マルチ環境計測器について

マルチ環境計測器

マルチ環境計測器は、人(や動物や植物など)が生活や作業をする空間における温度・湿度・風速・照度などの測定が1台でできる装置です。この計測器で測定できる主な量は「温度・湿度・風速・照度」の4種類ですが、機種によっては、大気圧、騒音、露点、二酸化炭素量、高度や方位などが加えて測定できる機器もあります。

用途

マルチ環境計測器

(著作権者:Bruno Sanchez-Andrade Nuño、ライセンス:CC BY 2.0 出典元:リンク

主な用途としては次のようなものが考えられます。温度・湿度計機能では、冷凍・冷蔵庫、倉庫、工場やプラントなどの温湿度管理ができます。また風速計機能では、空調機や空調用ダクトの風速測定、粉体輸送ダクトの風速管理や工場ダクトの風速測定ができます。そして照度計機能では、屋内で作業するための手元の明るさや夜間の防犯における外灯の明るさの測定、さらにはマンション共用部の(国土交通省で決められている)照度指針に適切かの判断などにも使えます。
このように「室内・屋外環境のチェックと改善」、「空調設備の保守・点検」、「工事現場や工場の環境改善」、「交通騒音チェック」、そして「研究・開発用」など、人(や動物や植物など)がいる環境が適したものであるかどうかを判断する際に使用します。
機器ごとに測定項目や測定できる範囲(レンジ)が異なりますので、用途にあったものを選ぶ必要があります。

計測の原理と測定できる範囲

ここでは主な計測機能である「温度・湿度・風速・照度」の計測原理と測定できる範囲についてご紹介します。

温度

温度
マルチ環境計測器で主に使われている温度計は「サーミスタ」と「熱電対」です。
まず「サーミスタ」は温度変化に対して電気抵抗が大きく変化する抵抗体のことで、特性によってNTC ( negative temperature coefficient )、PTC ( positive temperature coefficient )と、CTR ( critical temperature resistor )の3つに分類されます。温度測定には、主に温度の上昇につれて抵抗値が減少するNTCサーミスタが用いられます。NTCサーミスタが測定できる温度範囲は一般的に-50〜150℃程度と、使用できる温度の範囲が狭いのが特徴で、常温付近で使用する家電、自動車、OA機器等に用いられています。
次に「熱電対」は、2種類の異なる金属を接続して、接点に温度差を与えると回路に電流が流れるという現象を利用した温度センサーのことです。サーミスタや水銀計などと比較して「応答が早い」、「熱起電力が大きい」、「耐熱・耐食性が高い」そして「安価」などという特徴があります。マルチ環境計測器に使われる熱電対は、工業用として最も多く使用されている「K熱電対」が多く見られますが、使用できる温度範囲は-200~1000℃程度です。
人がかろうじて居られる温度範囲の測定は、サーミスタを用いた温度計で測定できますし、環境として極端に低い・高い温度の測定をする場合はK熱電対を用いているマルチ環境計測器を使用するとよいでしょう。

湿度

湿度
湿度を電気的に計測するには、吸湿材の電気特性の変化から湿度を決定する方法があり、高分子静電容量式と高分子抵抗式の2つがあります。各々の特徴としては、静電容量式の場合は、「応答速度が早い」、「高温・低温領域で使用できる」そして「低湿度測定に優れる」というのがあります。他方、電気抵抗式の場合は、構造が簡単で安価など優れた特性もあるのですが、原理上、湿度10〜20%以下の測定ができないことから、現在は静電容量式が電気的湿度計測の主流となっています。
マルチ環境計測器も静電容量式で湿度を測定するものが多く、測定できる湿度の範囲は、10〜95%がほとんどで、精度は±2〜4%です。したがって精度が必要な測定の場合には、温度センサーを用いた補正機構を持つものを選ぶ必要があります。

風速

風速
マルチ環境計測器で使われている風速計には、「ベーン式」、「熱線式」そして「ピトー管式」などがあります。
「ベーン式」は3〜4枚の羽で風を受けて風の力で羽を回して風速を測定します。マルチ環境計測器に小さい丸い風車が内臓されているタイプはこれです。測定範囲は低・中風速の1〜50m/sあたりです。
「熱線式」では、電圧を加えて発熱させたワイヤーに風を当て、風による冷却と電圧を加えることによる発熱が、平衡する際の温度から風速を求めます。プロペラや羽などを回す必要がないので、1m/s以下の微風測定に向いています(例えば空調機の風速測定など)。測定範囲は、およそ0.05〜50m/sです。
「ピトー管式」は、直角に曲がった細い管状のプローブがついています。ピトー管には、風の流れに対して正面と直角方向に小さな孔があり、それぞれの孔から別々に圧力を測定します。正面からの圧力を「全圧」、直角方向の圧力を「静圧」といい、その圧力差をマイクロマノメーターで測定して風速を求めます。測定範囲は約5〜100m/sです。

照度

照度
照度計は、光電効果(光を照射すると半導体中の電子が励起される)を利用した「フォトレジスタ」や「フォトダイオード」を用い、光のエネルギーを電気信号にかえることによって測定することができます。
例えば、照明器具の直下はとても明るいですが、照明から離れると暗くなります。こういった「明るさ」については「照度」で表されています。照度の単位はlx(ルクス)またはlm/m2(ルーメン/平方メートル)です。参考までに、自然環境における照度はこのようになっています。晴れた日の日向では10万lx、日陰は1万lx、室内の明るいところで100〜200lx、部屋の隅では20lx、満月の夜の明るさは0.2lx、そして月のない夜の明るさは0.0003lxです。
マルチ環境計測器で測定できる照度の範囲は、プローブの精度にもよりますが、1lx以下の照度を精度よく測定するというものよりも、0〜2000lxとか0〜2万lxという範囲が主流です。シリコンダイオードを用いた照度計の場合は0〜10万lxまで測定できるものもあります。

メーカー・価格帯について

マルチ環境計測器を取り扱う主なメーカーは4社あります。「株式会社マザーツール」は、デジタル計測器の製造・販売を手がける国内メーカーで、「株式会社カスタム」は、ハンディタイプの現場測定器を中心とする汎用電子計測器メーカーです。また「株式会社テストー」は、ドイツに本社を置く環境計測器メーカー Testo SE & KGaA の日本法人です。最後に「株式会社FUSO」は、環境測定機などの製造メーカー(国内)で、研究用・産業用理化学測定機器の製造販売を50年以上手がけています。
測定結果をデジタル表示するだけのマルチ環境計測器本体の価格はどのメーカーも1万〜3万円ですが、オプションでプローブをつけないといけない場合があります。プローブの価格は1〜8万円と、精度や測定範囲によって様々です。また測定結果をプリントアウトしたり、SDカードなどの記憶媒体に保存できるタイプになると、本体価格がぐんと上がり4万〜15万円になります。中にはデータを転送してスマートフォンで受信できるタイプのものもあります。

まとめ

まずマルチ環境計測器の用途についてご紹介し、次に計測できる主な環境量である「温度・湿度・風速・照度」の計測原理と測定できる範囲についてご紹介しました。マルチ環境計測器は主に国内メーカーによって製造されており、測定結果を表示するだけのタイプは1〜3万円と安価ですが、結果を記憶できる場合は4〜15万円と高価になります。またプローブが別売りの場合もありますので、機種選定をする場合に注意が必要です。

中古計測器、測定器を売買したい会社様へ

当サイトはAnyble(エニブル)株式会社が運営しております。 法人間で中古計測器、測定器を直接売買できるプラットフォーム【Ekuipp(エクイップ)】を提供しております。 興味がある会社様ははこちら↓。登録料は無料です。

パソコン用の画像:法人間で中古計測器、測定器を直接売買できるプラットフォーム 【Ekuipp(エクイップ)】 スマートフォン用の画像:法人間で中古計測器、測定器を直接売買できるプラットフォーム 【Ekuipp(エクイップ)】

ライター紹介
ライタープロフィール
藤井暢子

小規模農業従事者、野菜ソムリエプロ、野菜栽培士。京都生まれ。大阪市立大学理学部物理学科卒業、京都教育大学大学院修了、大阪大学大学院理学研究科物理(単位取得後卒業)、2004年博士(理学)。大阪大学産業科学研究所勤務を経て、化学系の研究開発会社に8年間勤務後、2012年より農業者へ転身。実父とともに、自然農、自然栽培、無肥料、自家採種をキーワードに京都郊外で野菜を作り、地元カフェや地方家庭などへ提供している。物理と化学の研究経験をもとに、畑の研究を新しく展開するべく日々研鑽中。生物物理の研究者の夫、5歳の一人息子と同居。

計測器、測定器紹介
Ekuipp(エクイップ) Magazine