天気から社会まで測定するヴァイサラ社とは

天気から社会まで測定する ヴァイサラ社とは

ヴァイサラ株式会社は、フィンランドの「Vaisala Oyj」(以下、ヴァイサラ社)という会社の日本法人です。
ヴァイサラ社は気象を測定する機器を製造する会社ですが、その技術を応用し、いまは産業分野やインフラ分野にも進出しています。
これから紹介するヴァイサラ社のビジネスを知ると、「ヴァイサラ社が測っていなかったら、世の中のビジネスはスムーズには回らないのではないか」と感じるのではないでしょうか。
ヴァイサラ社は天気から社会までありとあらゆるものを測り続けている会社です。

ヴァイサラの歴史

数式 黒板

ヴァイサラ社は、数学博士でフィンランド中央気象研究所に勤務していた、ヴィルホ・ヴァイサラ教授(1889~1969年)が1930年に創設しました。「教授」という呼称がついていますが大学の教員ではなく、ヴァイサラ社の社員たちがそのように呼んでいたことに由来します。

数学者の気象研究員が起業

ヴァイサラ社の最初の製品はラジオゾンデでした。ラジオゾンデとは、ゴム気球に測定機器をつけて飛ばし、数十キロの上空の気温、湿度、風向き、風速を測る装置です。日本の気象庁もラジオゾンデ方式で気象観測していて、南極の昭和基地でもラジオゾンデを飛ばしています。

ヴァイサラ氏は、ラジオゾンデのセンサーに「可変静電容量の原理」を用いて性能を格段に向上させました。フィンランド国内のみならず国際的な評価を得るようになり世界から注目されるようになりました。1936年には「世界の知」が集まる米マサチューセッツ工科大学にラジオゾンデを納品しました。

ヴァイサラ氏は生涯に100本以上の学術論文を発表し、「教授」の名に恥じぬ研究・開発を行いました。特許も10件取得し、発明者としても秀でています。

光るビジネスセンス

またヴァイサラ氏は優れたビジネスパーソンでもあり、社員に次の要素を身につけるよう指導していました。

  • 創造性
  • 品質重視
  • 仕事に対する情熱
  • 専門能力に対する誇り
  • 自身の能力に対する信念

ヴァイサラ社のラジオゾンデは性能が優れていただけでなく、構造がシンプルで耐久性があり、価格も妥当だったことから高い評価を獲得することができたのです。
高品質低価格は、日本のモノづくりの重要テーマでもあります。
ヴァイサラ氏のビジネスセンスはこれだけにとどまらず、風速計などを開発して同社を気象測定機器メーカーに成長させただけでなく、聴診器をつくって既に医療分野への多角化も進めていたのです。
ヴァイサラ社が90年も生き残ってこられたのは、創業者の優れた開発センスとビジネスセンスを受け継いできたからではないでしょうか。

ヴァイサラのお家芸、気象を測る装置

数式 黒板

次にヴァイサラ社の「お家芸」ともいえる気象観測機器を紹介します。

過酷な現場でも15分で稼働。軍用にも使える気象観測機器

「TacMet戦術気象観測システムMAWS201M」は、風向、風速、気圧、気温、相対湿度、降水量を1台で測定する機器です。
なぜ「戦術」という「いかつい」名称がついているかというと、どこででも気象観測ができるからです。重量は約46㎏なので最低2人の作業者がいれば車で持ち運びできます。
MAWS201Mはマイナス50度の極寒のなかでも、プラス60度の灼熱のなかでも作動し、機器を持ち運んでから稼働させるまでに15分しかかかりません。通常の電力のほかソーラーパネルでも動くようになっています。
「測ること」以外にこれだけの機能を備えているので、過酷な現場でも難なく気象観測できます。
ヴァイサラ社はこのMAWS201Mを防衛機器として位置付けています。天候は軍事作戦の成否を握る重要な情報です。それでMAWS201Mは、過酷な環境に耐えられるように設計されているのです。

「困った気象」だけを追う専用機

気象レーダーWRM200は気象監視機器です。この機器が「できること」は次のとおりです。

  • 悪天候のモニタリング
  • 洪水予測に必要な水文気象観測
  • 空港でのウィンドシアの検知
  • ハリケーン、台風、サイクロンの追跡

一言でいうと「困った気象をいち早く測定する機器」です。
ちなみに「水文気象」とは、河川の水位や流水量などのことで、洪水を予測して住民を避難させるには欠かせない情報となります。「ウィンドシア」は局地的な風速の急激な変化のことで、空港でウィンドシアを検知することで航空機事故の予防に役立てるわけです。

75㎞先の「見通しの悪さ」を測定し原因を突き止める

視程・現在天気計FS11Pは、飛行場の滑走路や道路などに設置して使います。視程・現在天気計とは「視程計と現在天気計の機能を併せ持っている」という意味です。いずれの計測機器も耳慣れないと思いますので、詳しく解説します。
視程計は、見通しがきく距離を測定する機器です。「見通し」は雨や霧、もや、大気汚染物質などによって変わってきます。視程計は空中の光の散乱具合や光の強度を測り、見通しを計算しているのです。
FS11Pは最長75㎞までの視程を計測できるのですが、成田空港の滑走路でも4㎞ほどしかありません。つまり空港の敷地内にとどまらず、かなり遠くまで見通しを計測することができるのです。
現在天気計とは文字通りいまの天気を測定するもので、FS11Pは「雨、氷雨、霧雨、着氷性霧雨、みぞれ、雪、雹(ひょう)、霧、ミスト、煙霧、降水なし」を見分けます。
視程計と現在天気計がドッキングしているとどのようなメリットがあるかというと、視程が落ちている(見通しがきかなくなっている)ことと、何が原因で視程が落ちているのかが、同時にわかります。
空港の滑走路も道路も、見通しが悪さは大事故につながります。そこで視程・現在天気計を使って、現在の見通しの悪さが一時的なものなのかしばらく継続するのか予測し、運航や運行をコントロールするわけです。
FS11Pはアメリカの連邦航空局が採用するほどの優れた性能を持っています。

ヴァイサラは産業も測る

水滴 ガラス

ヴァイサラ社の製品は気候だけを測定しているのではなく、産業現場でも活躍しています。

レンガのなかの水分を測る

ヴァイサラ社は「天気を測定できれば何でも測定できる」と考えたのでしょう。ヴァイサラ製品は、レンガやタイル、石膏ボードをつくる工場でも使われています。
タイル工場などで何を測定しているかというと、水蒸気です。タイルもレンガも石膏ボードも、水気を含んだ材料を焼いたり乾燥させたりしてつくります。いずれも製品に含まれる水分量が品質を決めます。水分が多すぎると強度が出ませんし、水分が少なすぎると耐火性が落ちてしまうからです。
ヴァイサラ社の水蒸気計測機は、製品を直接測るのではなく、製品を乾燥させている場所の空気中の水蒸気を測ることで、製品内の水分量を予測します。

省エネビルづくりに役立つ湿度温度計

ヴァイサラ製品のなかには、「大は小を兼ねる」コンセプトのものがあります。
「HUMICAP HMW90シリーズ 一般空調向け湿度温度変換器」は、単なる湿度温度計ではありません。測定した湿度と温度のデータを集め、継続的にモニタリングできます。
さらに測定する場所の標高や気圧などを計算し、湿度や温度のデータを補正することもできます。
これだけ厳格に湿度と温度を管理する必要がある現場とは、ビルディングです。
日本は国際的な環境ルールであるパリ協定を批准しているので、国土交通省や環境省は建設会社に対し省エネビルをつくるよう指導しています。そのため建設会社はビル内の湿度と温度を正確に測定して、空調設備をコントロールしなければならないのです。
ヴァイサラ社は地球の湿度と温度を長年測ってきました。なので、地球よりはるかに小さいビル内の湿度と温度も正確に測ることができるのです。

インフラを測って社会の安全を図る

ヴァイサラ社の製品は社会インフラも計測しています。
例えば病院は、ビルディング以上に湿度と温度を厳格に管理しなければならない建物です。病室、手術室、新生児室などの湿度と温度は患者や赤ちゃんの健康に大きな影響を及ぼすからです。また薬剤やワクチンや輸血用の血液、患者から採油した組織などの保管でも、厳格な湿度・温度管理が必要です。
ヴァイサラ社には、病院全体をモニタリングする「環境モニタリングシステム」があります。
さらに、先ほど紹介した空港、道路のほか、鉄道事業でも線路や送電線の凍結を検知するシステムを開発しています。
測定は「異常の検知」にほかなりません。病院も空港も道路も鉄道も、異常が発生したら大事故につながる場所なので、いくつも測定機器が必要になるのです。

まとめ~なんでも測っているから安全

ヴァイサラ社の仕事を見渡すと、人が活動できているのは、誰かが「なんでも測定している」からだと実感します。もしヴァイサラ社をはじめとする測定機器メーカーがいなかったら、各地で事故が起きていたでしょうし、無駄も多く発生していたはずです。

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ライター紹介
ライタープロフィール
アサオカミツヒサ

フリーライター、ライティング事務所office Howardsend代表。北海道大学法学部を卒業後、鉄鋼メーカー、マスコミ、病院広報などを経て2017年独立。取材した分野は、地方政治、地方経済、過疎化、ワーキングプアなど。現在の執筆領域はIoT、AI、産業一般、人事制度、金融、最新抗がん剤、生活習慣病治療など。趣味はクルマとバイクと登山。北海道釧路市在住。

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