ノーベル賞の田中さんがいる島津製作所は「とにかく測る」会社

ノーベル賞の田中さんがいる 島津製作所は「とにかく測る」会社

「測る」メーカーといえば、島津製作所です。分析計測機器は、同社の柱の事業です。
世の中にはさまざまな「測らなければならないもの」があるので、島津もたくさんの計測機器をつくっているのですが、今回紹介したいのは分光光度計と液体クロマトグラフィーです。
島津は2016年にマレーシアに工場を建て、この2製品をそこでつくることにしたのです。
分光光度計と液体クロマトグラフィーは、一体「何を」測り、それを測ると「何が」わかるのでしょうか、詳しくみていきましょう。
「しまづせいさくしょ」という企業名に聞き覚えはありませんか。そうですノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんが在籍している企業です。田中さんはいまでも同社の現役の開発者で、最近もある「ものすごい計測装置」をつくりましたので、それも紹介します。

島津製作所はこのような会社

京都 イメージ

島津製作所は明治8(1875)年創業の、超老舗メーカーです。本社は京都市にあります。日本で初めて人を乗せた気球を飛ばしたり、日本初の医療用X線装置をつくったりと、発明企業として知られています。分析計測機器以外の事業の柱には、医療用画像診断機器と航空・産業機器があります。
今回注目する分析計測機器は医療、製薬、食品、飲料、環境、石油、化学、自動車、機械などのあらゆる分野で使われています。メイド・イン・ジャパンの製品が正確なのは、島津の計測器がしっかり測っているから、といえなくもないのです。

マレーシア工場で何をつくっているの?

マレーシア クアラルンプール ツインタワー

島津の製造拠点は国内は京都や神奈川などに5つあるほか、海外にもアメリカ、ブラジル、中国、ドイツ、イギリス、ロシアなどにあります。
その島津が2016年に建てたのが、マレーシア工場「シマズ・マニファクチャリング・アジア」です。工場の場所は、首都クアラルンプールから車で90分ほどのセンダヤンという地域で、投資額は23億円に及びます。
島津はここで分光光度計と液体クロマトグラフィーをつくるのですが、なぜこの2つの計測機器に力を入れているのでしょうか。
普段の生活でみかけることがないこの2つの計測機器の「使い道」を知ると、国内外の産業に大きな意味があることがわかります。

分光光度計は「何を」「どう」測るの?

バナナ

分光光度計はその名のとおり、光を分けて光の度合いを測る(計る)計測機器です。
あらゆる物質は特有の光を放っているので、光を測るとその物質を特定できるのです。光で物質を特定することの「すごさ」は次の章で紹介するとして、本章では分光光度計が、光をどのようにして測っているのかを解説します。
光で物質を特定することは、人でもできます。例えば緑色のバナナはまだ身が硬くて食べることができず、黄色のバナナはちょうどよい味になっていて、黒いバナナは腐っているので食べることができません。
なぜ、同じバナナなのに色が変わるのでしょうか。それは「物質の状態が変わったから」です。ではなぜバナナという同じ物質なのに「状態が変わると色が変わる」のでしょうか。
それは光の吸収に差が出てくるからです。
日の光は無色です。これを白色光というのですが、実はいろいろな色が混ざった結果、無色になっているのです。そしてあらゆる物質は、白色光を浴びると「自分」が好きな色を吸収してしまうのです。これを「光の吸収」といいます。
白色光のなかからある色だけが取られてしまったので、その光はもう無色(白色)ではありません。つまりある物質が白色光を受け、それをはね返したとき、その光には色がついてしまうのです。
例えば若いバナナは、白色光(日光)を浴びると、緑以外の色を吸収するので緑の光を発します。光を受けた物質がはね返した光の色のことを補色といい、この場合「若いバナナの補色は緑」と表現します。ちょうど食べごろのバナナは黄色以外の色を吸収するので、補色は黄色です。熟れすぎたバナナの補色は黒です。
つまりある分光光度計が緑、黄、黒を見分けることができれば、その分光光度計はバナナの熟れ具合を調べることができる検査機器になるわけです。

分光光度計で「何が」分かるの?

水道水

分光光度計の原理がわかったところで、次にこの機器が何の光の色を測定して、世の中にどのように役立っているのか、みてみましょう。
ある地域の水道水が「鉄分の含有量が多すぎるかもしれない」という疑いがあったとします。しかし鉄分が多いといっても赤く濁るほどではなく、肉眼では透明にしか見えません。そのようなとき、鉄に反応して色が出る試薬(発色試薬)を使うのです。
鉄分の含有量が多すぎると疑われている水道水と、鉄分の含有量が基準値の水道水の両方に発色試薬を入れると、どちらにも鉄分が含まれているので色がつきます。ただ鉄分の濃度が違うので、着色された水の色の濃さは微妙に違います。
この2つの水に光を当てて、その水を通過した光を分光光度計で測れば、「疑わしい水道水に何パーセントの鉄が含まれているか」がわかるのです。
島津の分光光度計は水質チェックのほかにも、次のようなシーンで使われています。
・薬の製造過程で表面が変色することがあったが、薬の成分が変色しているのか、着色成分が変色しているのかが特定できなかった。そこで分光光度計で測定したところ、原因がわかった。

  • 血液中の金属の量を測定できた。
  • 品質管理の現場で金属に含まれる不純物の量を測定できた。
  • 冷凍ピザに付着した黒色の異物を特定できた。
  • 生肉に含まれる保存料の量を測定できた。
  • キャンディのなかのビタミンCの量を測定できた。
  • バイオディーゼル燃料のなかの金属の種類を分析できた。

分光光度計は、医薬、食品、化学、環境といったあらゆる分野で、物質の特定や異物の状態把握に使われています。

液体クロマトグラフィーは「何を」測るの?

液体 実験

液体クロマトグラフィーのクロマトとは、ギリシャ語で色という意味です。グラフィーはやはりギリシャ語で記録という意味です。つまり液体クロマトグラフィーは、色を記録する装置です。
液体クロマトグラフィーが解明するのは次の3点です。

  • 液体のなかにどのような成分が含まれているのか
  • 何種類の成分が含まれているのか
  • それぞれの成分はどれくらいの量が含まれているのか

例えばある液体にA、B、Cの3つの成分が入っていたとします。成分の名称と成分の数と成分の量を特定するには、ろ紙でろ過したり、液体を沸騰させて蒸留したりする方法があります。
クロマトグラフィーは、ろ過や蒸留と同じく成分を割り出す装置ですが、手法が異なります。
クロマトグラフィーが開発されたのは、1900年代初頭のロシアでした。ある植物学者が透明の細長いガラス管に炭酸カルシウムの粉を詰め、その上から石油エーテルという液体を流し込みました。すると、炭酸カルシウムの粉が、ある部分は赤く、ある部分は青く、ある部分は緑にと「色の層」ができたのです。つまり、色の違いは成分の種類の違いであり、層の厚さはその成分が含まれている量を表しているのです。
色が分かれるのは、石油エーテルに含まれる成分A、B、Cが、炭酸カルシムに触れるとそれぞれ異なる反応を起こすからです。また色の層ができるのは、A、B、Cが炭酸カルシウムのなかを流れる速度が異なるからです。速く流れる成分はガラス管の下に速く到着し、遅く流れる成分はガラス管の上部にとどまるのです。
現代の液体クロマトグラフィーも原理は同じで、成分を知りたい液体を分離して、分離した成分を検出器で測定し、その測定値をコンピュータで解析し成分名と含有量を算出しています。

液体クロマトグラフィーで「何が」分かるの?

島津の液体クロマトグラフィーは、薬のなかのナノレベルの大きさの成分を解析するときに使われています。また食品分野では、香や風味なども測定しています。
さらに水道水に含まれる臭素酸という発癌物質の量も測定することができます。
こちらも、先ほどみた分光光度計同様に、新製品の開発や生活環境の保全に役立っています。

田中さんの実績

老人 アルツハイマー リスク

2018年2月、島津製作所が画期的な「測定」を発表しました。血液中の成分を測るだけでアルツハイマー病を早期発見できるようになる、というのです。この「測定」に使われた技術こそ、ノーベル化学賞の田中耕一さんが発明したものなのです。
アルツハイマー病を発症すると、脳にペプチドという物質がたまります。しかしペプチドには複数種類があって、どのペプチドがアルツハイマー病と関連しているのか見分けがつきませんでした。
ところが島津が開発した新しい測定器は、複数のペプチドの質量を量ることができるのです。質量の違いによって「なんのペプチドか」がわかるのです。
もしアルツハイマー病に関係するペプチドが血液中に多く含まれていれば「アルツハイマー病の予兆かもしれない」とわかるわけです。現在、実用化に向けた開発が進んでいます。
田中さんのノーベル化学賞の受賞理由は、「質量分析のためのソフトレーザー脱離イオン化法の開発」です。この開発により、タンパク質を壊さないでイオン化することができるようになりました。病気の診断や新薬開発にはタンパク質の解析が欠かせません。この開発でタンパク質研究が格段にはかどるようになったのです。
田中さんがノーベル化学賞を受賞したのは2002年ですが、「質量分析のためのソフトレーザー脱離イオン化法の開発」に成功したのは1985年です。1985年から33年後の2018年にアルツハイマー病を早期発見できる道が開けたというわけです。

まとめ~測定を究めてノーベル賞へ

測定を究めると新薬開発も食の安全も格段に進歩・向上することがわかりました。島津製作所は明治から測定を進化させ、とうとうノーベル賞まで受賞したのです。
しかもまだまだ進化のスピードも開発への意欲も落ちていないことが嬉しいですね。

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