今回は工業からちょっと離れて、畑に目線を向けてみようと思います。畑で計測器?と思われる方も多いかと思いますが、実は最近の近代化された農業の世界では様々な計測器が活躍の場を広げています。
今回はそんな農業の世界で活躍する計測器のうち、作物の育ちに大きく関係する土の硬さを計測する計器。「土壌硬度計」についてご紹介していきます。
土の硬さが作物にあったえる影響は、昔から指摘されていました。しかし、その硬さを数値で管理するためには土壌硬度計は不可欠な計測機器です。
実は奥深い農業の世界を裏で支える土壌硬度計について、様々な観点から詳しくご紹介していきます。
このページの目次
土の硬さと作物の関係
畑で作物を育てる際に、もっとも重要な要素はいったいどのような要素でしょうか?
日当たり?栄養素?水はけ?
畑での農業は実に複雑に様々な要因が重なり合っています。しかし、すべての要素に関係するたった一つの要素が存在します。それが畑の土の硬さです。
農業では昔から、畑は耕すものでした。電動農機具の普及以前は鍬などで耕していましたし、電動やエンジン式の農機具が発達した今でも、耕すという作業は欠かすことのできない大切な作業です。
畑を耕す目的は様々ですが、その目的のひとつに土壌を目的の硬さに整えるというのがあります。
昔から、硬すぎる土壌は水はけを著しく悪くし根腐れの原因になったり、反対に柔らかすぎる土壌は植物の根の張りを弱くし、干ばつや風雨に弱くなるといった経験則が農業には存在します。
その為、育てる植物や時期によって土壌の硬さを耕すという作業で調整していました。
その耕した土の硬さがどの植物にとって最適であるかは、ある意味機械加工の職人の領域と同じくのベテラン農家の経験則に委ねられてきました。
しかし、近年の農業の近代化に伴いこれまでの経験則に頼った管理ではなく、しっかりと数値で管理できる方法へと徐々に移行していく中で、活躍の機会を増したのが土壌硬度計です。
土壌硬度計とは?
それでは、そんな背景を伴って普及しつつある土壌硬度計とは一体どのような計器で、どのような仕組みを待っているのでしょうか。
次は土壌硬度計の仕組みや構造についてご紹介します。
土壌硬度計の仕組み
土壌硬度計と呼ばれる計測器の基本構造は、上の挿絵のとおり円対形状をした先端とそれにつながるスプリング、硬さを示す目盛りによって構成されています。
この方式は山中式硬度計と呼ばれていますが、現在販売されている多くの土壌硬度計はこの仕組みを有しています。
土壌硬度計はどのようにして土の硬さを測っているのか?
それでは、この土壌硬度計はどのようにして硬さを測っているのでしょうか?
まずは準備として、何もしていない(負荷のかかっていない)状態で、目盛りを0に合わせます。
そして、円錐部分を下にしてゆっくりと土に指していきます。そのままツバの部分が地表に接地するまで押し込みます。この時早く押してしまうと正確に計測できませんので、ゆっくりと下向きに押し下げてください。
押し下げていくと、土の硬さによって円錐部分が押され目盛りが上昇します。硬い土壌ほど目盛りは大きく動き、柔らかい度応では目盛りは小さくしか動きません。
正確な測定の為にも、複数回同じ作業を繰り返すことが大切です。
参考:https://www.youtube.com/watch?v=zV3-fYR2WHk
構造、仕組みともに簡素でであるためどこでも簡単に土壌の硬さを計測することができます。
土壌硬度計の欠点
そんな、土壌硬度計の最大の欠点は計測できる深さにあります。
土壌硬度計の円錐部分の大きさには限りがあり、どうしても地表に近い部分の硬度しか図ることが難しい構造となっています。円錐部分の長い土壌硬度計もありますが、それでも限界があります。
その為、ゴボウなどの地中に長く根をはる植物の場合には農耕機で畑を深く耕し、その位置の土壌硬度を測定、のちに上に重なる土の重さも考慮した土壌硬度を目指さなければなりません。
農業の必需品!土壌硬度計
最後に現在発売されている土壌硬度計をいくつかご紹介します。
デジタル式は、複数の箇所の把握に便利!
山中式の土壌硬度計にデジタルの機能併せ持ったタイプの土壌硬度計です。
計測の結果をデジタルで表示できるのはもちろん、メモリー機能を使えば前回との数値の比較や目標の硬さとの比較なども簡単に確認することができます。
また、バッテリー式ですのでアナログ方式のものと同様にどこでも簡単に土壌硬度を計測できます。
欠点を克服?深い場所まで計測できる土壌硬度計!
前述の欠点であった深い位置の土壌硬度を計測できるタイプの土壌硬度計です。押し込んでいく過程で土壌お変化による硬度の変化があった場合でも、どの深さで土壌が変化していたかをデジタルメモリーで知ることができます。
ただ、慣れるまでは地中にまっすぐ差し込むことが難しい側面もあり、正確な硬度の測定にはある程度の経験が必要となります。