製造業では、先進技術の活用により、生産効率を上げる動きが活発化しており、IoTの導入とともに、AI(人工知能)の活用が進んでいます。AIを利用すると、これまでの自動化ではできなかった領域に、活用の場が広がるため、より一層の自動化が進むことになります。
この記事では、製造業におけるAIの導入事例を具体的に紹介いたします。
トヨタが生み出したAI自動車
トヨタは、「Concept-愛i(コンセプトアイ)」という自動車を開発し、AIを活用した自動車として大きな話題を集めました。AIを活用した「Concept-愛i」は、ドライバーをサポートする機能が付いており、快適で安全なドライブを実現させてくれます。
たとえば、ドライバーの体調を解析してアシストしてくれたり、緊張状態を緩和するリラックス機能が付いています。また、ドライバーが眠気に襲われている場合には、五感に働きかけて覚醒状態に導いてくれます。
WEBニュースやSNSの利用、位置情報や車内での会話などのビックデータを用いて、ドライバーの好みに寄り添ったドライブを提案してくれるため、時には回り道で楽しめるルート提示することもあります。
現在、実用化に向けて開発が進んでいる状況ですので、今後の展開に注目です。
株式会社MUJINの製造工場
株式会社MUJINは、産業ロボットにAI技術を利用し、さまざまな制御装置を開発しています。たとえば、製造工場内の重労働である荷降ろしを自動化してくれたり、人を介在させずにピッキングを行う装置を提供しています。
解析から実作業までがオールインワンとなっている装置も多く、製造現場での人の負担を大きく軽減してくれています。株式会社MUJINは、平成23年創業ということで、まだ若い会社ですが、AI業界では、先駆的存在の一員となっています。
株式会社MUJINの提供する産業ロボットを見ていると、起業名の通り、いずれ製造現場が無人となることを期待させてくれます。
Amazonの倉庫
Amazonは、Amazon自身が商品を販売するだけでなく、個人がAmazonに出品できる仕組みとなっているため、流通の効率化が収益拡大に重要な要素となっています。Amazonは、フルフィルメントセンターという巨大な倉庫を地域各所に持っており、効率的でスムーズな流通を行っています。
効率的な流通を支えているのが、フルフィルメントセンターにあるKivaというロボットです。商品が乗せられた棚を、担当者へ運んでいくため、作業員の負担を軽減させているのです。
Amazonは、ドローン配送も視野に入れており、大きな注目を集めました。しかし、ドローン配送だけでなく、フルフィルメントセンター内のKivaが、ピッキングも含めて製造業に応用されると、作業の効率化への大きな貢献となるでしょう。
株式会社オプティムの医療機器プログラム
AI関連の話題として、株式会社オプティムが、医療機器製造業者に発行される「医療機器製造業登録証」を取得したというニュースが、2018年3月に発表されました。
背景には、株式会社オプティムが、AI技術を用いた「医療機器プログラム」を製造する予定であることがあげられます。株式会社オプティムは、佐賀大学医学部とともに、メディカルイノベーション研究所を立ち上げ、AI技術を使った眼底画像診断支援の研究を行っています。
医療機器プログラムは、疾病の診断や治療、予防のためのプログラムで、幅広い活用が期待されています。
NECのAI解析エンジン
2017年12月、NEC(日本電気株式会社)は、インバリアント分析技術というAI技術を、アメリカ合衆国の航空機・宇宙船の開発製造会社であるロッキード・マーティンの衛星・宇宙航空分野に活用すると発表しました。
インバリアント分析技術というのは、NECのAI技術群の1つです。コンピューターシステム、工場や発電所、ビルなどに設置されている数多くのセンサーからデータを収集し、稼働データモデルを自動生成するというものです。データを現実の状況と比較することで、異常を早期発見することが可能です。
この技術を、衛星・宇宙航空分野に活用することにより、宇宙環境が電子機器に与える影響を素早く把握でき、運用者の負担を軽減することが可能となります。
まとめ
製造業におけるAI技術の導入は、これらの他にもさまざまなものがありますが、ここでは特徴的で個性的なものを紹介させていただきました。いずれの場合にも、今まで人が行っていた作業をAI技術が肩代わりしてくれ、より正確で効率的な運用を測ることが可能となります。
AI技術はこれまで、第一次、第二次と技術革新のタイミングがあったといわれていますが、現在は第三次だといわれているようです。このタイミングをAI技術導入の機会と捉え、検討している企業も増加しています。