AIがすごい!テレビや雑誌をみても、 AIの文字がない日はありません。
大ブームとなっているAIについて、製造業目線で解説します。
AIとは何か
AIは人工知能のことで、「Artificial Intelligence」の略になります。
イメージとして、SF映画中にでてくるアンドロイドのように「コンピューターが自身で学習し、経験的に様々な判断をする」という状態がわかりやすいかと思います。有名なところでいうと、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の「ターミネーター」がAIそのものです。アンドロイドは工業ロボットのように決められた動きをしません。知能を持って、経験的に行動している点が大きな違いでしょう。
ただ、このAIの認識は「ディファクト・スタンダード(事実上の定義)」のようなもので、「AIとはこういうものだ」という定義付がされているわけではありません。
AIの歴史
AIという言葉は1950年代からすでに存在していました。SFの世界では書籍などでAIの存在があり、科学者もAIの研究を数多く行ってきました。
しかしながら、20世紀のAIは何度かブームになったもののすぐに下火になってしまいます。理由はやはり「人間には敵わない」からでしょう。
2011年ごろから、AIが一気に注目されるようになります。何があったのかというと、「ディープラーニング」の開発です。学会において、画像認識の研究発表においてディープラーニングの威力を研究者は見せつけられました。
ディープラーニング(深層学習)とは、人間が自然と行っている「経験学習」コンピューターが行うことです。現在このディープラーニングのおかげで、AI開発が一気に進んできています。
シンギュラリティの脅威
ちょっと先の目線で話をしましょう。
システム開発者の間では、「シンギュラリティ」の脅威が議論されています。
シンギュラリティとは「技術的特異点」という意味で、簡単に言えばAIの開発が進むと「ターミネーター」のように「AIに支配される世界になってしまうのでは」と言った未来予測のことです。
ソフトバンクの孫社長はMWC 2017の基調講演で「シンギュラリティは30年以内に起こる」と明言しています。ただし、「ターミネーター」のようなネガティブ予測ではなくAIは人間と「調和」するという考えのようです。
AIの活用事例
チャットボット
一番有名なものはiOSの「Siri」でしょう。話をするだけで、音声認識し様々な要求に答えてくれます。チャットボットはAI搭載した製品で最も多いカテゴリだと思います。
製造業において、特にバックオフィスでチャットボットは重宝されます。資料検索やスケジュール作成など普段人間がソフトウェアを立ち上げて、メンバーのスケジュールを確認して…と調整している雑業務を、チャットボットは解決してくれる可能性があります。
音声認識はまだ開発途上なので、バックオフィスで用いられるチャットボットは文字入力が主流です。
例えば、株式会社NIコンサルティングの「AI秘書」は、名前の通り秘書業務をAIが実施してくれます。テキストチャットでやってほしいことを指示すれば、AI秘書は調査し働きかけてくれます。
画像認識
製造現場において、AIを用いた不良品などの画像認識検査が導入されている事例が増えています。
例えばキューピーでは、食品のカット不良をAIで画像認識しています。今までは、作業員が目視で不良検査を行ってきました。作業員が「不良」と判断した膨大なサンプル画像をディープラーニングでAIに学習させることで画像認識をさせることができました。
画像認識させるためには、(ディープラーニング全てにも言えることですが)膨大な「教師モデル」が必要です。つまり、「不良品はこれだ」と開発者が納得いくまで教え込む必要があります。
機構設計
設計現場でもAIの導入が進んでいます。
例えばAutodeskは随分前からAIによる機構設計手法の開発を実施しています。ジェネレーティブデザインと言われる「設計の最適化手法」によって、機構設計はどんどん自動化が進んでいます。
この技術背景には、AIだけでなく「3Dプリンター」の発展もあります。
軽量・高強度の設計をAIが行ったとしても、従来の鋳型や切削加工で作ることができる形状には限りがあり実現できません。ですが、3Dプリンターはあらゆる構造を可能にします。AIと3Dプリンターは非常に相性が良いのです。
自動運転
トヨタ自動車は、2018年3月に「Toyota Research Institute Advanced Development」(TRI-AD)を発足すると発表がありました。これはつまり、AIの開発加速するために資本を投じるということです。
自動車業界においてAI開発は欠かせません。目の前に「自動運転」という課題があります。自動運転実現のためには、AIの開発は必須です。
自動運転のためには車前方のカメラから得られる情報を正確に認識し、正確に処理して、正確に処置しなければなりません。一つでも間違うと「命に関わる」ためです。
一般的なソフトウェアリリースのように、後からバグフィックスするようなソフトウェア完成度ではいけません。自動車業界に課せられたAI品質の高さは、一般人には計り知れないものです。
まとめ
AIの歴史から、実用化・課題まで幅広く解説しました。
AIは明るい未来をもたらす、素晴らしい技術だと思います。反面、人間の仕事を奪うとも言われています。少子高齢化が進む日本にはちょうどいいとは考えていますが…
AIにもチャットボットのようにフランクなレベルから、命に関わるレベルレベルまで要求が様々です。また、今後もAIを搭載した様々なアイデア・商品が生まれてくると思います。
人間の作業の置き換え、ではなく「共生」のためにどのように使っていくか、が今後企業の課題になるでしょう。