旋盤は、金属を加工する機械です。加工する金属を高速回転させて、そこに刃を当てて削ることで、部品などの形にしていきます。
旋盤は、金属加工のなかでは「機械加工」のなかの「除去加工」に属します。
この記事では、旋盤で金属を加工するメリットとデメリットについて、鋳造と鍛造と比較しながら解説します。
なお、木材やプラスチックなど、金属以外の物質を加工するときにも旋盤を使いますが、ここでは金属加工に焦点を当てます。
このページの目次
回して刃を押し当てて削る
旋盤の仕組みを最もシンプルに理解するには、「チャック」「ワーク」「バイト」の3つの用語を覚えておけば十分です。
まず、加工する材料「ワーク」を、旋盤の「チャック」という部品に取り付け、チャックとワークを一緒に回転させます。
次に、旋盤に取り付けてある「バイト」という刃を、ワークに徐々に近づけて接触させます。
バイトは、ワークより硬い金属を使うので、バイトと回転しているワークが接触したとき、ワークだけが削れます。
バイトをワークに当てる場所を調節することで、ワークが図面通りの形に仕上がっていきます。
旋盤でつくることができる形
旋盤でつくることができる製品は、必ずワークとチャックの回転軸に対して対称の形になります。
旋盤は、ワークの表面を削ったり、内側を掘ったりすることができます。
金属加工のなかの機械加工のなかの除去加工としての旋盤
旋盤を使った加工のことを切削といい、切削はさまざまな金属加工の1つです。
切削は旋盤という機械を使っているので、機械加工になります。
そして旋盤を使った加工では、ワークの余計な部分を取り去っているので、除去加工になります。
金属加工でよく知られている鋳造と鍛造と比較してみましょう。
鋳造は、鋳型をつくり、そこに溶かした金属を流し込んで形をつくります。
鍛造は、金型に材料を据えて、その上からプレス機で押しつぶして形をつくります。
鋳造も鍛造も機械を使うので、旋盤と同じく機械加工です。
ただ、鋳造と鍛造は、材料の金属の元の形を完全に崩してから新たに形をつくるので、成形加工になります。
旋盤のメリットとデメリット
旋盤のメリットとデメリットを考えてみましょう。
メリットその1:動かした分だけ削れるので正確かつ簡単
旋盤のメリットは、圧倒的に正確な形を、簡単につくれることです。優れた職人が高性能の旋盤を使えば、「マイクロメートル」単位の加工が可能です。1マイクロメートルは1,000分の1ミリメートルです。
鋳造でつくる製品の精度は、鋳型の精度に左右されてしまいます。さらに、溶けた金属が固まる過程で、何%縮まるか計算しておかないと、狙いとおりの精度が出ません。
鍛造は、材料の金属を高圧で押しつけるので、どれくらいの圧力でどれくらい形が変わるのかを把握しておかなければなりません。
しかし旋盤は、バイトを1マイクロメートル動かせば、材料もきっちり1マイクロメートルだけ削られます。
メリットその2:機械がシンプル、1人で作業できる
旋盤の機械は高い精度が求められますが、仕組みはシンプルです。しかも1人で作業できます。
鋳造は、鋳型をつくらなければなりませんし、金属を溶かす装置も必要です。そして、溶けた金属はとても危険です。作業は複数人必要です。
鍛造も金型が必要です。また、材料の金属の形を変えるほどの圧力を加えるには、「トン」規模のプレス機が必要になり、やはり危険です。
デメリットその1:形の自由度が低い
旋盤のデメリットは、製品の形の自由度が低いことです。回転軸に対称の製品しかつくることができません。また、材料の大きさは、チャックがつかめる範囲に限定されます。巨大な製品や微小な製品は、旋盤は苦手です。
製品の形の自由度が最も高いのは鋳造です。複雑な形も、小さな製品も得意です。
鍛造は、鋳造ほどではありませんが、それでも旋盤よりは複雑な形に対応できます。
デメリットその2:1個1個削る必要がある
旋盤は、材料を1個1個削っていかなければなりません。手間がかかるので、コストと時間がかかり、加工した製品を安く販売することができません。
鋳造は、複数個の製品を並べた鋳型をつくれば、その数だけ一気につくることができます。
鍛造は、プレス機のスピードを上げれば、例えば1秒で1個つくることもできます。
高い精度が要らず、単価が安い製品は、例え形状が旋盤向けだとしても、鋳造や鍛造でつくることがあります。
まとめ~単純ゆえの300年の実績
旋盤は1700年代には、ロシアやイギリスで使われていました。最古級の旋盤は、ワーク(材料)を回転させて、それに手持ちのバイト(刃)を当てるという仕組みでした。
ただ、陶器をつくる「ろくろ」も旋盤と考えると、その起源はさらに古くなります。
「そういわれてみれば」ではありますが、回っているものを削ると形が整う、という原理は、誰でも直感的に理解できます。
シンプルな加工法だけに、300年近くも受け継がれてきたのでしょう。