太陽光発電所を運営するには「大量の測定」が必要

太陽光発電所を運営するには「大量の測定」が必要

太陽光発電は、とても単純な仕組みにみえます。広い敷地に無数に並ぶ太陽光パネルや、住宅の屋根の上の太陽光パネルに日光が燦々(さんさん)と照りつければ、いくらでも発電しそうな感じがします。
しかし、日差しのよい場所に太陽光パネルを置くだけでよければ、もっと普及しているはずです。そのようになっていないのは、太陽光発電システム全体がとても複雑だからです。そのため「大量の測定」が必要になります。
太陽光発電にどのような測定があるのか紹介します。

太陽光発電の仕組み

太陽光発電には、1)電気をつくる仕組みは超単純、2)電気を使う仕組みが超複雑、という2つの性質があります。

電気をつくる仕組みは超単純

太陽光発電の電気をつくる仕組みを知ると、その単純さに驚くでしょう。太陽光パネルを含む太陽電池モジュールという機器に太陽光を当てると発電します。それだけです。
太陽電池モジュールの中身は、N型半導体とP型半導体という2つのシリコン半導体が重なっているだけです。
N型半導体とP型半導体には、両者をくっつけて光を当てると、Nのほうに電子(マイナス)が溜まり、Pのほうに正孔(プラス)がたまる性質があります。プラスとマイナスが生じると、電気が流れます。つまり発電したことになります。

火力発電はこうは行きません。海外で原油を採掘して、それを日本に運び、精製して重油をつくり、それを燃やして水蒸気をつくり、それでタービンを回して電気を起こし、送電線で各家庭に運ばなければなりません。

太陽光発電の仕組みを使った小型扇風機が1,000円以下で売られているのは、電気をつくる仕組みが超単純だからです。

電気を使う仕組みが超複雑

小さな扇風機を回すくらいであれば複雑になることはありませんが、太陽光発電でつくった電気を家庭の電力として使おうとすると、途端に複雑になります。

住宅の屋根に置いた太陽光パネルがつくる電気は直流なので、これを家庭で使える交流にしなければなりません。それには「パワーコンディショナー」という機械が必要です。
太陽光発電には、昼間は大量に電気をつくり、夜間はまったく電気をつくることができないという性質があります。したがって、昼間につくった電気を溜めておく「蓄電池」が必要になります。
それでも昼間につくる電気が余ってしまうので、それを電力会社に売ることになります。そのためには「分電盤」や「売電・買電電力量計」が必要になります。

まだあります。もし雨や曇りの日が続き、蓄電池のなかの電気がゼロになったら電気が使えなくなってしまうので、太陽光パネルを屋根にのせている家庭でも、電力会社から電気を買い続けなければなりません。したがって、「電力会社から電気を送ってもらうシステム全体」はそのままにしておかなければなりません。

上記で紹介した機器だけでもこれだけになります。

  • 太陽光パネルなどの太陽光発電システム
  • パワーコンディショナー
  • 蓄電池
  • 分電盤
  • 売電・買電電力量計
  • 電力会社から電気を送ってもらうシステム

これらの機械が連動しないと、太陽光発電による電気は使えません。これらの機械はひとつでも故障させることができないので、「大量の測定」を行って故障する前に対策を講じる必要があるのです。

大量の測定が必要なのは改正FIT法のせい?

その他にも、太陽光発電の測定を増やしている要因があります。それは固定価格買取制度、通称改正FIT法です。
FIT法が定めた固定価格買取制度とは、太陽光や風力などの再生可能エネルギーでつくった電気を、電力会社が国が定めた価格で買い取ることを義務付けた仕組みです。
再生可能エネルギーを推進するための制度ですが、さまざまな問題を生むことになりました。

さまざまな問題のうち「測定に関する問題」をあえてひとつだけ取り上げると、太陽光発電の事業者によるずさんな運営です。
家庭用の太陽光発電ですら、電気を使う仕組みが超複雑になっているので、ビジネス用の大規模太陽光発電は、さらに複雑です。そのためノウハウがない企業の太陽光発電は、運営がいい加減になっていました。
それで2017年に施行された改正FIT法では、事業者に太陽光発電所を適切に運営するよう求めました。

適切な運営をするためには、少なくとも次のような策を講じなければなりません。

  • 適切な保守点検と維持管理、メンテナンス
  • 事故が発生したときの対応方針の作成とその実施体制づくり
  • 発電電力の低下や運転停止を防止する策の構築
  • 地域住民や周辺環境に悪影響を与えない策の構築

これらをクリアするには、超複雑な太陽光発電システムを小まめに測定して、異常がないか確認しなければなりません。測定しなければならない項目、これほどあります。

  • 発電量モニタリング・パワーコンディショナーの出力計測・ストリング監視・発電量低下の監視・機器不具合の監視・定期検査・目視検査など

太陽光発電の現場に大量の測定機器が投入されるのは当然です。

太陽光パネル

太陽光発電で必要な測定と測定機器

太陽光発電で使われている測定機器と、その用途を紹介します。

ストリングチェッカーとパネルチェッカー

ストリングチェッカーは、ストリングが断線していないかチェックする機器です。
大規模太陽光発電所には大量の太陽光パネルが並んでいますが、太陽光パネルは一定枚数ごとに「1ブロック」を形成しています。そのブロックのことをストリングといいます。
さらにストリングをつないだ「より大きなブロック」をアレイといいます。
複数の太陽光パネルでストリングを形成し、複数のストリングでアレイを形成しているわけです。

ストリングを形成している太陽光パネルどうしが断線していると、特定の太陽光パネルが発電に貢献できなくなり出力が落ちます。
ストリングチェッカーは微弱な検出用信号を流し、開放電圧と抵抗値を測定します。その測定値で異常がわかる仕組みです。

ストリングの異常がわかると、そのストリングを構成しているいずれかの太陽光パネルに異常があることが推測できます。
そこで次にパネルチェッカーを使って故障している太陽光パネルを特定します。
パネルチェッカーにはセンサーが搭載されていて、そのセンサーを太陽光パネルの表面に当てると電流の有無がわかります。電流が流れていない太陽光パネルを交換すれば正常に戻ります。

日射計

日射計は、太陽光発電のエネルギー源である日射量を計測する機器です。日射量がわかると、発電量を推測することができます。例えば、十分な日射量を確保できているのに発電量が低下していれば、システムに異常が起きていることがわかります。

また日射量を計測することによって、その太陽光発電システムの発電性能がわかります。

サーモグラフィー測定器

サーモグラフィー測定器は、物体の表面温度を赤や青などの色で可視化する装置です。サーモグラフィー測定器を人体に当てると、手足が冷たくなっていることがわかったりします。

太陽光発電では、サーモグラフィー測定器をホットスポット探しに使います。
ホットスポットとは、太陽光発電システムのなかの温度が異常に上昇している地点のことです。太陽光パネルに障害物が付着すると、それが抵抗になり発熱します。それをサーモグラフィー測定器でみつけるわけです。
ホットスポットは発電効率を著しく低下させるので、すぐに障害物を除去しなければなりません。

電圧測定器

電圧測定器は、太陽光発電システムが、メーカーの規格とおりに電圧を発生しているか確認する機器です。例えば、メーカーの規格では1,000Vを発生することになっているのに、電圧測定器で200Vしか確認できなければ、異常が起きていると推測することができます。

I-Vチェッカー

太陽光パネルの電流・電圧特性のことを「I-Vカーブ」といいます。IはIntensity of Currentの頭文字で電流という意味です。VはVoltageで電圧のことです。
I-Vチェッカーを使うと、太陽光発電の機器を分解しなくても電流と電圧を測定することができます。
I-Vチェックはストリングごとに行います。

パワーコンディショナー評価テスター

パワーコンディショナーは、太陽光発電がつくった直流電気を家庭で使える交流電気に変える機器です。またパワーコンディショナーには電圧を一定に保つコンバータ機能も搭載されています。
パワーコンディショナー評価テスターは「発電量測定器」とも呼ばれ、パワーコンディショナーの入出力を評価したり、電力の品質を測定したりします。

耐圧試験器

耐圧試験器は、高出力の電圧を太陽光パネルにかける機械です。これにより太陽光パネルがどの程度の電圧まで耐えられるかがわかります。
太陽光パネルは常に直射日光にさらされているので、劣化します。太陽光パネルの劣化は発電量の低下を招きます。
例えばメーカー規格が100Vの太陽光パネルに100Vの電圧をかけ、規定の電流が流れればその太陽光パネルはまだ使うことができます。しかし規定の電流以下しか流れなければ太陽光パネルを交換しなければなりません。

売電・買電電力量計

太陽光パネルを設置していない普通の住宅には、電力会社から購入する電気の量を計測する買電電力量計があります。買電電力量計は「電力会社→住宅」の流れの電気を計測しています。これを単に電力量計と呼ぶこともあります。

そして太陽光パネルを設置した住宅は、太陽光発電システムでつくった電気を電力会社に売ることになるので、「住宅→電力会社」の流れの電気を計測する必要があります。これが売電電力量計です。これも電力量計ですが、買電電力量計としての電力量計と区別して売電メーターと呼ぶこともあります。

まとめ~不安定だから測定が必要

太陽光発電は未来の電気と考えられています。しかしなかなか普及しないのは「不安定」だからです。
「お天道様次第」という意味でも不安定ですが、エネルギー政策も不安定です。しかし電気は安定的に供給しなければなりません。
不安定なものを安定的に動かすには「大量の測定」を投入して、異常があったらすぐに直す体制を維持する必要があります。

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ライター紹介
ライタープロフィール
アサオカミツヒサ

フリーライター、ライティング事務所office Howardsend代表。北海道大学法学部を卒業後、鉄鋼メーカー、マスコミ、病院広報などを経て2017年独立。取材した分野は、地方政治、地方経済、過疎化、ワーキングプアなど。現在の執筆領域はIoT、AI、産業一般、人事制度、金融、最新抗がん剤、生活習慣病治療など。趣味はクルマとバイクと登山。北海道釧路市在住。

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