米国業界リーディングカンパニーは食品鮮度をこう測る。
本日の記事は、”食品の鮮度を測る”がテーマです。
生産者が測る、販売者が測る、そして今や消費者がスマホで測ることができるツールまで登場しているとか…。今回は数年前から導入され食品ロス対策にも貢献度が高く注目された”販売者”での測定ツールに注目したいと思います。
米国の業界リーディングカンパニー、ウォルマート社の食品管理システムについてまとめたいと思います。
普段スーパーなどで野菜を買うとき、ついつい少しでも綺麗なもの、新鮮に見えるものを選んでしまいますが、その行動が食品廃棄問題の要因の一つになっていることは想像に難くないものです。
米国のウォルマート社では数年前に新しい管理システムの導入によって画期的な改革がなされたようです。そのツールの名は「Eden(エデン)」。これはいったいどんな管理システムなのでしょうか?
鮮度まで”一目”瞭然の管理システム
2016年に初めて導入された「Eden」。社内のハッカソンで優勝したエンジニアチームにより6カ月かけて開発されたシステムだそう。
従来のウォルマートでは、入荷された商品を検査官が撮影し、目視で確認を行っていました。農務省の品質基準、社内の品質基準に適応しているかを手動でチェックし、商品を受け入れするかどうかの判断をしていたんですね。
エンジニア達は、品質基準をすべてデジタル化すること、検査官が共有していたカメラを廃止してiPhoneに置き換えすることから着手しました。
「Eden」の核となる機能は、生鮮品の鮮度を測るアルゴリズム。この仕組みは同じリンゴを毎日撮影してデータを作っていくことで構築されました。褐色に変化したリンゴの画像に基づき、データ処理の学習アプリケーションが完成しました。こうして、検査官が撮影すると即座にデータを検索して、リンゴの新鮮さやいつまで販売できるかを判断することが可能になったのです。

また、店頭ではどのように使われているのかというと、ウォルマートの店舗スタッフが店頭でリンゴに貼られた2次元コードをハンディー端末で撮影すると、”リンゴ、品種◯◯、◯ポンド、袋入り”といった販売に関する基本情報に加えて、産地から店頭に運ばれてきた経緯までも把握できるのです。
「Eden」を使えば、生鮮食品が輸送途中で加圧状態にさらされていないか、また、温度管理がきちんとなされていたか、視覚で分かるダメージはついていないか、といった項目を画像認識とセンサーで特定することができるのです。
アメリカ農務省(USDA)が定めた鮮度基準への適合を判定し、また、店頭販売できる適切な日数についても評価を行うことができます。判断に使う画像の枚数は、実に100万枚以上だそうです。
配送センターでは輸送途中での判断を行っています。店頭に出しておける日数が予想以上に短いと分かれば、配送先をセンターの近隣店に変更するなどの対応ができるのです。入荷された順に店頭に出すのではなく、販売可能な日数に応じ販売していく順番を組み立てるなど、ひとつの店舗のみに終始しない取り組みや、新しい視点による効率良い販売体制を作ることも可能になっていくんですね。
客観的な”測定”で大幅コストダウン!
これまで検査官や店舗スタッフの”目視”に依存していた生鮮食品の鮮度確認が、このツールの導入により標準化されたと言えます。専門的なスタッフだけではなく、店舗や配送センターのメンバーに使い勝手がいいように設計されたことも、成功事例としての大きな要因なのではないでしょうか。
店舗スタッフたちが販売前の果物や野菜を管理することにも活用されています。食べごろになったキャベツから優先的に店頭に出したり、トマトの貯蔵寿命予測を算出したり、バナナの追熟を効率的に行なうことなどが可能になりました。業界内の競争優位性を獲得するだけでなく、消費者へのより充実したサービスにも繋がっていると言えます。
そして、すべての生鮮品を適切な鮮度状態で店頭に置くことができるようになったので、無駄な廃棄が激減したことは特筆すべきでしょう。
システム導入の2016年から18年度半ばまでで、8600万ドル分(約92億8000万円)もの食品廃棄をカットできたそうです。次の5年間では、20億ドル分の削減を目標においているとのこと。
先進技術や新しいシステムが活用されることでその企業自身にとっても、社会や地球環境にとっても、大きなメリットが生まれたという素晴らしい例をご紹介しました。
食品ロスは日本でも大変大きな問題として取り上げられています。このウォルマート社の取り組みはヒントを与えてくれる部分も多いのではないでしょうか。
次回は”消費者自身で測定?”スマホを活用した鮮度測定についてお届けしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。