以前に記事の中で「加工を行うには寸法公差は必須」とご紹介しました。
寸法公差とは読んで字の如く、整品に求められる寸法の精度を数値化したもので長さや円の大きさ、点と点の距離などに対して設けられた公差の事です。
今回ご紹介するのは、加工の世界において寸法公差と同じくらい重要な公差である「幾何公差」と呼ばれる公差です。
幾何公差は寸法公差では表すことのできない、整品の形状や他の場所との関係性を示した公差です
今回は、幾何公差の種類とその意味について詳しくご紹介していきます。
幾何公差とは?
では、そもそも幾何公差とはどのような公差を示しているのでしょうか?
幾何公差は、大きく分けて2つの種類に分類されます。1つは製品の単一箇所についての公差を規定している幾何公差です。
このタイプの幾何公差は、例えばその形状がどれだけ真円に近いか?など対象の箇所に対して直接的に公差を設けていることが特徴です。
他方は複数の箇所についての相互関係性について公差を規定したものです。例えばリング状の製品の内径と外径の中心点のずれなどの公差を指定している場合です。
幾何公差の種類とその意味
ここからは、たくさんある幾何公差が何を表し、整品に対して何を求めているのかについて詳しくご紹介していきます。
幾何公差は単体で意味を成すものと、複数の幾何公差が一緒に設定されることで更なる意味を持つものもあります。複数の幾何公差が同時に記載される場合には、そのすべてを満足していることが必要となるため製品に求められる精度はより高いものとなります。
反対に、複数の幾何公差を併用したために片方では公差を遵守できているのに、他方では公差を逸脱してしまうといった、矛盾が生ずる場合もあり幾何公差の設定には寸法公差以上に気配りが必要となります
真円度
計測の対象が丸い場合に規定されることのある幾何公差で、対象箇所が真円(公差0)に対してどの程度の歪みを有していることを許容するかを規定した幾何公差です。
同芯度
計測の対象が2か所以上の円形形状で、その円の中心のずれがどこまで許容できるかを規定した幾何公差です。しばしは真円度と一緒に規定されます。
円筒度
計測の対象が円柱状の形状である場合に規定されることのある幾何公差です。
対象の物かどれだけまっすぐで、どれだけまっずぐであるかを規定した幾何公差です。
直角度
2辺の位置関係を有する製品に対して規定されることのある幾何公差です。
通常の基準となる辺や面に対して対象となる辺や面がどれだけ直角である必要があるかを示しています。
平面度
対象となる面の凸凹の許容範囲を示した幾何公差です。
単一面に対して規定される幾何公差で、凸凹の最も高い位置と最も低い位置の差に対して許容値を規定し提案す。
平行度
2つの面や辺などが、どれだけ平行であるかを規定した幾何公差です。
直角度と同じく、基準となる面や辺に足して対象の辺や面がどれだけ平行であるかを規定します。
円計状の製品の内外径の平行度は「同芯度」として扱われるため、注意が必要です
対象度
対象となる2つの構造が、どれだけ対象の位置にあるかを規定した幾何公差です。
ミラーイメージを想像すると理解しやすいかもしれません。
様々な幾何公差を満足するために
こうした幾何公差が多用される現在のものつくりにおいては、その幾何公差の整合性の検証も大切な確認作業となっています。
その為、モノ作りの現場では様々な計測機器が使用され各種の幾何公差を満足しているかの検証を行っています。
また、幾何公差のうち何種類かは専用の計測機器でなくては計測ができなかったり、一旦加工機から下ろしてしまった場合には再現性が失われたりと、解決しなくてはならない問題もたくさんあります。
幾何公差の多用=製品の品質向上とはならない
また、様々な幾何公差を詰め込んだ図面を用いて製品を加工することで、より高精度な製品が加工可能であると考える設計者が多いもの事実です。
しかし、過度な幾何公差の設定は加工の非効率化につながるばかりか、公差不良の増加を招くことにもつながります。
製品の性質上、必ず必要な公差がどれであるかを明確にして設計をすることはもちろん、適正に設定された幾何公差をしっかりと計測して遵守するとこは、ものつくりにとってとても重要な課題です。