「真っ平」を目指せ。 平面をどう測定するか

「真っ平」を目指せ。 平面をどう測定するか

工業製品ではしばしば「真っ平ら(まったいら)であること」が求められます。しかしあらゆる素材は熱や水分などによって影響を受けるので、簡単には平面を維持できません。
また、工業製品では曲面やたわみが必要になることがあります。しかし当然ですが無秩序に曲がっていいわけがありません。そうなると平面に対してどれだけ曲がっているかを測定しなければならないので、やはり基準となる「真っ平」が必要になるわけです。
株式会社テクニカルがつくった、関東平野の面積にすると5ミリの高低差しかない究極の平面と、株式会社キーエンスがつくった、瞬時に平面を測る機器を紹介します。

平面とはなんなのか

物体 湾曲

平面とは、同一線上にない離れた3点を通過する面であり、その面の任意の2点を結ぶ直線が常にその面の上にある状態のことです。
完全な平面をつくることは、人類には不可能です。それは完全な球体をつくることができないのと同じです。そこで技術者たちが目指す真っ平は、凹凸やうねりが小さい平面になります。つまり工業界では、誤差が目標値に収まったときに、それを平面とみなすわけです。
平面の誤差が小さいほど、正確に動き、故障が少なく、消耗しにくい製品になるわけですが、誤差を小さくするには手間とコストがかかります。
そこで平面の追及は、業界ごとに異なってきます。おおよその目安は、自動車業界が許容する誤差は15マイクロメートルほど、半導体業界は5マイクロメートルほどとなっています。
1マイクロメートルは0.001ミリメートル、または1,000ナノメートルです。
誤差のことを(または真っ平度のことを)平面度といいます。JISでは平面度を「正しい平面からの狂いの大きさ」と定義しています。狂いは平面上の突起や、平面の反りによって生じます。
平面度の数値は、平面にしたい対象物を、正しい平面で挟んだときにできる隙間の値になります。

平面の測定方法には3種類ある

手段 イメージ

平面の測定方法は主に次の3種類があります。

ダイヤルゲージによる測定

ダイヤルゲージは「測定子」と呼ばれる先端が尖った部品を平面にしたい対象物に接触させながら移動させて平面度を測定します。平面上に凸凹やうねり、突起、反りがあれば、測定子が上下します。ダイヤルゲージでは測定子の上下を指針と目盛りで数値化しているので、平面上のどこにどれくらいの誤差があるかがわかります。

基準原器による測定

基準原器とは「この物体を1とする」と決めた物体です。長さであれば「メートル原器」という物体が存在し、その物体の長さが世界中すべての1mになります。「キログラム原器」という物体は、その重さが世界の1kgになります。
それと同じように、平面にも「平面度基準原器」というものが存在します。
平面にしたい対象物と平面度基準原器を「ペタッっと」接触させて、そこに光を照射し、両者の間に生まれる隙間から漏れてくる光を測定します。平面にしたい対象物の凹凸が大きければ漏れてくる光が多くなる、という現象を利用した測定法です。
もし完全な平面度基準原器と完全な平面の対象物をつくることができれば、光を照射したときに光が漏れないわけです。

レーザー光による測定

レーザー光でも平面を測定することができます。レーザー光を平面にしたい対象物に照射して、その反射光を2次元CMOSで撮影します。CMOSはスマホカメラなどに使われる撮影技術です。
レーザー光のメリットは、平面にしたい対象物に接触しないで測定できることです。せっかく真っ平にした対象物の表面を傷つけずに済みます。

株式会社テクニカルは「関東平野分の平面」を実現

株式会社テクニカルは青森県弘前市の光学用特殊プリズムをつくっているメーカーです。
プリズムとはガラス製の多面体の製品で、これを通過した光は分散したり屈折したり反射したりします。日光は通常色がついていませんが、日光をプリズムに通すと色ごとに分かれます。光の進む方向を変えることもできます。
プリズムは、光通信、双眼鏡やプロジェクター、CDやDVDプレイヤー、一眼レフカメラなど「光を使う機器」や「見る機器」に必要な部品になります。
テクニカルのプリズムは、パナソニック、ソニー、東芝、日立、オリンパス、旭硝子、キーエンス、コニカミノルタ、三菱重工、東京大学、京都大学、北海道大学などで使われています。
プリズムの多面体の表面を真っ平にしないと、光がきちんと分散したり屈折したりしません。そのためテクニカルではガラスの表面を真っ平にする技術を磨きあげました。
その結果テクニカルは、超高精度の平面度基準原器をつくることに成功しました。
直径9センチの円の平面の高低差の誤差を633ナノメートル以下に抑えました。1ナノメートルは10億分の1メートルです。
この誤差は驚異的な小ささで、直径9センチを関東平野にまで拡大しても、高低差の誤差は5ミリメートルにしかなりません。まさに究極の真っ平といえるでしょう。

株式会社キーエンスの測定機は瞬時に平面を測る

株式会社キーエンスの「高さ・平面度測定機HM-1000」は対象物の平面度を0.3秒で測定する測定機です。HM-1000の大きさは、高さ70センチ、幅30センチ、奥行き60センチで、「成人が一抱え」できるくらいです。測定できる対象物は最大縦20センチ×横20センチ×厚さ3センチです。

測定の速さの秘密は、レーザーです。対象物にレーザーを照射して、その反射を測定しているのです。しかも対象物を「適当に」置いても平面度を測定できます。それは、レーザーで対象物の3点を測定して基準となる面をつくり、その基準面とずれている距離を測るからです。対象物を置く位置を決める必要がないので、誰でも簡単に平面度を測ることができるのです。

さらにレーザーは対象物に衝撃を与えないので、対象物が軽くても、対象物が柔らかくても測定できるのです。

キーエンスではこの平面度測定機をメーカーの検査業務などで使われることを想定しています。

まとめ~すべては平面から始まる

平面はすべての基準になります。ある平面が平面でなければ、平面のものをつくれないからです。
ところが平面は直線や円よりもつくるのが難しいのです。直線は重力をつかえばつくることができますし、円は遠心力でつくることができますが、平面は人の力でつくっていかなければならないのです。
もちろん、対象物を平らにする工作機械も日々進化していますが、それでもマイクロメートル・レベルの修正には人の手で行うしかないようです。真っ平の追及はまだまだ続きます。

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ライター紹介
ライタープロフィール
アサオカミツヒサ

フリーライター、ライティング事務所office Howardsend代表。北海道大学法学部を卒業後、鉄鋼メーカー、マスコミ、病院広報などを経て2017年独立。取材した分野は、地方政治、地方経済、過疎化、ワーキングプアなど。現在の執筆領域はIoT、AI、産業一般、人事制度、金融、最新抗がん剤、生活習慣病治療など。趣味はクルマとバイクと登山。北海道釧路市在住。

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