センサーの測定能力が物流とダムの品質を決める

センサーの測定能力が物流とダムの品質を決める

センサーは、異変を検知して知らせてくれる機械です。人が監視をすると疲れたり見落としたりしてしまいますが、センサーは24時間365日見張ってくれます。
そのためセンサーは、あらゆる産業の品質管理の工程で多く使われています。
しかし一口に「センサー」といっても、測定手段も測定方法も異なります。そこで今回は、かなり変わったセンサーを紹介します。
インクをセンサーに応用して物流の品質管理をしている企業があるのです。
さらに、ダムやトンネルなどの大規模建造物でも特殊なセンサーが使われているのです。

普通のセンサーとは

「変わったセンサー」を紹介する前に、「普通のセンサー」をみてみましょう。普通のセンサーを知っておいたほうが、後で紹介する2つのセンサーの意外性が際立つからです。

人を検知するのは簡単?

普通のセンサー

生活に身近なセンサーといえば、人感センサーではないでしょうか。
人が現れたら機械が動く仕掛けで、最近は自動ドアや防犯カメラだけでなく、家電や自動車にも人感センサーが搭載されています。
人は大きな物体ですし熱や音や動きなどさまざまなものを発するので、実は検知するのはそれほど難しくありません。そのため人感センサーには、光、レーダー、音波、音感、タッチ(接触)、圧力、温度などのツールが使われています。人感センサーは原則、人に光やレーダーや音波などの「何か」を当てて、「人がいる」と認識します。

食品工場では画像が活躍

画像処理

食品工場のセンサーはテレビ番組で紹介されることが多く、目にしたことがある人もいるでしょう。国民の食の安全に対する意識は高まる一方で、食品メーカーはより高度なセンサーを導入して「絶対に異物を混入させない」体制を築こうとしています。
食品工場で活躍しているのが画像センサーです。画像センサーは大まかに、カメラ、コントローラー、モニター、照明装置の4つの部品で構成されています。
画像センサーのカメラには、CCD素子やCMOS素子などの撮像素子(さつぞうそし)が組み込まれていて、これが光をデジタル信号に変えます。
例えばフランス国旗は「赤い光」と「白い光」と「青い光」を発していますが、撮像素子はこれを「赤というデジタル信号」「白というデジタル信号」「青というデジタル信号」に変換するのです。デジタル信号にすれば、コンピューターが「赤(または白または青)」と認識できます。
画像センサーは色だけでなく、形、長さ、幅、位置も把握できます。
食品工場に画像センサーを導入すれば、食品の劣化や焼きすぎ、異物、パッケージの異常などを自動で検知できます。
こうしたセンサーは生活に密着していますし情報も豊富なので、理解しやすいと思います。
それでは次に「知られざるセンサー」を紹介します。

温度で色が変わるインクを物流センサーに応用

温度で色が変わるインク

日立はインクをセンサーに応用する技術を開発しました。光でもレーザーでも画像でもなく、物体に文字や絵を描くあのインクで物体を測定しようというのです。
このインクセンサーのポイントは次の4点です。
・温度で色が変わるインクを開発した
・物流の過程で使われる
・スマホと連動させて異常温度の場所を特定できる
・コストが安く仕組みが単純
それでは1つひとつみていきましょう。

温度で色が変わるインクを開発した

そのインクは「温度検知インク」といいます。設定した温度範囲内に収まっていれば色が変わらず、設定温度範囲を上回ったり下回ったりしたら色が変わる性質を持っています。日立によると、設定温度を下回ったときに色を変えることに苦労したそうです。
温度検知インクはマイナス20度から60度までの間で、2度刻みで設定できます。
例えば、ある食品を常にマイナス1度から3度の間に保っておきたい場合、「-1度~3度」と設定した温度検知インクをその食品が入った段ボールに貼り付けておきます。その食品がマイナス2度の場所に置かれたり、4度の場所に置かれたりしたらインクの色が変わって「設定温度以外の温度環境にさらされた」ことがわかるわけです。
インクの色は設定温度から離れるほど濃くなります。また一度インクに色がついたら、再び設定温度内の場所に置かれても色は消えません。
異常な温度にさらされた証拠が残るわけです。

物流の過程で使われる

日立はこの温度検知インクを、物流過程で使うことにしました。物品は、メーカーの工場からトラックで保管庫に移され、さらにトラックで販売店に移されます。
物流は「長い旅」になることがあるので、異常温度にさらされたかどうかを追跡することは困難を究めます。

そこで物品が入った段ボールに温度検知インクを貼り付けておけば、正しい温度管理下にあったかどうかがわかるわけです。
しかしこれだけでは、いつどこで異常温度にさらされたかはわかりません。日立はその対策も考えています。

スマホと連動させて異常温度の場所を特定

日立は、温度検知インクと商品IDコードを組み合わせた「温度検知コード」をつくりました。そしてこの温度検知コードを製品段ボールに貼り付け、物流過程のチェックポイントでスマホで撮影するようにしたのです。
スマホで撮影したときに、スマホに内蔵している位置情報や時間なども記録できます。
これにより、どこでどれくらいの温度異常があったかがわかるというわけです。

コストが安く仕組みが単純

日立がインクとスマホにこだわったのは、コストが安く済み、仕組みが簡単だからです。
すべての段ボールに温度データを保存できる温度計を貼り付けることはできませんし、画像センサーなども高価です。その点インクならば、いわば「特殊な水」を大量につくるだけで済むので安上がりです。
さらにスマホという誰でも持っていてどこでも使える便利グッズを使うことによって、初めて温度検知コードを扱う人でも直感的に操作できるようにしたのです。

コンクリートにセンサーを設置して劣化しにくいダムをつくる

コンクリート センサー

次に紹介するセンサーは、工学の権威たちが絶賛しています。
東京大学大学院工学系研究科の野口貴文教授(建築学)はこのセンサーについて「コンクリート構造物の信頼を取り戻し、建設業を魅力的な産業へと変革する」とまで述べています。
また、京都大学大学院工学研究科の宮川豊章教授(社会基盤学)も「品質管理の高度化、精緻化を可能にし、今後のコンクリート品質管理の方向性を示唆する」と高く評価しています。

型枠の温度を測定する意味とは

そのセンサーとは、建築資材専門商社、児玉株式会社(本社・大阪市)が開発した「スマートセンサ型枠システム」です。ダムやトンネルなどのコンクリートの異常を検知するものです。
型枠とは、コンクリート構造物の形をつくるための建築資材です。型枠のなかにコンクリートを流し込み、コンクリートが固まって型枠を外すと思いどおりの形ができあがります。
児玉はこの型枠に、「①コンクリートの表面温度を測定するセンサー」と「②周辺の温度を測定するセンサー」と「③型枠の姿勢を検知するセンサー」と「④これらのセンサーを動かす大容量電池」からなる「スマートセンサ型枠システム」を取りつけたのです。
各センサーが集めたデータは無線でパソコンに取り込まれるので、建設会社は24時間コンクリートの状態をモニターできます。温度はコンクリートの強度に大きな影響を及ぼすので、リアルタイムで温度がわかれば、必要に応じてコンクリートを養生したり型枠を外すタイミングを調整したりできます。
そうした細かい調整を施すことで、コンクリート構造物を長寿命化できるのです。

まとめ~休まずデータ収集することが重要

工業製品や建造物は、環境の変化によって品質にばらつきがでてしまい、ときに不良品になることもあります。そこで日立のインクセンサーも、児玉の型枠センサーも、どちらも休まずデータを収集し続けているのです。
すなわちセンサーで測定すればするほど、センサーの数を増やせば増やすほど、品質は向上するということになります。
日本製品の高い品質は、センサーにも支えられているのですね。

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ライター紹介
ライタープロフィール
アサオカミツヒサ

フリーライター、ライティング事務所office Howardsend代表。北海道大学法学部を卒業後、鉄鋼メーカー、マスコミ、病院広報などを経て2017年独立。取材した分野は、地方政治、地方経済、過疎化、ワーキングプアなど。現在の執筆領域はIoT、AI、産業一般、人事制度、金融、最新抗がん剤、生活習慣病治療など。趣味はクルマとバイクと登山。北海道釧路市在住。

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