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概要
衛星通信、電話回線のマイクロ波を用いる通信放送の研究、準マイクロ波帯・ミリ波帯を利用した無線システムの実用化研究や実用化には周波数を正確に測定する技術が必要です。
従来、この周波数帯における測定には周波数コンバータ、置換発振器などが用いられてきましたが、これらの測定方法はいずれも取扱いが難しく、同調をとったり計算したりして周波数を求める必要がありました。
これに対しアドバンテストでは、測定方式を従来のTRAHET方式からマイクロプロセッサを使用したデジタルTRAHET方式にすることよって
1Hz分解能/1秒ゲートという高い能力と、単に測定するだけでなく測定結果のオフセットや標準偏差、百万分率、最大値、最小値などの各種演算やデジタル・コンパレータ、さらに積算計数、パルス変調波のキャリア周波数測定なども可能になります。
(上図:セレクションガイド)
主な機能
マイクロ波帯・ミリ波帯までの測定が可能
周波数測定範囲は、
R5372では10mHz~18GHz
R5373は10mHz~ 27GHz
と、一台で衛星放送や衛星通信を始めとし、無線機のパイロット信号などの測定ができます。
レシプロカル方式採用で高分解能測定
A入力の10mHz~10M Hzモードは周期測定値から周波数を求めるレシプロカル方式を採用。短かい計数時間で高分解能が得られます。
したがってパルス変調波のパルス幅やパルス繰り返し周波数の高分解能測定が可能となります。
特に測定操作は、必要とする分解能に設定するだけで自動的に表示桁数・計数時間・周期数を選択して測定するため極めて簡単です。
マイクロ波周波数測定技術-デジタルTRAHET方式
デジタルTRAHET方式は、比較的高感度測定が可能なトランスファ変換方式と高分解能測定が可能なヘテロダイン方式の利点をいかし、コントロール系にマイクロプロセッサを使用することによってコストパフォーマンスを飛躍的に向上させます。
500M Hz~ 18GH(z R5372)、~27GH(z R5373)の信号は、
デジタルTRAHET方式によるヘテロダイン変換後、直接計数されるため1Hz分解能を1秒で得られます。
広いFM許容範囲
マイクロ波キャリア信号のほとんどはノイズや寄生FM によってFM変調されていることから、周波数測定においてはFM許容度が広いことが要求されています。
手動測定においては、
1.4GHz以上の信号に対して±125M Hz以上、
500M Hz~1.4GHzにおいて±25M Hz です。
また、自動測定においては最悪でも10M Hzp-pです。
演算機能やデジタル・コンパレータを標準装備
R5372/5373はマイクロプロセッサを内蔵していますので、単に測定系の制御に使用するだけでなく、より使い易い工夫や測定結果の各種演算による用途の拡大など、最大限に利用できます。
またこれらの演算機能を組み合わせた移動差値表示、スケーリング、
8桁×8桁の四則演算、A・B入力やB・C入力測定値間の演算表示も可能。
キーの設定 | 説 明 |
MAX | 最大値ホールド |
MIN | 最小値ホールド |
Δ F | 偏移(デビエーション,最大値-最小値) |
COMP | デジタル・コンパレート(GO-NO・GO判定) |
AVG | アベレージング(サンプル数101~104) |
δ | 標準偏差 |
ACQ | 再捕獲モード |
TR | TR4110シリーズのマーカ点周波数測定 |
MANL | 捕獲動作のマニュアル・モード |
PPM | 百万分率 |
TOTA | A入力積算計数 |
CLR-KB | クリア・キーボード |
×,÷,OFS | 加減乗除算表示 |
FM偏移量の測定が簡単
TV中継装置のFPUやSTLの試験には、送信出力・送信周波数のほかにFM偏移量の測定も必要となります。これはΔFモードを使用することによってFM 変調波の偏移量が簡単に測定できます。
また外部トリガ信号によっても測定できます。
中継局(STLやFPU)のFM偏移量の測定
R5372/5373では、豊富な演算機能によって簡単にFM 偏移量の測定ができます。
外部信号に同期してゲートが開くように接続、ΔF モードに設定します。
後はディレイつまみを廻すだけで自動的に測定開始点からの最大値と最小値を求め、内部で演算をした後その差を表示します。
また変調信号の任意振幅点に同期させた外部スタート信号(1μs以上)を用いることにより、FM変調波などの信号において変調信号の振幅に対する周波数変化を測定できます。
IFオフセット表示による無線機の周波数測定
R5372/5373のIFオフセット表示機能を用いて無線機の受信周波数測定ができます。
操作はヘテロダイン受信機のIF周波数をオフセット周波数としてキー・ボードより入力。ローカル周波数を測定することによって受信周波数を表示します。
オフセット値はMHz単位で0.1Hzまでの全桁にわたって入力することができます。
また受信周波数よりローカル周波数が高いときはマイナスのオフセット値を入力することもできます。
電子レンジ用マグネトロンの発振周波数測定
電子レンジ用マグネトロンは通常電源周波数に同期した断続発振であるため従来の周波数カウンタでは測定することが困難です。
R5372/5373は電源同期モードがありますので、外部機器を必要とせずに確実に同期させ、発振周波数を測定することができます。
またこの時ディレイつまみを調整することによって発振周波数のプロフィル測定をすることもできます。
性能
入力 | INPUT A | INPUT B | |
周波数測定範囲 | 10mHz~10MHz(DC結合) | 10MHz~550MHz | 500MHz~18GHz(R5372) |
10Hz~10MHz(AC結合) | 500MHz~27GHz(R5373) | ||
入力インピーダンス | 約1MΩ//60pF以下 | 約50Ω | 約50Ω |
入力感度 | 25mVrms | 25mVrms | -20dBm(500MHz~18GHz) |
-15dBm(18GHz~27GHz) | |||
入力アッテネータ | 0dB,20dB | ANS | AUTO,20dB |
測定最大入力 | 500mVrms/ATT.0dB | 500mVrms/ANS OFF | 0dBm/ATT.AUTO |
5Vrms/ATT.20dB | 5Vrms/ANS ON | +10dBm/ATT.20dB | |
破壊入力 | 6Vrms(1MHz~10MHz) | 6Vrms | +10dBm/ATT.AUTO +20dBm/ATT.20dB |
10Vrms(400Hz~1MHz) | |||
100Vrms(DC~400Hz) | |||
入力結合モード | DCおよびAC | AC | AC |
トリガ・レベル | 約-1V~1V連続可変 (-10V~+10V/ATT.20dBのとき) |
– | – |
分解能/計測時間 | 図参照 | 10MHz/0.1μs~0.1Hz/10sデケード切換 | |
測定確度 | ±(トリガ誤差*1/測定周期数)±1カウント ±基準時間確度(測定周期数は図参照) |
±1カウント±基準時間確度 | ±1カウント±基準時間確度±残留安定度 (残留安定度;1/10×測定周波数〔GHz〕カウントrms) |
測定方式 | レシプロカル方式 | 直接計数方式 | デジタルTRAHET方式による ヘテロダイン変換後直接計数 |
入力コネクタ | BNC | N型(R5372) SMA型(N型変換付)(R5373) |
パルス変調波キャリア周波数測定(MANUALモードで測定)
測定範囲 | 100MHz~550MHz/INPUT A |
500MHz~18GHz/INPUT B(R5372) | |
500MHz~27GHz/INPUT B(R5373) | |
パルス幅 | 最小0.5μs |
パルス繰返し周波数(fR) | 10Hz~5MHz |
分解能 | 0.1Hz~10MHzまでディケード値で設定(1/ゲート時間) ただし分解能の設定(ゲート時間)は被測定パルス変調波のパルス幅に0.4μs加えた値以上にすることが必要 |
測定確度 | ±1カウント±基準時間確度 |
単位表示 | Hz,kHz,MHz,GHz |
積算計数 | (INPUT A 10mHz~10MHzバンド) |
計数範囲 | DC~10MHz |
計数容量 | 0~9,999,999,999 |
基準時間
・基準時間安定度
標準 | オプション21 | オプション22 | オプション23 | |
エージング・レート | 2×10-8/日 | 5×10-9/日 | 2×10-9/日 | 5×10-10/日 |
8×10-8/月 | 5×10-8/月 | 2×10-8/月 | 1×10-8/月 | |
長期安定度 | 1×10-7/年 | 8×10-8/年 | 5×10-8/年 | 2×10-8/年 |
温度安定度(+25℃±25℃) | ±5×10- | ±5×10-8 | ±1×10-8 | ±5×10-9 |
基準時間出力
周波数10MHz
電圧1Vp-p以上
出力インピーダンス約50Ω
BNCコネクタ
外部基準周波数入力
1MHz、2MHz、2.5MHz、5MHz、10MHz
電圧1Vp-p~10Vp-p
入力インピーダンス約500Ω
BNCコネクタ
演算機能
- デジタル・コンパレート機能(キーボードより上下限設定)
- 最大値ホールド,最小値ホールド
- 偏移測定(デビエーション 最大値-最小値)
- 標準偏差
- アベレージング
- 百万分率
- オフセット表示,ドリフト表示
- スケーリング表示
- A,B 2入力自動測定による加減算表示
- 高調波周波数表示
- 四則演算
仕様
一般仕様
測定モード(INPUTBおよびCの時) | |
AUTO | 捕獲時間(リセットからカウント開始まで) 300ms/INPUT B,1s以内/INPUT FM許容度 10MHzp-p以上 |
MANUAL | キーで設定した周波数の固定バンド 捕獲動作なし バンド幅(FM許容度) ±125MHz以上(1.4GHz~18/27GHz) ±25MHz以上(0.5GHz~1.4GHz) |
同期トリガ・モード | |
INT. | 内部同期,入力信号のパルス変調波に同期してゲ ートが開閉する |
EXT.START | 外部からのスタート信号でゲートが開く ただし,内部検波出力がONのときのみトリガ可能 スタート入力信号(正弦波入力も可能)1.5V± (2~10)Vp-pパルス幅1μs以上 |
EXT.GATE | 外部からのゲート信号でゲートの開閉が可能 |
LINE | 電源の周波数に同期してゲートが開く ただし,内部検波出力がONのときのみトリガ可能 |
サンプル・レート | :50ms~5s連続可変およびHOLD |
ディレイ時間 | 25μs~30ms連続可変およびOFF(INT./EXT./LINEトリガよりカウント開始まで) |
メモリ・バック・アップ | ACラインに電源が供給されている時メモ リをバック・アップする。電源ケーブルを抜いた 状態でもフル充電された内蔵Ni-Cd電池によって 約2週間のバック・アップが可能。ただし,Ni-Cd 電池のフル充電には2~3日を要する。 |
表示 | 緑色7セグメントLED表示による記憶表示 10進12桁,固定小数点方式 文字大きさ約11mm(H) |
使用環境範囲 | 温度0℃~+40℃,相対湿度85%以下 |
保存温度範囲 | -20℃~+60℃ |
電源 | ご注文時にご指定願います。 電源電圧(V) 標準:90~110、オプション:103~132、オプション42:198~242、オプション44:207~250 |
消費電力 | 90VA以下(R5372/5373) |
外形寸法 | 約255(幅)×132(高)×420(奥行)mm(R5372/5373) |
質量 | 10kg以下 |
入出力機能
R5372 | R5373 | |
GP-IBインタフェース | オプション01 | オプション01 |
BCDデータ出力 | オプション02 | オプション02 |
※オプション01,02いずれか一方を選択
※本オプションは製品納入後においても工場引き揚げにて増設可能
GP-IBインタフェース | 規格: IEEE488-1978に準拠 機能: 表示データの出力およびフロント・パネルのすべてのキ ー設定の外部制御 |
AUX INPUT/OUTPUT | ゲート信号出力,検波出力,外部リセット 信号入力,測定終了信号出力が可能。 入出力レベルTTLコネクタ14ピン(アンフェノール社製57-40140相当品) |
D/A変換アナログ出力 (AUX INPUT/OUTPUTコネクタより出力) |
変換桁数:表示されている任意の3桁 出力電圧:-4.995V~+4.995V±20mV/+23℃±5℃ 出力インピーダンス:100Ω以下 |
デジタル・コンパレータ出力 (AUX INPUT/OUTPUTコネクタより出力) |
TTL負論理,オープン・コレクタ出力 |
付属品
品 名 | 型 名 | 製品コード | 備 考 |
電源ケーブル | A01402 | アングル・タイプ | |
入力ケーブル | A01036-1500 | BNC-BNC | |
入力ケーブル | MI-04 | N-N | |
入力ケーブル | A01002 | SMA-SMA |
アクセサリ(別売)
- R16058 トランジット・ケース
- A02448 ラックマウント・セット(EIA規格)
- A02248 ラックマウント・セット(JIS規格)
本製品についての詳細はコチラからご確認ください。