採血せずに血中成分を計測できると「良いことずくめ」

採血せずに血中成分を計測できると「良いことずくめ」

病院やクリニックなどの医療現場において「測ること」は文字通り生命線です。医師は患者をあらゆる角度から計測し、そのデータを元に薬を調整したり、手術に踏み切ることを決断したりします。
今回紹介する医療現場での「測る」対象は、血液です。血液は健康情報の宝庫で、血中の成分の量で病気の有無や治療の進み具合がわかります。
しかし血液の成分を測ることは簡単ではありません。計測するためには血液を体内から抜き出さなければならず、そのためには注射を刺して採血する必要があるからです。
つまり、少なからず患者の体が傷つくわけです。
そこで採血せずに、つまり体内から血液を取り出さずに血液中の成分を測る方法が開発されました。

光で血液中の中性脂肪を測るから痛くない

レーザー イメージ

札幌の医療ベンチャー「メディカルフォトニクス」が開発したのは、採血せずに血液中の中性脂肪を計測する装置です。中性脂肪の血中濃度が高くなると心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが高くなるので、健康診断では必ず中性脂肪を測定します。
メディカルフォトニクスが開発した測定方法は、スマートフォンの半分ほどの小型の機器を腕に当てるだけと、とてもシンプルです。血液を血管の外や体の外に出す必要がないのです。
小型機器からは近赤外光という人体に無害な光が発射され、その光が体内でどのように散乱したかを測定することで、血中の中性脂肪濃度を計測します。

光の散乱をとらえて成分を推測

なぜ光を体内に当てるだけで、そこを通っている血液内の成分がわかるのでしょうか。それは、液体に含まれる成分の量によって「光の散乱の仕方」が変わるからです。
例えば、a液にはある成分が10%含まれてて、b液には同じ成分が20%含まれているとします。この2つの液体に光を当てると、光の散乱の仕方が変わります。
それで血液を通過した光の散乱の仕方を測定することで、中性脂肪の量が推測できるのです。

「何回も採血しなくてよい」ことで病気の発見が早くなる

光を当てるだけで血中の中性脂肪濃度を計測できることは、大きな意味があります。
動脈硬化や心筋梗塞の前兆の1つに「食後高脂血症」があります。食後高脂血症は、普段は中性脂肪の濃度が高くないのに食後3~4時間だけ急激に中性脂肪濃度が高くなる、という症状を起こします。
そのため健康診断のときのように任意の時間に1回採血しただけでは、食後高脂血症の症状はとらえることができないのです。食後高脂血症の症状を見つけるには、食前と食後に血中の中性脂肪濃度を計測しなければなりません。
従来の採血方式で食後高脂血症をとらえるには、患者に2回も注射器を刺さなければなりません。また採血は病院やクリニックの中で行わなければならないので、患者を数時間にわたって拘束することになります。
しかし光方式の測定器なら、簡単に何度でも計測できるので、食後高脂血症かどうかの判定がしやすくなります。すなわち、血液の測定方法が簡便化されると心筋梗塞と脳梗塞を予防しやすくなるというわけです。

「細胞の水」を測って血糖値を見える化する

水 イメージ

重症化した糖尿病患者の治療では、定期的に血中の血糖値を測定し、インスリンの自己注射をしていかなければなりません。
血中の血糖値測定は、患者が自分で専用の針を指先に刺して微量の血液を出し、それを測定器に入れて計測します。つまり患者は、血糖値測定とインスリン注射の両方で自分の体に針を刺さなければならないのです。これを1日に何度も行うので、とても苦痛です。

針刺しの苦痛が減り正確さも向上

アボット社が開発した「フリースタイル・リブレ」は、血糖値の自己測定を簡略化した装置です。
採血を必要とせず、しかも自動的に24時間連続で血糖値を測定してくれるのです。
つまり、針刺しの苦痛がなくなるうえに、定期的に計測する手間がなくなり、さらにより正確に血糖値を把握できるのです。

1分ごとに2週間連続で計測

フリースタイル・リブレは、体に装着する500円硬貨ほどの大きさの「センサー」と、センサーが計測した血糖値を読み取って記録する「リーダー」の2つの機器からなります。
センサーには微小・極細の針がついていますが、これを刺しても痛みはありません。しかも刺すのは最初の1回だけです。
センサーは二の腕に貼り付けたままにしておきます。センサーは2週間にわたって、患者の血糖値を1分ごとに計測し続けます。
リーダーはポケットWi-Fiのような形状をしていて、センサーに近づけるとセンサー内のデータを読み取ります。リーダーには液晶画面がついていて、その画面で血糖値がどのように変化しているかがひと目でわかります。
リーダーで読み取ったデータは、パソコンに移すこともできるので、血糖値の情報は医師と共有することができます。

間質液を計測することで実現

フリースタイル・リブレがこれだけ血糖値測定を簡略化できたのは、「血中の血糖値」を「血液以外の液体」で測定することに成功したからです。
従来の採血方式は、血液の中の血糖を直接計測していました。そのため、必ず「血液を取り出す」必要があったのです。
しかしフリースタイル・リブレでは、血液ではなく間質液を測定しているのです。
間質液とは、細胞と細胞の間にある液体のことです。血中の血糖濃度と間質液中の血糖濃度に相関関係があることから、フリースタイル・リブレでは間質液を計測して血糖値を推定することにしたのです。
血液を測定するには針を血管の中まで通す必要がありますが、間質液を計測するだけなので極小・極細の針で十分なのです。
フリースタイル・リブレを使うと、血糖値の推移がよりリアルに把握できるようになります。そのため患者のライフスタイルと血糖値の関係がわかり、医師と患者は「血糖値を上げないライフスタイル」や「インスリン注射を打つベストのタイミング」を見つけることができるのです。
つまり治療効果の向上が期待できます。

まとめ~「痛くしない化」は治療効果を高める

医療機器の開発では、患者の負担を減らすことが大きな課題になっています。「痛くしない」方法で患者を計測できると大量のデータを収集できるので、医師は治療方針が立てやすくなります。
患者に痛みを与えず血液成分を測定する方法は、患者にも医師にも良いことずくめといえるでしょう。

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ライター紹介
ライタープロフィール
アサオカミツヒサ

フリーライター、ライティング事務所office Howardsend代表。北海道大学法学部を卒業後、鉄鋼メーカー、マスコミ、病院広報などを経て2017年独立。取材した分野は、地方政治、地方経済、過疎化、ワーキングプアなど。現在の執筆領域はIoT、AI、産業一般、人事制度、金融、最新抗がん剤、生活習慣病治療など。趣味はクルマとバイクと登山。北海道釧路市在住。

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