方式で上皿タイプや吊り下げタイプなどがあり、またアナログの天びんには分銅を利用する昔ながらのタイプがあります。
他方、デジタルのはかりには「電子天びん」と「電子はかり」があります。ここで「天びん」と「はかり」の違いですが、比較的軽いものを正確に計量するものを「天びん」、比較的重いものを測定するものを「はかり」と呼ぶ傾向があります。計量できる範囲は1μg〜数tと非常に幅広くなっています。
ここでは、計量市場のほとんどを占める電子天びん・はかりの計測原理、機種選定の際に注目すべき項目、そしてメーカー・価格帯についてご紹介します。

計測の原理

電子天びん・はかりに主に使われているセンサーには以下の3つの方式があります。1つ目は「ロードセル式」、2つ目は「フォースバランス式」、そして3つ目は新光電子が開発した「音叉式」です。

ロードセル式

「ロードセル式」は「ストレインゲージ式」とも言われます。「ストレインゲージ」は「ひずみゲージ」ともいい、力を電気信号に変換する際に使われるセンサーです。ストレインゲージには、ひっぱり力を加えると伸びて抵抗値が増加したり、圧縮力を加えると縮んで抵抗値が減少するような性質を持つ金属や半導体材料が使われています。このような性質を持つストレインゲージをアルミなどの金属(起歪体・きわいたい)に貼り付けます。これを「ロードセル」というので、この方式は「ロードセル式」とも言われます。ロードセルの片側に測定したい物体による荷重をかけて、セルの歪みを発生させます。そしてセルの歪みによるストレインゲージの抵抗値の変化を測り、そこから物体の質量に換算します。
この方式では数100g〜数t(トン)をひょう量できます。ここで「ひょう量」とは、測れる最大の質量のことです。精度をそれほど要求しない場合の安価で小型なはかりや大型のはかりでこの方式が使われています。使用時にはウォーミングアップが必要となります。ウォーミングアップは、天秤を感度調整したり精密な測定をする際に必要で、温度が安定していることが大事と言われています。そのためには通常、使用する1時間前以上から天秤を測定できる状態にして、通電しておくことが推奨されています。

フォースバランス式

「フォースバランス式」は「電磁力平衡式」とも言われます。昔ながらの天びん(機械式天びん)の測定方法では、天びんの竿の片方に測定したい物体をのせ、そして反対側には分銅をのせて、ちょうど釣り合うところで物体の質量を決めることができます。「電磁平衡式」では、分銅の代わりに、磁石とコイルを組み合わせて発生させる電磁力(ローレンツ力・フレミングの左手の法則による力)でバランスをとります。磁石の磁場と電流から電磁力が求められることから、物体の質量を換算します。
この方式では、数g〜数kgをひょう量できます。低ひょう量の場合には、この方式の分解能が最も優れており、分析用天びんなどの高分解能な測定が必要とされる超精密天びんなどでこの方式が使われています。この方式の場合の天びんでもウォーミングアップは必要です。

音叉式

新光電子株式会社が開発した日本初・世界初のセンサーです。音叉は楽器の調律に使われるほど、安定して一定の振動を発します。音叉振動子に取り付けられた圧電素子に電圧を加えると、電圧に応じて一定の周波数で振動します。音叉は加わった荷重に応じて振動数が変化するため、その変化を圧電素子で読み取り、それを利用して物体の質量を換算します。
この方式では、80g〜300kgの範囲でひょう量できます。フォースバランス式には及びませんが、原理的な誤差要因が少ないために、極めて高精度な値が出せます。その他にも、長期安定性に優れる、センサーの消費電力が小さい、耐ノイズ性が高い、またウォーミングアップも不要であるなど、従来の天びんと比較しても大きく性能が良くなっています。
余談ですが、この音叉式センサーは、ハワイにある光学式赤外線望遠鏡「すばる」に使われている反射鏡の歪みを抑えるための鏡面コントロールにも使われています。直径100kmの表面を±2mmの歪みに抑えるほどの超高精度だそうです。

機種選定の際に注目すべき項目

測定範囲

測定範囲、精度と価格

「分析用電子天びん」が天びんの中でもっとも高分解能な測定ができます。測定のセンサーには、フォースバランス式を採用する場合がほとんどです。もっとも精度の良いものでは、最小表示が1μgというものまであります。標準的な分析用電子天びんの精度は0.1mg程度です。ただしひょう量(測定できる最大質量)はそれほど大きくなく、100g〜200g程度になります。価格帯も高価で、10万円代以上になっています。
次に精度よく測定できるのが、「電子天びん」です。測定のセンサーには、音叉型やロードセル式が使われています。精度は最小表示が1mg〜1g程度で、ひょう量が小さいものは精度が良く、ひょう量が大きくなると精度が悪くなる傾向です。ひょう量範囲は数100g〜数10kgほどです。価格帯は、10万円前後で精度が高くなると高価になる傾向があります。
精度から見ると「電子天びん」の次に精度が低くなるのは「電子はかり」と呼ばれる製品です。測定のセンサーはほとんどの場合がロードセル式ですが、一部音叉式を採用しているものもあります。卓上で手軽に利用でき、精度をそれほど要求しない場合の安価で小型な製品が「電子はかり」には数多くあります。用途はかなり幅広く、一例を挙げると、「防爆構造」、「調剤用」、「取引証明用」、「個数計測用」、「土木試験用」、「ダイヤモンド(カラット)用」、「動物用」、「比重計」、「料理用」などがあります。精度は最小表示が0.1g〜1g程度、ひょう量は数100g〜数10kgです。価格帯は、数1000円〜数10万円と幅が広いですが、精度よく測定できるものほど高価になる傾向があります。
ここまでは最大でもひょう量が数10kg程度までの天びん・はかりですが、これより大きな質量を測定できるものを以下にご紹介します。
重量も体積も大きなものが測定できるはかりが、「電子台はかり」です。測定のセンサーはロードセルです。最小表示が数g〜50g程度のはかりが標準的ですが、ひょう量が大きくなるほど、最小表示も大きくなる傾向があります。ひょう量は数kg〜数t(トン)です。価格帯は標準的な台はかりでは10万円程度ですが、特殊な用途(動物用やトラックスケールなど)になると高価になる傾向があり、中には数100万円する台はかりもあります。
他にも、はかり単体ではなく、工場のラインなどに組み込まれたはかりというものもあり、これらも用途に応じて多種多様なはかりが存在しています。

ひょう量したいものの大きさ

天びん・はかりの秤量皿(秤量台)の上に、測定したい物体が載るかどうかも、機種選定の際に気をつけなくてはいけない事項です。

点検、校正

一般的に1年に1度(使用頻度が少ない場合は2年に1度)の周期で定期点検が必要となります。購入した会社やメーカーが、定期点検や校正に有償で応じてくれます。一般的な校正の場合は1万円〜数万円の範囲です。

メーカーについて

電子天びん・はかりを扱う非常に多くのメーカーや商社が国内外にあります。会社によって、「多種類を扱う」ところと、「特殊なものに特化」して扱っているところに分けられます。ここでは代表的な会社を「多種類を扱う会社」と「特殊用途品を扱う会社」とに分類してご紹介します。

多種類の天びん・はかりを扱うメーカーと商社

    「新光電子」
    精細な電子天びんから重量の大きいものを測れる台はかりなど、幅広い種類を扱います。うたい文句は「開発から製造までこだわりのMade in Japan」。製品の輸出も行っています。前述しましたが、「音叉式センサー」を開発したメーカーです。
    「島津製作所」
    言わずと知れた分析機器メーカーですが、分析天びん、電子天びん、台はかりなど、主に卓上型を扱っています。
    「エー・アンド・デイ」
    汎用電子天びん、分析用電子天びん、台はかり、クレーンスケールなど多様な種類を取り扱う国内メーカーです。
    「イシダ」
    日本国内で民間初のはかりメーカとして知られています。対面電子天びん、上皿はかり、電子防水型台はかり、電子質量台はかり、電子天びん、フロアースケールなどを取り扱っています。
    「大和製衡」
    デジタル台はかり、機械式台はかり、機械式上皿はかりなど大きい質量の計量を得意とする国内メーカーです。トラックスケールや工場ラインに組み込まれたはかりなども扱っています。
    「寺岡精工」
    電子はかり、電子軽量付システムなどを販売する国内メーカーです。対面販売スケール、産業用スケールなど、小売業界におけるはかりを主に手がけています。
    「アズワン」
    研究用機器機材、その他科学機器の販売をする商社です。卸でありながら、メーカー機能と小売機能を兼ね備えており、機器製造はしていませんが、修理などのメンテナンスをします。
    「エスコ」
    カタログ販売の商社です。コンパクトスケールなどの卓上はかりを主に扱っています。
    「オーハウスコーポレション」
    ラボ用天びん、産業用はかり、ラボ用機器などを扱うアメリカのメーカーであり商社です。高性能な天びんとはかりを包括的なラインアップで取り揃えています。白地に赤のデザインがおしゃれな印象を与えています。
    「メトラー・トレド」
    天びんとはかりの世界トップレベルのメーカーであり商社です。分析用電子天びん、電子天びん、ミクロ天びん、ウルトラミクロ天びん、ますコンパレータなどを扱っています。
    「ザルトリウス」
    バイオテクノロジーとメカトロニクス分野において最先端の研究機器とプロセス技術を提供するドイツのメーカーです。ラボ用天びん、組み込み用天びん、ペイント天秤などを扱っています。

特殊な天びん・はかりを扱うメーカーと商社

    「ドリテック」
    家庭用料理はかりや家庭用タイマー、電気ケトルなどを扱うメーカーです。シンプルなデザインでおしゃれな雰囲気です。
    「タニタ」
    「タニタ食堂」で有名な家庭用はかりやタイマー、血圧計などを扱うメーカーです。料理用はかりだけでなく、体脂肪率が測定できる高機能な体重計やベビースケールなどを扱っています。
    「アスカ」
    パーソナル&事務機器製品の開発、製造、販売を手掛けています。乗せるだけで郵便料金が表示されるはかりなど、郵便にまつわるはかりを扱っています。

様々な場面で使われる「天びん」と「はかり」

研究所
物体の質量を測定する機器に「天びん」と「はかり」があり、研究所や工場など様々な場面で使われています。今回はデジタルタイプの「天びん」と「はかり」である、「電子天びん」と「電子はかり」についてご紹介しました。計測に用いられているセンサーには、精度が高い順に「フォースバランス式」、「音叉式」、と「ロードセル式」という方式があり、センサーの精度に応じて、ひょう量範囲や最小表示の大きさが変わります。精度が高いとひょう量範囲が狭くなり、価格が高価になる傾向があります。電子天びん・はかりでひょう量できる範囲は、小さい値では1μgから、大きい値では数t(トン)です。また電子天びん・はかりを取り扱うメーカーや商社についても代表的な会社をご紹介しました。

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ライター紹介
ライタープロフィール
藤井暢子

小規模農業従事者、野菜ソムリエプロ、野菜栽培士。京都生まれ。大阪市立大学理学部物理学科卒業、京都教育大学大学院修了、大阪大学大学院理学研究科物理(単位取得後卒業)、2004年博士(理学)。大阪大学産業科学研究所勤務を経て、化学系の研究開発会社に8年間勤務後、2012年より農業者へ転身。実父とともに、自然農、自然栽培、無肥料、自家採種をキーワードに京都郊外で野菜を作り、地元カフェや地方家庭などへ提供している。物理と化学の研究経験をもとに、畑の研究を新しく展開するべく日々研鑽中。生物物理の研究者の夫、5歳の一人息子と同居。

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