「体重を測るには体重計」「長さを測るにはモノサシ」
毎日の生活の中で普段何気なく使っている、様々な計測機器に表示される数値。私たちは普段、何気なくたくさんの数値を利用しています。例えば精肉店で買い物をするときは「豚肉100gください」と注文します。
では、その100gという単位を決めているのはいったい誰なのでしょう?これが「100gの基準」と分かる何かが存在するのでしょうか?
今回は、そんな様々な単位の基本(基準)についてご紹介していきます。
このページの目次
なぜ、不変的な基準が必要なのか?
日常生活にあふれている様々な単位の基準は、いったいどのようなもので、どのようにして決められているのでしょうか?また、それらの基準となる物や現象は、なぜ不変的である必要があるのでしょうか?
まずは単位の基準を定める目的や方法について、ご紹介します。
基準となる物は、不変的である必要がある!
当たり前のことですが、単位当たりの量や長がさは時代の経過とともに変化することは許されません。そのため単位の基準とする物や事象についても恒久的に変化する可能性が無いことが求められます。
たとえは1cmのという単位の基準を、精密に作られたブロックゲージによって規定しているとします。
ブロックゲージの素材は概ねSKDなどのダイス鋼です。その場合、年月を重ねたり気温の変化などによって次のような変化が起こる可能性があります。
- 錆の発生による寸法の変化
- 温度上昇による寸法の変化
- 数千年単位での風化による寸法の変化
- 組織の変性による寸法の変化
など、様々な変化をもたらす要因が考えられます。これでは単位の基準として使用することはできません。
不変敵な物とは一体どんなものなのか?
それでは年月も温度も雨や風の影響も全く受けることなく、数千年先でも変わらない基準とは一体どのようなものなのでしょうか?
例えば「1m」の基準として現在定められている物とは一体何なのでしょうか?現在の1mの基準は次のように規定されています。
1 秒の 299792458 分の 1 の時間に光が真空中を伝わる行程の長さである
難しい表現ですが、真空の中に光を照射した時、1/299792458秒の間に光が進む距離=1mということになります。
ここで一つの疑問が生じます。
「1/299792458はどうやって測るのか?」
答えは人力で計測をすることは不可能です、1/299792458秒というのはあくまでも理論上の数値であり、実際にその時間や進んだ距離を計測することは不可能です。
※逆説的に1秒間で実際に光の進んだ距離を計測し1/299792458するという方法ならある程度可能ですが・・・
つまり、数値の基準となる現象についてはあくまでも理論上の基準を満たしていれば、実際にその内容を再現する必要はないことになります。
「光」という普遍的なものと、時間という不変的なものを組み合わせて1mの基準は作られています。
では、光の速さが定義される以前の基準は?
実は、1mの基準とされる現在の光と時間の組み合わせが採用されたのは1983年からと、割と最近の話です。ではそれ以前はどのようにして1mを定義していたのでしょうか?
実は、それ以前の1mの基準は地球でした。当時から長さの基準となる物は不変でなければならないとの考えは浸透しており、当時もっとも不変的と考えられていたのも、それが地球でした。
当時の1mの基準は、北極点から赤道までを結んだ子午線の1000万分の1が1mと定義されていました。現在の1mの基準も元をたどればこの数値を、さらに不変的基準へと置き換えたものと言えます。
出典元:https://kakadarayo.com/1m/
また、1888年には「メートル原器」と呼ばれる、1mの基準を物質的に再現した基準片が制作されています。白金とイリジウムの合金で製作されたこのメートル原器は摂氏0度の状態で、正確に1mを示すよう作られており、当時30本製作されたメートル原器はその後長きに渡り各国のメートル(長さ)の基準として活躍しました。
その他の単位の基準となる物とは?
ここからは様々な単位の基準となっている事象や現象について、できるだけご紹介させていただきます。
重さの基準は新たに「シリコン原子」に
実は、重さの基準というのは長きに渡りパリ郊外の国際度量衡局が保管する金属製の分銅である「原器」が基準とされてきました。この分銅の複製を世界中に配布することで、重さの基準を保ってきたのです。先ほどの長さの基準と比較するとなんとも原始的でした。
また、さらにその分銅の基準となっているのは純水1リットルが1kgであるとの定義によります。
しかし、今年からこの基準が見直されます。
新たに、重さの基準として採用されたのはシリコンの原子です。シリコン原子の数によって重さを表現することで、これまでよりももっと不変的なものを基準とすることができるようになりました。
温度の基準は「水」
温度の基準、実はこれは誰もが知っている水の沸点と凝固点を1/100に区切ったものが1度として定義されています。
つまり、水が氷る温度が0℃・水が沸騰する温度が100℃としたわけです。
熱量の基準も実は水
食事などの際に、気になる方も多いカロリー(熱量)ですが、この基準となっているのも実は水です。
一般的に1カロリーは1ccの水の温度を1度上昇させるだけの熱量と定義されています。水は温度や大気圧によって、温度上昇がさまざまに変化するため、1カロリーという熱量の表記にも様々な違いが設けられています。
単位の基準は常に見直される
身近な単位の基準が思いもよらぬ方法で定義されていることにきっと驚かれたのではないでしょうか?
単位の基準とは決して不変ではありません。今年改定される重さの定義のように科学の進歩によって必要にお応じて見直しが行われます。
とかく、重さの定義の変更は130年ぶり!今年は重さの定義にとっては非常に意味のある年になることは間違いありません。
普段、気にすることなのない様々な単位の生い立ちや定義について、一度考えてみるもの良いかもしれませんね。