全身測定「ゾゾスーツ」はファストファッションを変革する

全身測定「ゾゾスーツ」は ファストファッションを変革する

株式会社スタートトゥデイが開発した「衣料用の全身採寸ボディースーツ」と聞いてもピンとこないかもしれません。
しかし、このように紹介したらどうでしょうか。
衣料ネット通販サイト、ゾゾタウン(ZOZOTOWN)の「ゾゾスーツ」。
こう聞けば、テレビやネットで話題になった、黒地に白の水玉模様の全身タイツを思い浮かべることができるでしょう。
ゾゾスーツを着用してスマホで撮影すれば、専用アプリが体の寸法を自動で測定します。その測定データを使ってゾゾタウンで服を注文すると、オーダーメードさながらのピッタリサイズの衣料が届く、という触れ込みです。
「安いから低品質でも我慢する」ファストファッションが、「安いのに高品質」に生まれ変わる起爆剤になるでしょうか。

「スマホで全身を測定して服をつくる」とは

スマホ 測定

ゾゾスーツをマスコミ報道でみたことがある人は多いと思いますが、「どのようにして全身を測定するのか」「測定した寸法をどのように服づくりに反映させているのか」についてはあまり詳しく報じられていません。
そこで「スマホで全身を測定して服をつくる」方法を解説していきます。

そもそもゾゾスーツとは

ゾゾスーツ

ゾゾスーツ (出典:J.FERRY mag)

ゾゾスーツは伸縮性の高い生地でできていて、どの体形にもピッタリします。首、手首、足首まですっぽり覆います。
ゾゾスーツにプリントされている約300個の白の水玉は距離を測るためのものです。太っている人がゾゾスーツを着ると任意の隣り合った2つの水玉の距離は遠くなり、やせていると短くなります。この2つの水玉の間の距離が、ユーザーの体型のサイズになるわけです。

スマホでの撮影は12回行う

日本経済新聞が2018年5月に、ゾゾスーツの能力を試した記事を掲載しました。ゾゾスーツで採寸したデータと、一流オーダーメードスーツ店のベテランテーラーが採寸した数値を比べました。
記者はゾゾスーツを自宅に取り寄せ、計測しました。

ゾゾスーツを着込んだら、スマホを机の上に固定し、そこから2メートル離れた場所に立ち、全身を撮影します。

1枚撮ったら30度回りまた1枚撮ります。これを12回繰り返し、計360度の全身写真を撮ります。
撮影が終了すると、アプリに首回りや股下など全身24カ所のサイズが表示されます。
この360度測定は、測定誤差が生じないように2回行います。

誤差は0.4センチ~8センチ。アフターケアもしっかり

オーダーメイド イメージ

記者はその後、東京・麻布の高級オーダーメードスーツ店で、テーラーに全身を採寸してもらいました。
その結果、最も誤差が大きかったのは股下で、ゾゾスーツの計測のほうが8センチ短い数値になりました。ただ袖丈の誤差は0.4センチ、首回りは1.3センチと「かなり優秀」な数値を叩き出しました。
高級オーダーメードスーツ店のテーラーといえば、その道何十年の「全身の測定のプロ」です。その技術に及ばないまでも、自宅でスマホで2回撮影しただけで近似値を出すことができたことは称賛に値するといえるでしょう。
記者は少し「いじわる」をして、測定データの誤差を修正せずゾゾタウンにデニムのパンツとTシャツを発注しました。もちろん、丈が極端に短いデニムパンツが届きました。
ただ、これはゾゾタウンとしては想定内で、届いた衣料のサイズが合わないと商品を無料で交換しています。交換方法は、カスタマーセンターに連絡しその後、スマホアプリに誤差の数値を入力して送信するだけです。
記者も正確な丈のデニムパンツを手に入れることができました。

ゾゾスーツの意義

測定機能は改良の余地があるとしながら、ゾゾスーツの便利さと将来性は高く評価されております。

「この値段でこの品質、驚いた」

値段 安い イメージ

記者は、ゾゾスーツを使って購入できるゾゾタウンの服が、安くて高品質であることを強調しています。大手アパレルメーカーのバイヤーに記者が購入したデニムパンツを評価してもらったところ、「縫製方法は手が込んでいてとても3,800円のデニムパンツとは思えない。100点満点」と太鼓判を押したのです。別のブランド店経営者も「この値段で売られたら、やっていけない」と驚いていました。

最大のネックをクリアした

顧客データ イメージ

ゾゾタウンのような衣料のネット通販の欠点は、サイズ測定でした。通常のネット通販ではS、M、Lだけでなく、SS、LLなどのサイズを用意しています。しかし、SとSSや、LとLLは「その会社のさじ加減」の部分が多く、あるネット通販ではLでちょうどよかったのに、別のネット通販ではLLがフィットする、といったことが生じ消費者を悩ませています。
ゾゾスーツの場合、計測誤差が生じてもその後に修正することができます。そして一度測定してしまえば、体型が変わらない限りジャストフィットの衣料を買い続けることができるのです。
リアル店舗ですらこれができるのは、オーダーメード店だけで、ファストファッション店では不可能です。カジュアル衣料店でもズボンの裾は、客は試着をしなければなりませんし、店員はミシンで縫わなければなりません。
しかしゾゾスーツを導入したゾゾタウンは、ネット通販でありながら顧客の体型データを入手して、それを顧客の利便性向上につなげることができるのです。これによりゾゾタウンは、客の囲い込みをますます進めることができるでしょう。
ゾゾタウンはゾゾスーツを無料で配布しています。つまりそのコストを度外視できるほど「顧客データを握ること」はアパレルビジネスの生命線になっているのです。

なぜ初代は失敗したのか?
2代目で測定方法はどう変わったのか?

ゾゾスーツには興味深いストーリーがあります。
ゾゾスーツのサービスは2017年11月にスタートしました。この初代ゾゾスーツには、白玉模様が入ってなく、真っ黒でした。それはゾゾスーツのなかに複数のセンサーを埋め込んでいたからです。人がゾゾスーツを着込んだときに、任意の隣り合った2つのセンサーが距離を測定し、そのデータをブルートゥースでスマホに飛ばし、専用アプリで受信するという方式でした。
しかしこの構造と仕組みは複雑すぎました。しかもゾゾスーツは世界初の試みだったため、マスコミが大きく取り上げ注文が殺到。それに対応しきれなかったため、無料配布を中止せざるをえなくなりました。
ところがゾゾタウンの対応は素早く、現行の2代目ゾゾスーツは2018年4月にサービスを開始しました。
2代目は体型測定を3Dで把握することにしました。3D測定する秘密が、白い水玉模様なのです。
ゾゾタウンの「見切り」の早さは見事というしかないでしょう。日経新聞によると、ゾゾタウンを運営するスタートトゥデイは、2代目ゾゾスーツのアイデアを3億円で購入しました。ゾゾスーツの無料配布だけでなく、開発にもコストをかけているのです。

まとめ~執念の測定

衣料は、体のサイズをしっかり測ってから、それに合わせてつくったほうがいいに決まっています。しかしそれではコストがかかりすぎてしまいます。それで、複数サイズの衣料を事前につくってS、M、Lの表示をつけ、後は客に最も近いサイズのものを買ってもらう、という方式になったわけです。現代の衣料選びは、服に体に合わせているのです。
ゾゾタウンはその常識を覆すことになるかもしれないのです。測定技術が向上すれば、ファストファッションのコスト安とオーダーメードのフィット感の両方を、消費者は享受できるかもしれないのです。
ゾゾタウンの測定には、執念を感じます。

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ライター紹介
ライタープロフィール
アサオカミツヒサ

フリーライター、ライティング事務所office Howardsend代表。北海道大学法学部を卒業後、鉄鋼メーカー、マスコミ、病院広報などを経て2017年独立。取材した分野は、地方政治、地方経済、過疎化、ワーキングプアなど。現在の執筆領域はIoT、AI、産業一般、人事制度、金融、最新抗がん剤、生活習慣病治療など。趣味はクルマとバイクと登山。北海道釧路市在住。

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