デジタルマイクロスコープについて

「顕微鏡」のことを英語でいうと「マイクロスコープ」ですが、測定器としての「マイクロスコープ」とは、接眼レンズの部分がデジタルカメラであり、モニターで拡大像を観ることができる光学顕微鏡のことを意味します。このような特徴を持つ「マイクロスコープ」のことを、単なる「顕微鏡」と区別するために、ここでは「デジタルマイクロスコープ」と呼ぶことにします。製品によっては「デジタル顕微鏡」と呼ばれる場合もあります。

この記事ではまず、デジタルマイクロスコープの「原理的な利点」と「作業性における利点」についてご紹介します。そして機器選定の際に最も重要になってくる「倍率」について述べた後、各メーカーが取り扱うデジタルマイクロスコープの特色についてご紹介したいと思います。

原理的な利点

光学顕微鏡の機能と比較して、デジタルマイクロスコープには、次のような原理的な利点があると言われています。

被写界深度が深い

「被写界深度」とは「ピントが合う幅」のことです。一般的な光学顕微鏡では、ある高さでピントを合わせるとそれ以外の高さの部分ではピントが合わなくなります。しかしピントが合う部分を連続的に移動させて複数の画像を取得して、デジタル処理により1枚の画像に合成すると、全ての高さにおいてピントがあった「被写界深度が深い」画像を得ることができます。深度合成技術が非常に進んでいるため、モニターでは複数の画像を合成しているのがわからないほど瞬時に、全焦点画像をリアルタイムに表示できるのです。

この合成画像技術は、一般的なデジタルカメラでも何枚かの写真を撮ってほぼ瞬時に合成して、例えば逆光でも人の顔と風景の両方がはっきりとうつる写真が得られる技術と基本的には同じです。これは「凹凸のある観察物でもピント合わせが簡単で、すばやく全体を観察できる」という、光学顕微鏡とは大きく異なるデジタルマイクロスコープの利点です。

観察距離が長い

「観察距離」は「作動距離」や「ワーキングディスタンス(WD)」とも言います。対物レンズ前面から、観察対象にピントが合うまでの距離のことです。観察距離が長いほど被写界深度が深くなるという性質があり、デジタルマイクロスコープでは前述した理由から被写界深度が深いため、観察距離も長くなります。この特徴から、凹凸のある観察物でも奥まった部分を観察できますし、またレンズを傾けて観察する場合にも、ズームレンズが観察物やステージ面にぶつかることなく観察することができます。

ズームレンズを採用

一般的な光学顕微鏡で使われているレンズは固定倍率レンズです。そのため倍率の変更は、レボルバに取り付けられた複数個のレンズを回転させて行います。この方式では、レンズ倍率を変更するたびに視野合わせやピント調整が必要になります。

他方ズームレンズは、焦点距離をある範囲で自由に変更することにより、広角レンズや望遠レンズにもなります。サイズが大きくて重く、価格も高価であるという短所もあります。しかしズームリングを回転するだけでレンズ倍率を変更でき、固定倍率レンズを何個も必要としないので結局は安価になるという長所が非常に優れているため、ほとんどのデジタルマイクロスコープにズームレンズが採用されています。

Leica DMS300

Leica DMS300

作業性における利点

企業の研究・開発、工場における検査や教育現場などにおいて、多種多様な顕微鏡を使った作業が行われています。光学顕微鏡と比べて、より便利で汎用性の高いデジタルマイクロスコープを使う利点として、多くのことがらが挙げられますが、ここではその一部分をご紹介します。

・拡大像がモニタに映し出されるために複数人で観察できて情報共有がはかりやすい
・接眼レンズを覗いて観察するよりも観察者に負担がかかりにくいため、一度に多くのサンプルを観察・検査できる
・計測やレポートも作成できるソフトが充実しているため、誰でも作業することができる

倍率

多くの種類のデジタルマイクロスコープがありますが、その中でどの機種を選定するかを考える上で「どこまで拡大できるのか」、「どのくらい鮮明な像が得られるのか」ということが問題になります。ここでは、光学顕微鏡の倍率とデジタルマイクロスコープの倍率についてご紹介しつつ、「倍率」について考えてみます。

光学顕微鏡の倍率

光学顕微鏡の倍率は、接眼レンズの倍率と対物レンズの掛け算で求めることができます。

「光学顕微鏡の倍率」
=「接眼レンズの倍率」×「対物レンズの倍率」

これはレンズ性能で決まる倍率なので「光学倍率」とも言われます。

「光学倍率」は高ければ高いほど、観察物の像が拡大できることになりますが、拡大すればするほど「分解能」が下がり、得られる像が暗くなります。分解能とは、観察物の細部を正しく識別できる範囲のことです。そのため分解能の良い像を得るためには、光量が必要になります。対物レンズがどれだけ光を集められるかは対物レンズの開口数によって決まります。レンズの開口数が大きいとレンズを通る光量が増えるため、分解能が上がり、高倍率でも明るくクリアな像が得られるようになります。

顕微鏡の性能は、光学倍率、分解能や開口数以外にも様々な指標によって決まります。機器によって様々な特徴や工夫もありますので、実際に顕微鏡を覗いてみて自分の目的に合うものを選定する必要があります。

次にデジタルマイクロスコープの倍率は、

「対物レンズ」→「デジタルカメラ」→「モニター」

という順で観察物の映像が伝えられるため、

(デジタルマイクロスコープの倍率)
=(対物レンズの倍率)×(デジタルカメラの倍率)×(モニター倍率)

となります。ここで対物レンズとデジタルカメラにはレンズが使用されているため、最初の2項は光学倍率に相当します。

(対物レンズの倍率)×(デジタルカメラの倍率)
=(光学倍率)

そのため、

(デジタルマイクロスコープの倍率)
=(光学倍率)×(モニターの倍率)

と書かれている場合が多くあります。ここで

(モニターの倍率)
=(モニターのインチ数×25.4mm)/(撮像素子サイズ)

です。デジタルマイクロスコープの機器ごとに、モニターのインチ数と撮像素子サイズは明記されているはずですので、レンズに適したカメラとモニターを使用しなければなりません。

モニターで像を拡大することは、デジタルカメラにおける「デジタルズーム」と同様のことで、あくまでも光学ズームの補助的な役割にしかなりません。またこの式から、モニターのインチ数を大きくすれば、モニターの倍率が大きくなることがわかりますが、モニターで像を大きくしても、鮮明な像が得られるとは限りません。像が鮮明であるかどうか、言い換えれば、像に含まれる情報が細部まであるかどうかは、レンズ性能や開口数そして機器全体の光学性能で決まるからです。

カメラで有名なメーカー「ライカ」では「20000倍の倍率は、デジタルマイクロスコープで本当に有効か?」という技術レポートを発表しています。(参考URL:https://www.leica-microsystems.com/jp/会社情報/新着情報/デジタル顕微鏡による倍率)これによると、デジタルマイクロスコープの倍率が1800倍を超えると、表示される画像が大きくなっても解像度が伴わなくなるため「空倍率」といえるそうです。

国内メーカーで製造されているデジタルマイクロスコープには、さすがに数万倍の倍率をうたうものはありませんが、キーエンスからは2500倍や5000倍、ハイロックスからは7000倍の倍率のものが発売されています。これらのカタログには2500倍に拡大された毛髪の表面が非常に綺麗に撮影されているのもあります。最新モデルで、先端技術を駆使されたレンズを用い、熟練した観察技術を持つメーカーだからこそ実現できたことであるとも思われます。

メーカーについて

安価なものから高価なものまで、そして日常生活での利用から専門的な利用まで、デジタルマイクロスコープには多種多様な種類が存在します。ここでは各メーカーが取り扱うデジタルマイクロスコープを使用と価格に関して「本格派」、「本格派と一般向けの中間」と「一般向け」の3通りに分類して、会社の特色や、デジタルマイクロスコープの最高倍率、価格などについてご紹介します。

本格派を扱うメーカー

価格帯100万円〜数100万円

「キーエンス」
高機能かつユーザーに優しいデジタルマイクロスコープを取り扱うメーカーです。低倍率から高倍率(最高5000倍)なズームレンズを数多く取り揃えています。

「ハイロックス」
2種類のオールインワンモデルが最高倍率7000倍で、1種類の機能拡張モデルが最高倍率2500倍で取り扱いをしています。

「ライカ」
主に4機種があります。品質検査や各種分析用として、最高倍率が4740倍の機種から、100〜300倍の機種などです。中にはフルハイビジョン対応のものもあります。いずれも高品質で多機能な機器を取り扱っています。

本格派と一般向けの中間的な機器を扱うメーカー

価格帯10万円〜100万円以下

「スカラ」
産業、美容、医療、放送や学校教育分野で使用できるデジタルマイクロスコープを取り扱うユニークな会社です。PCだけでなくTVに接続できるものや、Wi-Fi接続によりスマホやタブレットにも表示できるものを取り扱います。倍率は100〜400倍で、価格帯は10万円程度から30万円程度です。

「ホーザン」
検視用のデジタルマイクロスコープを取り扱っています。最高倍率が755倍で、価格は10万円程度から30万円の範囲内です。

「アームスシステム」
高性能・低価格を追及した顕微鏡光学機器を幅広く取り扱うメーカーです。自社製品以外でも取り扱ってくれます。最高倍率は500倍程度で、価格は10〜30万円台です。

「朝日光学機製作所」
純国産光学顕微鏡メーカーで、マイクロスコープや工業用内視鏡を取り扱っています。販売されているデジタルマイクロスコープは1種類で、最高倍率が500倍の機種が63万円というリーズナブルな価格で販売されています。3D形状測定など様々な計測機能があります。

一般向け機器を扱うメーカー

価格帯10万円以下

「3Rソリューション」
福岡に本社を置く自社特許商品の製造販売会社です。多種多様なデジタルマイクロスコープを取り扱っています。例えば、Wi-Fi接続できる無線式が200〜600倍で2〜3万円台で、指や頭皮の血流を観察できる有線式も200〜600倍で1〜3万円台、手のひらサイズの携帯式が800倍で1〜3万円台などがあります。

「アルファーミラージュ株式会社」
宝石鑑別機器及び関連器材の製作・輸出入・国内卸を手がける会社です。宝石鑑別用の高機能マイクロスコープと周辺機器を合わせて35000円で販売しています。

「ケニス株式会社」
研究機関向けの理化学機器や学校教育用の理科実験教材の開発提案、通信販売を行っている会社です。理科の教科書に沿った実験機器や顕微鏡などを取り揃えています。

「新潟精機株式会社」
オリジナルの機器を開発している会社です。取り扱い機種は多くなく、USBマイクロスコープや液晶モニタ付きマイクロスコープを4万円代で販売しています。

デジタルマイクロスコープの原理的な利点

デジタルマイクロスコープの原理的な利点
光学顕微鏡における接眼レンズをデジタルカメラに変えて、モニターで観察像を見ることができるものを「デジタルマイクロスコープ(デジタル顕微鏡)」といいます。光学顕微鏡と比較して、「被写界深度が深い」、「動作距離が長い」とか「対物レンズ部分にズームレンズを採用している」ことがデジタルマイクロスコープの原理的な利点です。また作業者に対しては、疲れにくく使いやすいというやさしい機能があります。デジタルマイクロスコープの機種選定をする際には、倍率や分解能などが気になるところですが、実際には観察物を実際に拡大して見てみないと、光学性能に関しては推し量ることが難しい面があります。最後に、デジタルマイクロスコープを取り扱うメーカーの特色や倍率、価格帯についてご紹介しました。

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ライター紹介
ライタープロフィール
藤井暢子

小規模農業従事者、野菜ソムリエプロ、野菜栽培士。京都生まれ。大阪市立大学理学部物理学科卒業、京都教育大学大学院修了、大阪大学大学院理学研究科物理(単位取得後卒業)、2004年博士(理学)。大阪大学産業科学研究所勤務を経て、化学系の研究開発会社に8年間勤務後、2012年より農業者へ転身。実父とともに、自然農、自然栽培、無肥料、自家採種をキーワードに京都郊外で野菜を作り、地元カフェや地方家庭などへ提供している。物理と化学の研究経験をもとに、畑の研究を新しく展開するべく日々研鑽中。生物物理の研究者の夫、5歳の一人息子と同居。

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