AI天気予報は測定を不要にするのか

AI天気予報は測定を不要にするのか

アメダスのデータを使うと、普通の雨だけでなく集中豪雨や暴風などを、しかも局地的に予報できます。それだけの能力を発揮できるのは、正確な気象情報を生み出すために、ありとあらゆる自然現象を測定しているからです。
ところがAI(人工知能)を使えば、測定という行為が要らなくなるかもしれません。測定はコストがかかりますし、なにより「手間」です。コストと手間を省けるだけでなく、AI天気予報は測定方式の天気予報より正確になるかもしれないのです。
ただ著名な気象予報士は、AI天気予報には落とし穴があると指摘します。

アメダスは測定が命

気象 イメージ

アメダスの正式名称は「Automated Meteorological Data Acquisition System(地域気象観測システム)」といいます。アメダスが測定しているのは、降水量、風向き、風速、気温、日照時間、積雪です。

1,300カ所で大量のデータを収集する「手間」

アメダスの観測所は全国に約1,300カ所あります。約17km間隔で観測所を置く必要があるので、これだけの数になりました。

観測所といっても建物があってそのなかに職員がいるわけではありません。観測機器が野ざらしになった状態で置かれています。観測機器は、雨量計、温度計、風向風速計、日照計、積雪深計、データ変換・処理装置などで構成され、すべて自動で動いています。

降水量は全約1,300カ所で測定していますが、気温、風向風速、日照はそのうちの840カ所で計測しています。積雪深は320カ所です。

「自動」と聞くと簡単そうに感じるかもしれませんが、これらの測定がどれくらい「手間」がかかるかは、測定の「単位」をみればわかります。

降水量は「0.5mm単位」で観測
気温は「0.1度単位」で観測
風向きは「北、北北東、北東、東北東、東、東南東、南東、南南東、南、南南西、南西、西南西、西、西北西、北西、北北西」の16方向を観測
風速は「0.1m/秒」で観測
日照時間は「0.1時間(6分)単位」で太陽が照らした時間を観測
積雪深は「1cm」で観測

これだけ小刻みに測定しないと精度を高めることができないのです。

観測データをどのように加工して未来を予測しているのか

ではアメダスで収集したデータを使って、どのように天気を予測(予報)しているのでしょうか。アメダスは現在の天気をつくる要素を観測しているだけです。そのデータに「なにかしらの加工」を施さないと、天気予報という未来予測はできないはずです。
「なにかしらの加工」は、数値予報モデルとスーパーコンピュータです。
数値予報モデルとは、降水量や気温など天気をつくる要素が「こうなれば大体こうなる」というモデルのことです。このモデルは流体力学や熱力学などから割り出します。また「日光の放射と雲・雨との関係」や「日光の放射と大気の流れの関係」、「大気の流れと雲・雨との関係」も勘案します。
そして流体力学や熱力学や「日光、雲・雨、大気の関係」に基づく計算を行うのがスーパーコンピュータです。
つまり現代の天気予報は次のような流れでつくられるわけです。
・アメダスで1,300カ所を観測

・観測データを数値予報モデルにあてはめる(スーパーコンピュータで計算する)

・予報を出す
これで明日や明後日の天気を予報しています。
天気予報には1カ月予報や3カ月予報などがありますが、これは明日や明後日の天気予報の手法に加えて、誤差修正や不確定さの除去を行っています。
例えば、海洋の変動は大気の変動よりゆっくりなので、1カ月予報では大気の変動だけを考慮しています。海洋の変動は1カ月後の天気に与える影響が小さいので無視してしまうのです。
3カ月予報には大気も海洋もどちらの変動も考慮します。
このように現代の天気予報は、地道な観測(測定)とスーパーコンピュータという頭脳によって成し遂げることができています。
ではAIはどのようにして測定なしで天気予報をしようというのでしょうか。

AIはなぜ測定しないのに正確なのか

AI 予測 天気
千葉市に本社がある株式会社ウェザーニューズは気象情報を提供している会社です。同社の予報精度はいまものすごい数字になっています。6時間後の天気は89.5%の確率で当てます。1時間後であれば90.8%です。同社はこの数字を99.9%にまで高めようとしています。

雲の画像と雲の位置からAIでゲリラ雷雨を予報する

ウェザーニューズは2008年に「ゲリラ雷雨防衛隊」というユニークな取り組みを始めました。全国の人に協力を呼びかけて隊員になってもらい、灰色の雲をみつけたら位置情報を送ってもらうのです。アメダスでは「灰色の雲の位置」は観測していないので、これは新しい気象データといえるでしょう。
そして同社は2014年にゲリラ雷雨防衛隊をバージョンアップして、AIを導入しました。そして隊員にはスマホやガラケーで灰色の雲の写真を送信してもらうようにしました。
AIには「危険な雲の色や形」を学ばせてあります。AIは隊員から送られてきた雲の写真から安全、注意、危険を判断するのです。
AIは自分で学習していきます。つまり、AIがある日の雲を「危険」と判断したのに実際は「安全」だった場合、後からAIに間違っていたことを教えると「あの雲は安全だった」と理解して、次は間違えないようになるのです。
ただこの段階では、雲の位置に関する大量のデータが必要なので、これを「測定」とすると、まだ「AI天気予報は測定を必要としない」とは言い切れません。
しかしウェザーニューズの開発はこれにとどまらないのです。

気象予報士は用無しか?

国家資格の気象予報士の試験は1994年にスタートし、2018年現在、約1万人の気象予報士がいます。もちろんウェザーニューズにも多くの気象予報士がいます。しかし同社は自社のサイトで「天気予報に人間は用無しか?」と自問しています。
そして、測定も必要なくなるかもしれないのです。
ウェザーニューズはアメリカのAI開発のエヌビディア(NVIDIA)と共同プロジェクトを立ち上げました。AIを使って衛星で撮影した雨雲の画像を解析し、降水分布地図をつくろうというのです。
当初は衛星画像だけでなく、気象レーダーのデータも使います。気象レーダーは電波で雨雲までの距離や雨の粒子を観測するので「測定」しています。しかし将来的には衛星で撮影した雨雲の画像で仮想気象レーダー画像をつくるので「撮影」だけで済みます。「測定」は必要なくなるかもしれないのです。
このAI天気予報システムは、実に「手間」がかかりません。
現在、世界の気象レーダーをすべて駆使しても地上の17%しかカバーできていません。そして地球全体をカバーするには4,000基の気象レーダーが必要です。気象レーダーを設置して管理することは「手間」です。
しかしウェザーニューズとエヌビディアのプロジェクトであれば、AIを50台使えば全世界の天気を予報できるかもしれないのです。両社の試算では、AI天気予報システムのコストは、気象レーダーシステムの8,000分の1で済みます。

まとめ~お天気の森田さんは問題点を指摘

「お茶の間に天気の面白さを伝えた人」と呼ばれている気象予報士の森田正光さんは、AI天気予報の問題点を指摘します。それは、AIがなぜ「晴れ(または雨、または曇り)」と判断したのかわからないからです。

これは天気予報に限らないのですが、AIの思考は、そのAIを開発した人にもわかりません。ということは、99回正しい答えを出した後に間違った答えを出すかもしれないのです。
森田さんはメディアのインタビューで次のような見解を示しています。
・AI天気予報では何を考えてその予報を出したのか検証できない
・後でその予報がとんでもない間違いだったということがあるかもしれない
・予報の背景に何があるのかについて天気図をみながら人間の知恵で明らかにすることが必要
ただ森田さんによると、人間の天気予報の精度は30年も前にコンピュータに追い越されているそうです。森田さん自身、周囲の人から「天気予報を教えてほしい」と頼まれると、スマホで気象情報を集めて回答しているのです。
森田さんは気象予報士の役割は、気象災害が発生する可能性がある場合に避難行動を取るよう伝えることだ、と言い切ります。情報をつくることはAIやコンピュータに任せて、人(気象予報士)は情報を使うことに専念すべきだ、ということなのですね。

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ライター紹介
ライタープロフィール
アサオカミツヒサ

フリーライター、ライティング事務所office Howardsend代表。北海道大学法学部を卒業後、鉄鋼メーカー、マスコミ、病院広報などを経て2017年独立。取材した分野は、地方政治、地方経済、過疎化、ワーキングプアなど。現在の執筆領域はIoT、AI、産業一般、人事制度、金融、最新抗がん剤、生活習慣病治療など。趣味はクルマとバイクと登山。北海道釧路市在住。

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