光電子増倍管の基礎知識まとめ

光電子増倍管の基礎知識まとめ

光電子増倍管とは何か

光電子増倍管とは、微小な光を電気信号に変換する検出器であり、光分析や環境測定、医療用装置から、高エネルギー物理実験など幅広い領域で用いられています。
光電子増倍管を用いるメリットとして、大面積の測定でも高速で計測が可能であることや、供給電圧を変更することで様々な動作レンジを実現することができることが挙げられます。
今回は、光電子増倍管の動作原理および、目的に応じた選び方について解説します。

光電子増倍管の基本構造と動作原理

以下では光電子増倍管の構造と動作原理を簡単に説明します。

光電子増倍管の基本構造

光電子増倍管は、大きく分けると光電面と呼ばれる、一次電子を発生させる「光電面-Photocathode」と、発生した一次電子を増幅する「電子増倍部- Focusingelectrode」から成り立っています。
光電面はバイアルカリやマルチアルカリと呼ばれる金属を用いており、微小な光を当てることで電子を発生させます。
光電面に続く電子増倍部では、いくつかのダイノード電極の間に電圧が生じており、光電面で発生した電子を加速させダイノードに衝突させます。
この衝突により、多くの二次電子-Electronsが極板から叩き出され電子が増幅します。
この過程を何度か繰り返すことによって、微小な光から検出可能な電気信号を発生するのです。
さらに光電子増倍管の外側にはデバイダ回路と呼ばれる信号整形用の回路が接続しており、最終的にはアナログ信号を出力しています。

光電子増倍管の実用例

分析化学における光電子増倍管の実用例として「光分析装置」を挙げることができます。
光分析装置では、ある波長の単色光を資料に照射し、反射または透過した光を光電子増倍管で検出することで、試料の物性をあらわす透過スペクトルや反射スペクトルを調べることが可能です。

環境測定の分野では、「レーザレーダ(LiDAR)」や「NOx分析計」に用いられています。
レーザレーダ(LiDAR)は、大気中の浮遊物に照射した散乱光を光電子増倍管で検出することで、立体的な空間分布を作成する技術です。

レーザーレーダー 参考図

「NOx 分析計」は、光化学スモッグの原因ともなる大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)の濃度を測定する計測器です。

光化学スモッグ

(著作権者:Fidel Gonzalez、ライセンス:CC BY-SA 3.0 出典元:リンク

また、医療用装置の分野ではがん腫瘍を断層イメージとして検出することで早期診断に役立つ「PET装置」、「ガンマカメラ」などに応用されています。

「PET装置」、「ガンマカメラ」

(著作権者:Brendaicm、ライセンス:CC BY-SA 3.0 出典元:リンク

他にも、素粒子原子核実験における物理現象の信号読み出しでも光電子増倍管は使用されており、小柴昌俊教授のノーベル物理学賞受賞をもたらした巨大実験装置スーパーカミオカンデや、宇宙線測定のCTA(大気チェレンコフ光望遠鏡)などの検出器は光電子増倍管で構成されています。
このように、光電子増倍管は化学・環境・医療の各産業界や、高エネルギー物理実験といった広範な領域で使用されています。

光電子増倍管の各モデル

光電子増倍管の有名な国内メーカーは「浜松ホトニクス」と「松定プレシジョン」です。海外では、「RCA(アメリカ・ラジオ会社、現在はテクニカラー社の登録商標)」、「Burle Industries」、「Thorlabs」などが知られています。
光電子増倍管の製品には、光電子増倍管単体のみだけでなく光電子増倍管とデバイダ回路を組み合わせたアッセンブリ型などいくつかの種類があります。
また使用時の周囲の環境(温度耐性、磁場耐性など)や、信号の要求性能に応じて様々なモデルが用意されています。
価格は各モデルの性能にも依存しますが、20万円から50万円程度です。
単体の光電子増倍管には「ヘッドオン型」と「サイドオン型」が存在します。
ヘッドオン型は、バルブの頭部から光を入射させるタイプです。入射窓の内側に光電面が直接取り付けられているため、光源からの均一な入射への応答に優れています。

光電子倍増管 ヘッド型

サイドオン型は、即抵抗をバルプの側面から入射させるタイプです。増倍率が高く、低コストが可能であるため、一般的な測光システムによく使用されています。

光電子倍増管 サイドオン型

(著作権者:ScAvenger、CC BY-SA 4.0: 出典元:リンク

また、その他にはメタルチャンネルダイノードと呼ばれる回路の搭載により高速応答を実現し、マルチアノード化と小型化を実現したメタルパッケージ型と呼ばれるタイプなどもあります。
光電子増倍管の選択にあたって重要な点は、測定の用途に応じて最適な製品を選ぶことです。

粒子の飛行時間の測定のように高速応答が求められる場合は、浜松ホトニクス製ハイブリッドアッセンブリH2431-50のようなデバイダ回路を用いて、信号の立ち上がり時間を短くしたタイプが適しています。
また、温度や磁場など周囲の動作環境を考慮することも必要です。
例えば、磁場耐性が求められる環境では、ダイノード構造をファインメッシュと呼ばれる構造に整形することで磁場耐性を向上させた浜松ホトニクス製H6614-70高磁界用アッセンブリが適しています。
また、測定する光源の強度によって光電子増倍管を使い分けることも可能です。蛍光を用いた測定など、低強度の信号を測定するには、Thorlabs製PMT2101/MなどGaAsP光電陰極を用いることで通常のアルカリ金属を用いた光電面よりも入射光の感度を大きくしたタイプを使用します。

まとめ

光電子増倍管は産業界や、高エネルギー実験などで使用されている検出器であり、高速応答での測定や、幅広い動作電圧といったメリットがあります。
購入する際は、計測の用途に応じて、口径・管径といった情報はもちろん信号の立ち上がり時間や走行時間といった時間特性、動作電圧に注意して製品を絞り込みましょう。
特殊な環境下で使用する場合には、温度・磁場耐性なども要チェックです。

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都内在住の大学院生です。最近の趣味は古墳散策と読書です。よろしくお願いします。

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