「第三者機関立ち合い検査」こんな言葉をご存知でしょうか?近年の大企業によるデータの改ざん問題や、現場の知識レベルの低下、検査による合否判定の責任所在明確化などの理由で、近年実施の割合が増えているこの「第三者機関立ち合い検査」。
では、本当はどのような目的で何のために必要な検査となるのでしょうか?
今回は、最近よく耳にする「第三者機関」についてお話していきます。
このページの目次
そもそも、第三者機関とはどのような組織なのか?
ここで言う「第三者機関」とは一体どのような組織なのか?そして何のために必要なのか?
まずは第三者機関、そのものについてご説明します。
第三者機関=どこにも属さない中立な立場の組織
第三者とは、例えば何か事件が起こった場合に加害者でも被害者でも、またどちらかと利害関係を持たない全くの中立的立場の人を指します。殺人事件で言えば犯人でも被害者でも、刑事でもない立場の人間ということになります。刑事事件の場合は「裁判官」がこれに該当します。
つまり、第三者機関とは全ての関係性において当事者と利害関係にない、第三の立場を宣言している組織となります。
ではなぜ、中立的な立場である第三者機関が必要なのか
人間の性は「悪」である。
これは、人間の本来持っている性格は「悪」であるとした性悪説の根源です。人間は何か自分に不都合なことが起こると、それを意図的に歪めようとする。それは人間が本来持っている性は「悪」であるからだ!というのが制作説的な根拠です。
この性悪説を根拠とし、検査の現場ではどちらとも利害関係のない第三者機関を立ち会わせることで、ごまかしのない、正確な情報を得ようとする行為こそが「第三者機関立ち合い」です。
例えばA社がB社に対して製品の加工を依頼したとします。
A社はB社のライバル企業であるため、B社の製造した製品に何とかクレームをつけようとたくらんでいました。反対にB社はライバルであるA社に対して、安価で粗雑な製品をあたかも高級な製品であると装って納入しようと企てています。
この場合、A社は納入された製品をきちんと検査することなく「不合格」としてしまうでしょう。またB社は本来ならば不合格の製品を「合格」として無理やり納入してしまいます。
両社ともに自社の利害に奔走した結果、だれも特をしない結果を招いてしまいます。
このような場合に、第三者機関は公正な視点で製品の良し悪しを判断し結果を両社に伝えると共に、その製品の評価に責任を持つという役割を果たしてくれます。
第三者機関立ち合いの留意点
では、第三者機関はいったいどのような基準に基づいて判定をくだし、その結果を自身の責任として補償するのでしょう?
続いては第三者機関の実質的な職務についてご紹介します。
判定基準が明確に定まっている場合
まずは様々な法規や規格によって、判定基準が定まっている場合の第三者機関の役割についてです。大半の事例がこれに該当します。
先のご説明の通り、第三者機関は中立的な立場において検査を行い準拠すべき項目について確認し合否判定とその結果についての保証を行います。その際、多くは法規や規格が存在しその内容に検査対象が合致しているかを基に判定を下します。
例えば、建築現場で鉄筋の本数が正しいかどうかを第三者機関が判定する場合「建築基準法」の乗っ取って、検査対象を確認し、合否判定を行います。
基準を満たしていればもちろん「合格」とし、満たしていなければ「不合格」と判定します。この時重要なのは、第三者機関は合格の内容のみを保証するのではなく、不合格の決定についても補償します。これは、当該製品の良し悪しを決めることが第三者機関の目的ではなく、その製品を中立に判断して内容を保証することが第三者機関の役割として求められているためです。
明確な判定基準がない場合
続いて、法規や標準といった明確な判定基準が存在しない場合です。
この場合は、第三者機関は事前に施主(注文する側)に判定基準を示させ、その内容を施工側にも伝え両社の合意できる判定基準を準備します。
この時、双方の利害関係が必ずしも一致するとは限りません。そのため、事前の基準を作るといった作業は大変重要で、場合によっては管理基準や品質基準といった形で両社の合意の下、書面でのやり取りをしておくなどの準備が必要です。
この場合でも第三者機関はあくまでも対象となる製品(建築物等)が両社の合意した管理基準や判定基準を満たしているかの確認を行うだけであるため、合否に関わる判定基準の作成は行いません。
様々な場面で求められる判断の中立性
第三者機関の立会いが求められる場面は近年では非常に多くなっています。官公庁の支持によって第三者機関立ち合いが義務付けられる場合や、企業間の取り決めによって行われる場合など様々な場面で第三者機関立ち合いが必要とされています。
また、近年では国際的な取引においても中立性や文化の違いによる齟齬を防止する目的で、第三者機関の立ち会が求められることが多くあります。
いずれの場合も当事者同士の利害関係から離れた第三者が確認や検査をおこなうことで、双方の責任を果たしていることを担保するといった商取引が盛んになっていることが根底にあります。
現在の商取引では、責任の所在を明らかにすることが後のトラブルを回避できる最善の策だと考えられているためです。
どんな会社や組織が第三者機関と呼ばれるのか
では最後に、いったいどのような組織や会社が「第三者機関」として活躍しているのかについてご紹介します。分野や業種の違いをすべて網羅することはできませんので、代表的な組織・企業を例にご説明します。
公的機関が行う第三者立ち合い
国内で最も一般的な第三者機関、それは公的機関と言えます。公的機関とはその分野に特化した検査を専門に行う組織を国や県、市町村が組織し運営している機関です。
代表的なものでは、建築現場で行われる建築基準法への適合検査などがこれに該当します。
独立した検査会社として第三者立会を行う組織
一方で民間企業でありながら、中立性を宣言することで第三者としての機能を満たし、検査を行っている会社も数多く存在します。
例えば工業分野において、非破壊検査などを行ういわゆる「検査会社」がこれに該当します。実施する非破壊検査そのものは施主・施工会社のどちらでも行うことが可能ですが、あえて中立性を確保するために外部の検査会社に委託して合否の判定をゆだねる場合が多く見受けられます。
この場合も、検査会社はあくまでも中立的な立場で判定基準に基づいた判定をくだし、その結果を保証することで第三者機関としての意義を全うしています。
今後さらに需要の増加が見込まれる第三者検査機関
ここまで、ご紹介した通り現在の商取引においてはその内容を保証しうる根拠を求められる機会が多くなっています。
そういった商取引の増加を背景に、今後も中立的立場の第三者機関の出番はますます増加していくものと考えられます。