部品加工などを行っている会社の営業マンは、自社に高性能計測器を導入して欲しいと願っています。しかし、営業なのになぜ計測器を導入して欲しいのでしょうか?この記事では、計測器の種類を簡単に触れた上で、営業現場と計測器の関わりを紹介します。
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部品加工業で使われる計測器
計測器にはさまざまな種類のものがありますが、部品加工業界でよく活用されているものを大別すると、「手作業で測る計測器」「細かな公差を測れる計測器」に分けることができます。
まずは、それぞれの例を見ていきましょう。
手作業で測る計測器
手作業で測る計測器の代表格としてはノギスがあります。ノギスは内径や段差などを計測でき、定規のような目盛りを見ながら利用します。デジタルノギスは数値が表示されるため、目盛りを目視しなくても数値の確認が可能です。手作業での計測として、最も多く活用されているでしょう。
細かな公差を測れる計測器
モノづくり業界で自社に導入を希望するケースが多いのが、三次元測定機です。三次元測定機とは、画像処理によって対象物の寸法を測る機器で、モノによっては0.0001mmの公差を測ることが可能です。
三次元測定機で寸法を測り、3Dプリンタで試作品を作るなど、正確な計測だけでなく、新たな活用法も増えています。
正確な計測が必要な部品例
正確な計測が必要な部品は、業界や製品によってさまざまです。ここでは、なるべく身近なものをピックアップし、その内容を紹介します。
歯医者さんの診療ユニット
歯医者さんの診療ユニットは、正確な公差が必要なケースが多いです。±0.1mm程度の公差範囲であることが多いプラスチック製品の中で、診療ユニットの先端部品は±0.05mmが必要です。公差が出ないと、部品の組み合わせが成り立たないこともあるため、きっちりと計測する必要があります。
LED照明の部品
LED照明の部品も±0.05mmの公差が求められます。LED証明は、公差がでていないと光が漏れることもありますので、組み立てさえできれば良いというものではありません。ノギスで測るのに限界があるほど、精密な部品も多いのです。
各種ベアリング
ベアリングは、軸を滑らかに回転させるために使用する部品で、ほかの部品とはめ合わせることを考えると、厳しい公差が必要となります。はめあわせ部品の一方が+0.01mm~+0.05mm、もう一方を-0.01mm~-0.05mmなどと指定するのが一般的ですが、公差がでていないとはめられなかったり、緩くなりすぎることがあります。
また、図面の指示で一方が+0mm以上、もう一方-0mm以下などとなっている場合、両方が0mmとなるとはめ合わせができません。特に、それぞれの部品を別な業者が製作している場合には、計測も含めた注意が必要です。
計測でよくある営業の苦労話
計測は品質管理部が行うことが一般的であるため、営業との関連性がないように思えるかも知れませんが、自社の計測器の水準は営業活動において重要です。その理由を苦労話を例に紹介します。
自社が手作業の計測で顧客が三次元測定機の悲話
たとえば、自社の計測器がノギスしかなく、顧客が三次元測定機を活用している場合、営業マンは窮地に立たされることが多いです。自社の工場や品管が良品と判断したものが、客先で不良品と判断されるケースがあるからです。
客先から「計測できないのにどういう基準で製作しているのですか?」と問い詰められると、返す言葉もありません。
作れても計測できないための失注
図面を見て、自社の設備で製作が可能だと判断しても、計測ができないために受注できないこともあります。予想製作時間から見積もりも出せるにも関わらず、計測器がないという理由で品質管理ができず、競合他社に注文が流れることを、指をくわえて見る営業マンも少なくありません。
本当は不必要な公差
顧客A社と顧客B社のエンドユーザーが同じなのに、顧客A社は三次元測定機で測った厳しい公差を求めて来て、顧客B社はノギスで測った緩い公差で納品に応じてくれるというケースもあります。
顧客A社で不良品扱いされたものを見ている営業マンは、「顧客B社では使ってくれるのに」と心のなかで呟くことになるでしょう。エンドユーザーのニーズに関わらず、無意味な公差を突きつけられることもありがちです。
まとめ
営業マンは、自社の計測器の充実度合いによって、受注に影響が出ることを知っています。また、自社の計測器が充実していないことで、恥ずかしい思いをしているケースも多々あります。このことは、会社にとって不利益となるため、計測器の充実はとても重要なことだといえるでしょう。